12-56 ヨシノの血縁関係についてのネタバレ
別室に移動し、私はひかげちゃんと合流してシオン君と今後の事について話し合う事にした。
「話したい事ってやっぱあの事だよね。ハナコとシオン君は偽ペイルライダーの正体について知ってるの?」
ひかげちゃんは開口一番最も気になっている事を尋ねた。ただ私は残念ながら何とも言えないからここはシオン君に任せよう。
「正史には詳細には書かれていない。だけど俺は大体の事情を知っている。犯人はヨシノじゃないって断言出来るよ。今回の世界でもね」
「そっかあ、良かった~。内心まさかあるんじゃないかってひやひやしてたんだよね。だってあのヨシノさんだから」
「はは、確かに」
そして私たちはシオン君から真実を知り安堵する。その言葉によって私たちはようやく無実を確信出来、後顧の憂いなく選ぶべき道も定まったからだ。
「でも偽ペイルライダーの正体って誰なのかな。正史にはあんまり書かれてないからねー。ここでヨシノさんと幸子さんは血が繋がっていないって判明するのは知ってるんだけど」
「ハナコー? さらっととんでもない事言ってない? っていうかそれじゃあ紗幸も」
「あ、そっか。今のは内緒で」
「もう手遅れだよ」
私はうっかりネタバレをしてしまいひかげちゃんは渋い顔をしてしまう。
紗幸さんは血の繋がった兄妹って思っているから自分の想いに蓋をしているけど、実はそんな事する必要なんてないんだよね。
いやまあもし二人が引っ付いたら未来が変わっちゃうから、私としては全力で馬に蹴られても文句を言えない人の恋路を邪魔するフラグクラッシャーにならないといけないんだけど。
「俺から言えるのはこの問題は何もしなくても直に解決するって事かな。偽ペイルライダーはアラディア王国サイドの人間だから個人的には揉めてほしくないんだけど」
「え? アラディア王国が? どうして……」
けれどシオン君はなかなか衝撃的な事を言ったので私たちは戸惑ってしまう。でも何かを察したシオン君はああ、と追加で説明をした。
「偽ペイルライダーは後ろ盾がないからとりあえず目的達成のためにアラディア王国、正確にはその工作員と手を組んだってだけさ。犯人の最大の動機はヨシノへの復讐っていう極めて個人的なものだしぶっちゃけあんまりうちの方針とは関係ないんだよね」
「ふむふむ。確かにヨシノはいろんな人間から恨まれているからそれも無理もないか」
「そこで納得したら可哀想だよ。事実だけど」
どうやら偽ペイルライダーの目的にはこれといった大義名分はなくとてもありふれたものだったらしい。正史にはアラディア王国はもちろん存在しないから、あちらの彼も同じ理由で犯行を行っていたのなら辻褄も合うね。
「でもやっぱり何もしないっていうのはなあ。一応うちの副リーダーだし、ミヤタさんもとばっちりで一緒に逃げる羽目になったし」
「心配しなくてもヨシノの無実はすぐに証明される。俺たちとは別の勢力が彼のためにあれこれ骨を折ってくれているからね」
「別の勢力?」
「ああ、多分そろそろじゃないかな」
情報が少なすぎるので私はシオン君の言っている事をよく理解出来なかった。アラディア王国以外の勢力というと警察、零機関、赤月会とかいろいろ考えられるけど一体誰が何をしているのだろう。
うーん、でも私たちの利益になるのなら別に誰だとしてもいいのかな? 少なくとも今現在は敵じゃないみたいだし。
その頃、セントマリア会議室にて。
パソコンの画面にはヨシノ扮するペイルライダーが白き帝の軍勢の下部組織の事務所でヤクザと会話し、ツァルとロイが彼を殺害した後ヨシノとも戦う光景が映し出されていた。
「これだけで不満ならこの資料をご覧ください。これが公安が集めた芳野幸信という人間に関する全ての情報です」
「ふむ……」
アキヅキは幸子から渡された全ての情報を吟味する。それは全ての前提を覆し芳野幸信が無罪であると断定するには十分すぎる証拠だった。
「にわかには信じがたいですが信じざるを得ませんね。ですがヨシノさんには悪い事をしてしまいましたね……後で埋め合わせをしませんと」
「いえ、うちの息子が過去にいろんな方に迷惑をかけたのは事実ですから」
アキヅキの謝罪を幸子は寂しげに受け入れる。悪魔の子とも言うべき息子の味方になってくれる人間など限られているというのは母親である彼女は十分理解していたからだ。
「では埋め合わせに関してですけど、早速お願いしたい事が一つあります」
「はい、何でしょう」
アキヅキはその言葉を背筋を伸ばして聞いた。それがヨシノの身の潔白を証明するために必要な事は容易に想像出来たからだ。
「皆で海に行きたいんですけど水着って経費で落ちますか?」
「はい?」
けれど彼女はニコニコと笑いながら告げられたその言葉にポカンとしてしまう。だがそんな彼女を無視して幸子はあまりにも馬鹿馬鹿しく、それでいて妙案とも言うべき提案を続けてアキヅキに伝えたのだった。




