12-48 麻薬取締官、黒鬼の腹黒い打算
「食べながらでいいので聞いてください」
「あ、はい」
「ずるずる」
黒鬼さんの隠れ家に避難し、安全地帯で彼が作ってくれたインスタントラーメンを食べながら僕らは情報交換をした。なお僕が好〇やねん、ミヤタがイ○メンのちゃんぽんだよ。
「知っている前提でお話しますがここ最近関西の白き帝の軍勢傘下の組織と赤月会が抗争を繰り広げています。そしてつい先ほど赤月会の下部組織の事務所がまた襲撃され、その犯人がヨシノさんだと疑われているわけです」
「僕の偽物、ですよね」
黒鬼さんは改めて現在の状況を確認する。なお僕の犯人疑惑は先ほど晴れたけど警察の人に催眠を使っても犯人である事を否定したから無罪、だなんて証言は意味をなさないだろうな。
「私があなたを助けたのは真犯人を捕まえる事でこの街の隅々に潜んでいる両勢力の麻薬の密売組織を壊滅させる糸口にするためです。上手くいけば管理者責任だの命令を出しただので上の人間を捕まえられますからね。正直どちらが戦争に勝とうがどうでもいいですが、私の目論見としては両者が抗争でバテバテになった所で一気に叩き潰す予定なのですよ。なので本音ではもうちょっと戦争をしてくれたほうが嬉しかったりします」
「微妙にアウトな発言な気もしますけど」
「黒鬼にとっちゃ麻薬にかかわる奴は皆平等にデストロイなんだ。多少黒いやり方を受け入れないとマトリは務まらねぇよ」
問題発言をしながらしたたかに笑う黒鬼さんをギバさんはフォローするかのようにそう発言する。ただかつてペイルライダーとして法に背き目的を遂行していた僕からすれば百パーセント同意出来るやり方であり、僕は全面的に彼を心の中で支持したんだ。
麻薬はその人の人生を破壊し社会にも混乱をもたらし、その収益は反社会的勢力や独裁国家の資金源となりさらに悲劇を生む。目的のためなら時として殺害もいとわない連中と戦うにはいちいち法や倫理を護ってる余裕などないのだ。
「ふにぃ。でも月影さんはそんなに悪い人には思えなかったけど……」
ただ赤月会日本支部のトップと面識があるミヤタはその暴力的なコメントにしょんぼりしてしまう。それ以前にどんな時でも正義の心と優しさを忘れない彼女にとって黒鬼さんのやり方はなかなか受け入れられないんだろうな。
「確かに他の反社と比べれば穏健派ですし話は比較的わかる奴ですけどね。ただあくまでも比較的です。赤月会日本支部は日本でトップクラスに金を持っているマフィアですがその金を集めるのに相当な血が流れていますよ。あなたも障害になると判断されたならば即座に危害を加えられます。金のためなら平気で友人や家族を殺せる、それがマフィアという生き物なのですよ。なので再び対峙したとしても決して油断なさりませんように」
「ふにぃ」
黒鬼さんはやや強い口調で否定しミヤタはさらに落ち込んだ。だけど彼の言っている事はド正論だし、僕もミヤタが連中を信じた結果裏切られてひどい目に遭わない様に気を配る必要があるだろう。
「けど真犯人は一体誰なんでしょうねぇ。ヨシノさんじゃないのは先ほどのやり取りで確定ですが」
「ええ。線条痕が一致したのは盗んだ拳銃を使ったからだとしてDNAはどういう事なんでしょう。まさか生き別れの双子の兄弟がいるわけでもないでしょうし」
「そうねぇ」
答えがわかり切っていたけど僕は一応母さんに確認する。でも母さんは即答せず、かなり困ったような顔になってしまったんだ。
「えーと、母さん?」
「いない、とも言いきれないわね」
「ええー」
「そろそろあの事を話したほうがいいのかしら……」
「そういう伏線がビンビンな独り言は本人がいない場所でしてくれない? オカン、それが伏線を張る時の最低限のマナーですぜ」
どうやら母さんは僕と同じ遺伝子を持つ人物、つまり犯人に心当たりがあるらしい。というかこんな気になる事を言われたら犯人が誰なのかもう今更どうでもいいんだけど。
「ちなみにあなたが疑われた偽ペイルライダーの事件に補足の説明をすると襲撃された赤月会は白き帝の軍勢寄りの立場だったわ。つまり赤月会による犯行の可能性もあるわね」
「まあ途中でやっぱ赤月会につこう、ってなって白き帝の軍勢が殺した可能性もあるけどな。ヤクザ連中の人間関係は基本ドロドロしてるし」
「むー。結局誰が犯人なのかなあ」
律子とギバさんは追加で説明をしてくれるけど最早それすらもどうでもよく、そんな事よりとっとと僕の出生の秘密が知りたくて仕方がなかった。
「やっぱり拳銃を盗んだ偽物のヨシノくんが犯人なのかなあ」
「偽物か。そうね、私たちからすればあれはゆう君の偽物ね」
「だからもう一思いにネタバレしてよ母さん」
この反応を見る限り母さんは全てを知っているに違いない。もうお願いだからこんな生殺しみたいなのはやめてほしいんだけどなあ。
「もしかしたら偽物のゆう君の本当の目的は白き帝の軍勢や赤月会を倒す事じゃなくてゆう君に罪を着せる事だったのかも。そうじゃなかったらリスクを冒してまでセントマリアに忍び込まないでしょうし」
「同意したいけどその前にまずネタバレして? ね?」
僕の必死の懇願にも母さんはじらしてなかなか答えを教えてくれない。どうやらその時が来るまでとことん秘密にするつもりの様だ。
そりゃね、薄々わかっているよ。ここまで伏線を張られたら僕と母さんは血が繋がってないって事は。僕はどんな真実でも受け入れるしちゃんと話してほしいんだけどなあ。




