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ゾンビのミヤタさん~英雄が敗北した未来を変えるために、勇者の剣と愛と勇気と豊橋名産のちくわを携えやって来た二回目の世界、東北には太陽が昇り、花咲く明日への物語が始まる~【完結】  作者: 高山路麒
第十二章 失われた理想郷【第二部3】

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12-61 ついでにオカンの水着も

 ヒソヒソ……。


「な、なにあれ」

「シッ、見ちゃいけません! 目を合わせたら駄目よ!」


 僕はまず『僕がスパイ』というタスキを装備しこれ見よがしにスパイである事をアピールし、メインミッションをこなしながら砂浜を歩く。多分注目されているのは別の理由なんだろうけど。


「じー」

「ヒィ!」

「くるっ」

「キャアア!」


 わかってはいたけど誰一人として僕と目を合わせてくれない。悲しいやら気持ちいいやら。


「ふう、海に来たのはいつぶりでしょうか。幸子さんは最後に海に行ったのはいつですか?」

「プライベートじゃ昔家族みんなでピクニックに行ったのが最後かしら? 仕事だったら先月領海侵犯した不審船に泳いで……ってこれはまだニュースになってなかったわね。ごめん忘れて頂戴?」

「相変わらずお忙しいようで何よりです」

「あらアキヅキさん。ついでに母さん。これでもかと寛いでるね」

「最近忙しかったからねー。休める時に羽を伸ばさないと」


 散策をしているとパラソルの下で白いチェストに横になっているアキヅキさんと母さんを発見した。コップの淵にカットしたオレンジが取り付けられた、どんな味がいまいち想像出来ないブルーハワイのジュース(ストロー付き)もありフル装備で海を満喫しているらしい。


「海の家のもので~す。あ、ヨシノさんもお飲み物いかがですか~?」

「恵先生まで何してるんすか。相変わらず伏線も脈絡もなく現れますねえ」

「貴重な水着回ですので~」


 オカンの水着姿に戸惑っていると、さらに水着と白衣を装備した恵先生まで現れメロンソーダを押し付けたので、僕はさらに困惑しつつストローでちゅーちゅー吸った。いやね、確かに先生は若いし水着を着てもいいんだけど。何故水着に白衣?


「アキヅキさんが言ってた脱ぐ予定ってこれだったんですね。これを機にサブヒロインから脱出しますか?」

「何を言っているかわかりませんが私は縁の下の力持ちとしてこれからも生きていくつもりですよー。そのほうが性に合ってますから」

「ふーん、こんなに魅力的なのにもったいない」

「ええと、ヨシノさん? 信頼関係がないとセクハラになりますからね、その発言は」


 せっかくなので僕は普段脚光を浴びないアキヅキさんに絡んでみるけど、大人の余裕で苦笑しながらあしらわれてしまった。でも結構着やせするタイプっていうか、意外とナイスバディだったんだなあ。


「もう、ゆう君ったら、なにお母さんの前で女の人を口説いているの? ナンパするならお母さんにしなさい。あとお母さんの水着についての感想は何かないの?」

「何が悲しくて母親の水着を褒めないといけないのさ。母さんはサブヒロインとかそれ以前の問題だからね? 義理の妹はフィクションでは好まれるけど」


 母さんは親として苦言を呈するも、ぶっちゃけ母親とは思えないくらい普通にナンパされるレベルの見た目をしていた。もちろんそんな事は口が裂けても言えないけど。


「うーん、でもその理屈だと私の場合どうなるのかしら。血の繋がり……」

「母さんー? 伏線は隠しましょうか!」

「お二人とも何をやってるんですか……」


 しょうもない雑談で母さんは再びネタバレしそうになったので僕はすかさず制止した。でもアキヅキさんはどこまで僕と母さんの関係について知っているのだろう。引きつった笑いはただ単にディープなネタに困惑しているだけだと思いたかった。


「そ、れ、よ、り、も。お母さんたちを口説いている暇があったら他の子を口説きなさい、ミヤちゃんとか。そしてひと夏の想い出を作るのよ!」

「ひと夏の想い出はともかく……それもそうだね。行ってくるよ」


 母さんは久しぶりの出番に張り切っているのかビシッと浜辺でマタンゴさんズと遊んでいるミヤタを指さした。あれはあれで楽しそうだけどやっぱり気にはなるよね。


「ファイトっ」


 母さんは小さな声で応援してくれる。僕というよりもミヤタに対して。


 ゲームでたとえるならばこれは必須のイベントではないのだろう。でもやっぱり海が嫌いなままなのは寂しいからね。無理をさせるつもりはないけど。

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