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ゾンビのミヤタさん~英雄が敗北した未来を変えるために、勇者の剣と愛と勇気と豊橋名産のちくわを携えやって来た二回目の世界、東北には太陽が昇り、花咲く明日への物語が始まる~【完結】  作者: 高山路麒
第十二章 失われた理想郷【第二部3】

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12-51 抗争の原因と偽造電子マネーによる闇取引について

 その後物事が進展する事はなくただただ時間だけが過ぎていく。けれど夕方ぐらいになってようやく事態が動き出した。


『おーい、映ってるかー?』

「うん、問題ないよ」


 居間のテーブルの上に載せたノートパソコンの画面にはチェルノの顔がドアップで映っていた。ほんの数時間前に会ったばかりなのに生き別れの家族と再会出来た気分だよ。


『ぷー』

『ぷいー』

『ぴぎー』

『おおう』

「わー、みんなっ!」


 続いて画面が駆け寄ってきた子ブタトリオの鼻で埋め尽くされミヤタは手を振って喜びをあらわにする。こちらも大体僕と同じ様な感想みたいだね。


『いやー、それにしても大変な事になったな。お前も毎回毎回トラブルの女神に愛されているらしい。何度イチャイチャすれば気が済むのだ』

「その分悪運も鍛えられているけどね。でも大丈夫なの、僕と話をして」

『ちゃんと気付かれない場所で話をしている。なに、チェルノ団の技術を舐めるな。独自の秘密回線を使っているので日本の警察如きにこの通信が探知される事もない。だから安心しろ、わっはっは!』


 チェルノは誇らしげにそう語り僕は少しだけ安心する。確かにチェルノは長い事世界各国でテロ活動を行っているけど実際捕まっていないわけだしその言葉は信用してもいいだろう。あのアキヅキさんの追跡をどこまでかわせるかはわからないけど多少は時間を稼ぐ事が出来るはずだ。


「それでそっちの状況は?」

『セントマリア艦内はものすごく気まずくて地獄の様な空気だ。お前も流石に指名手配はされていないがあちこちで公安警察がうろついている。外に出るのはまだ難しいだろうな。後フィリアとイギリス政府の人間が血眼でお前を探していたぞ』

「ふーむ。そりゃそうか」

「ふにぃ、後で心配をかけた事を謝らないとね。お菓子とか持って行ったほうがいいかな」


 つまり警戒レベルは依然として変わらないという事らしい。個人的には警察やマフィアよりもフィリアさんに見つかったほうが恐ろしい事になりそうだ。


 おじいちゃんにチクって国際問題にならないといいけど。いや、流石にもう把握してるか。またただでさえ低い好感度が下がっちゃうんだろうなあ。


『しばらくはじっとしていろ。全員お前の無実を証明するためにあれやこれやと骨を折っている。お前もたまには休むといい』

「あら珍しい、チェルノがそんな優しい言葉を言うだなんて。腐ったものでも食べた?」

『そんな事を言っているとせっかく手に入れた耳より情報を教えてやらんぞ』

「はは、ごめんごめん」


 僕が照れ隠しをしながら感謝すると彼女はむくれてちょびっと怒ってしまう。でもそうか、皆が僕のために……嬉しいけど本当にいつも迷惑をかけてしまって申し訳ないよ。


「で、チェルノちゃんが手に入れた情報ってどんな情報なの?」

『厳密には吾輩ではなくアトゥたちが手に入れたのだがな。どうやら今回の白き帝の軍勢と赤月会の抗争の発端は取引に偽造電子マネーを用いた事が原因だそうだ』

「偽造電子マネー、か」

「取引に偽金が用いられた事はこちらでも把握していますが偽造電子マネーとはにわかに信じられませんね。私もその可能性には思い至りましたが現実的には不可能でしょう。高度な技術を持っていたとしてもそう簡単に出来るはずがありません」


 密談に参加した黒鬼さんもある程度の事情を把握していたらしい。ただ確かに彼の言う通り電子マネーを偽造する事は現在の技術ではまず不可能だ。彼がそう結論付けそれ以上思考しないのも無理はないだろう。


「あ、でも……あ、そっか言っちゃダメなんだっけ。お口にチャックなの!」


 ただそれに関する別の情報を聞いていたミヤタはある可能性に思い至り、そしてすぐに口をつぐんでしまう。僕も彼女が何を言いたいのかすぐに分かったけど確かに彼との約束があるから言う事は出来ないか。


「なるほど、ミヤタさんは何か心当たりがあると。ふーむ」

「弁護士が来るまで何も話さないの!」


 催眠を使えば一発で口を割らせる事は出来るけど黒鬼さんはその灰色の頭脳でロジックを組み立てる。こうなった以上は弁明しても隠しきるのは無理だろうな。


「言っちゃダメ、という事は律儀に約束を守る程度に良好な関係を持つ人物からの言葉なのですね。私が皆さんをここに呼んだのは街全体がピリピリしてアラディア王国お抱えの傭兵組織のアロウレスもやってきて何かあった時のための保険が目的だったんですが……そもそも何でアロウレスがここにいるんですかね。反社の喧嘩なんてどうでもいいでしょうに」

「ふにに~。わたしは何も知らないの!」

「なるほど、きっとこの事件の背後にはアラディア王国がいるんですね。あの技術チートを持っている国なら偽造電子マネーくらい作れますか。白き帝の軍勢はもちろんあの国は中国とも仲が悪いですから。両者を潰し合わせて人民元の信用も失墜させて一石三鳥を狙っているのでしょう」

「ふにぃ」


 頑なに証言を拒んでいたミヤタは勘のいい黒鬼さんが導き出した結論にアホ毛をがっかりさせてそれを肯定してしまう。でもそうか、裏工作をしている事は稽古場でシオンから聞いていたけどこういう事だったのか。


 今思えば中華街には電子マネーを使っている成金っぽい中国人の人がたくさんいた。もしかしたらあの人たちは全て……断定は出来ないけどこの事実が明るみになったらしばらく投資家は右往左往するだろうな。経済が混乱している時のほうが金持ちが生まれやすい傾向はあるけど。


『……吾輩の口からは何とも言えんがとにかく発端は偽造電子マネーだ。直接お前の無実を証明する材料にはならんが重要な事なので覚えておくといい』

「うぃ」


 チェルノも一応シオンに義理立てして明言を避ける。もうバレちゃったし隠しても無意味っぽいけどさ。


「ふにぃ。でもどうやって無実を証明すればいいのかな」

『手っ取り早いのは真犯人の偽ヨシノを捕まえる事だろう。吾輩がヨシノの立場なら自ら敵をおびき寄せるための囮になってあれこれ行動するがな』

「囮かあ」


 僕はしばしの間思案する。このままじっとしていても埒が明かないし巻き込んでしまったミヤタや母さんに不自由な想いをさせてしまう。ならばここは攻めてみるのもいいかもしれない。


「チェルノ。次にペイルライダーが襲撃しそうな場所はわかるかい?」

『ほう? やはり貴様は吾輩が見込んだ通りの男だな』


 チェルノはにんまりと笑い僕の選択を受け入れてくれる。リスクはあるけど僕のサードマンモードも併用すれば何て事はない。そもそもは僕自身の過去の不始末が疑われた原因にもなっているわけだし、僕の事を信じてくれる皆のためにも自分の身の潔白は自分で晴らさせてもらうとしようか。

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