12-55 上達したバンドメンバー
――ハナコの視点から――
その日の午前も私はバンドの練習や宣伝のお手伝いをしていた。
一通りポスターは張り終えたので今はSNSを用いた宣伝活動が主となる。聞こえてくる彼女たちの演奏はプロの指導のたまものなのか初日と比べると格段に良くなっていた。
「うーん、今日はいつになくいい感じ! これそのままプロデビュー狙えるんじゃない?」
「だよね! 確かにもしかしてがあるかも!」
「んー、まあ何か所かミスってたけどどうにか聞かせられるレベルにはなったな」
指導員のサブロウさんは上機嫌なヘイザエモンさんとイナデラさんの演奏を分析しつつも一応褒めてくれた。
だけど彼が言っている通りこれはあくまでも最低限のレベルだ。イベントを成功させるためにももっといい感じに仕上げないとね。
「で? サクラギはどう思うの?」
「え、うん、良かったと思うけど」
ただ盛り上がっているとスイメイさんはどこか咎める口調でサクラギさんに話しかける。その理由はやはり先ほどの演奏についてだろう。
「ええ、他の皆はね。今日はどうしたの? あなたにしてはミスが多かったけど」
私にはよくわからなかったけど付き合いの長い彼女はサクラギさんのミスの多さが気になったらしい。もちろん彼にしては、でありトータルで見ればこの中で一番上手な事には変わらないんだろうけど。
「そういう時もあるよ。ここのところ忙しくてちょっと寝不足でね」
「ふーん。体調管理はしっかりしなさい。今のあなたの最優先事項はバンドよ。うちの店は基本暇だから休んでもいいし」
「ありがとね」
スイメイさんはわずかばかりのツンに対しぎっしりと詰まったデレを与える。薄皮まんじゅうばりにバランスを考えてませんなあ、むふふ。
「そういえば今日もヨシノ君とミヤタちゃんがいないね? どうしたの?」
「ああ~、二人は別件で忙しくて……」
でも、私は思わずにやけてしまったけどケマさんの指摘にすぐに現実を思い出してしまう。本音ではヨシノさんの無実を証明するため私も何かしたいんだけどこっちも大事だからなあ……。
「そっかー。二人にも無理しなくていいよって伝えてね? そりゃ手伝ってくれるならこっちとしても助かるけど今でも十分すぎるくらいだし」
「ありがとうございます」
もちろん事実を言えるはずもなく、その優しさが少し辛かった。私も九割くらいは信じているけど一割くらいは疑念があったから。
「ちょっとハナコ、今いい? ひかげとも話したい事があるんだけど」
「あ、うん」
落ち込んでいるとシオン君は私にそう促した。タイミング的に正史関連の事かな。ヨシノさんを助けるためにもしっかりと相談しよう!




