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ゾンビのミヤタさん~英雄が敗北した未来を変えるために、勇者の剣と愛と勇気と豊橋名産のちくわを携えやって来た二回目の世界、東北には太陽が昇り、花咲く明日への物語が始まる~【完結】  作者: 高山路麒
第十二章 失われた理想郷【第二部3】

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12-47 黒鬼の隠れ家へ

 警察に赤月会を襲撃した人物と疑われ、両勢力の追っ手を撒き母さんの運転するワンボックスカーで避難する事数分、僕らはやたら団地が多いエリアに移動した。


 おそらく市営住宅であろう量産された団地の三階に上った後は非常階段に一番近い部屋に入る。物が少なく随分と殺風景だけど身をひそめる分には申し分ない。いざという時すぐに逃げれるしね。


「ええと黒鬼さん、ここは?」

「私が昔住んでいた部屋です。今も緊急時の避難場所に使っていますがね。何もない所ですが寛いでください。この家にあるものは自由に使ったり飲み食いしていいので。インスタントラーメンならありますが食べますか? 好〇やねんとイ○メンのちゃんぽんしかありませんが」

「あ、いや、今はいいです」

「じー」


 ラーメンが好きなミヤタはご当地麺が気になったのか熱い眼差しを向ける。なおどちらもとあるなろう作家が前述した関西圏の親戚からちょくちょく送ってもらっていたので実家でよく食べていたそうだ。近隣の特産品のいかなごのくぎ煮もおまけしてね。ちなみにそのなろう作家は好〇やねん派だよ。


「ああうん、後で作ってあげるね」

「わーい!」


 僕はミヤタにそう約束し、とにかく自分の置かれている状況を理解するため黒鬼さんに質問する事にした。


「いろいろ聞きたい事がありますが、まず黒鬼さんはどうして僕を助けてくれたんですか?」

「そうですねぇ。ではまず私の眼を見て話してくれますか?」

「え、はい」


 正座をした僕は言われた通り黒鬼さんの眼をじっと見る。改めてじっくり見ると人間のものとは思えない悪鬼の様な赤い眼をしているなあ。というかなんか禍々しいエフェクトがキラキラしている気が……写〇眼なのかな?


「真実のみを話してください。あなたは関西で起きた白き帝の軍勢や赤月会の関連組織の襲撃事件には関与していない、間違いありませんね?」

「はい。僕は一切関与していません」


 僕は聞かれた質問にそのまま答えるけど、その時の黒鬼さんの眼光は鋭く歴戦の麻薬取締官が凶悪犯と対峙する時のそれだったので少しだけビクビクしてしまった。きっとこの強烈な威圧感で多くの犯罪者の罪を暴いてきたんだろうなあ。


「ふむ、それだけ聞ければ十分です。ではメシでも食いながらお話ししましょうか」

「えと、今のだけで信じてくれたんですか?」


 僕の言葉が真実である保証はどこにもなかった。だというのに黒鬼さんはすぐに信じてくれたので、それがありがたかったけど僕は不思議でならなかったんだ。


 自分で言うのもなんだけど人は平気で噓をつく。ましてや麻薬取締官の彼はそれを嫌というほど経験しているだろうに。


「私の眼は特殊でして。眼と眼を合わせた人間に催眠をかける事が出来るんですよ。勝手ながらさっきの質問は催眠をかけながらしました。真実のみを話してくださいとね」

「ああ、なるほど。もしかしてさっき強そうな赤月会の人がどっかに行ったのは」

「はい、催眠の力です。あまり多用は出来ませんし多少の制約もありますけどね。眼をしっかり合わせる必要があるので多人数は難しいですし」

「ほへー、麻薬取締官からすればかなり便利な能力ですね」

「ええ、どんな犯罪者からもお話が聞けるだけでなく冤罪も防げるので重宝しております。というかそこまで驚かないんですね」

「僕の周りにはこういう中二っぽい異能持ちが多いので。物理無効化を無効化したり人を生き返らせたり」

「ふふ、それもそうでした」


 黒鬼さんはキッチンでお湯を沸かしながら手際よく冷蔵庫から材料を取り出す。どうやら贅沢にゆで卵も載せてくれるらしい。


 でも前にナゴヤでサブロウに催眠アプリを見せられた時は効かなかったし、もしかしたら僕は催眠が効かない体質なのかもしれないけど……うん、忘れたふりをして黙っておこう。


「ちなみにこの能力はそういう趣味がある友人にサイコジャックと命名されました。私は少々恥ずかしくてあまりその呼称を使わないのですが」

「サイコとジャックを合わせたんですかね。うちのちくわ狂いの準レギュラーと仲良く出来そうです」


 黒鬼さんはククッと笑いながらそう語ったのできっとその友人とは特別親しいのだろう。性別や年齢もわからなければ本編に登場するのかもわからないけど。


「おや、わかめはどこでしたっけ」

「どうぞ」

「あ、どうもです」

「ふにゃ!? なんか忍者っぽい人が現れたの! どこから来たの!?」


 料理の最中どこからともなく現れた謎の人物にミヤタはひどく驚いた。鬼の仮面に両手両足が義足とかなりインパクトのある見た目をしているけど、少なくとも敵ではないので警戒する必要は無いだろう。


「部下の美夜子さんです。戸籍上は私の妹となっております」

「どうも、妹です」

「初めましてなの! ミヤタさんなの!」

「あ、ども」


 美夜子の風貌はなかなか不気味なのに料理を手伝い麦茶を淹れる様は奇妙としか言えなかった。というか戸籍上って……家庭環境はどうなっているんだろう? デリケートだから聞けないけども。


「あ、わたしも何か手伝えることはある?」

「僕も」

「いえいえ、皆さんはお客さんですから」

「ふに、わかったの」


 なんとなく間が持たず僕らは手伝いを申し出たけど断られてしまう。むーん、手持無沙汰だ。ここにマタンゴさんでもいれば一緒に遊んでたんだけど。部屋の隅とかに一匹くらいいないかな?

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