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ゾンビのミヤタさん~英雄が敗北した未来を変えるために、勇者の剣と愛と勇気と豊橋名産のちくわを携えやって来た二回目の世界、東北には太陽が昇り、花咲く明日への物語が始まる~【完結】  作者: 高山路麒
第十二章 失われた理想郷【第二部3】

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12-41 ソメイヨシノの宿命

 ――宮田マリアさんの視点から――


「んしょ、んしょ。ぶたにくそっち押さえててー」

「ぷひ」

「そいでなー、ってブタが幼女と一緒にポスターを貼っとるんやけど!? いや嘘ちゃうて、俺はありのままを言っただけなんや!」


 わたしはぶたにくと一緒に完成したイベントのポスターを許可がもらえた場所に貼っていた。でもさっきからいろんな人に見られてるけど何でだろうね。ポスターの事が気になってくれてるのなら嬉しいな。


「ちょい待って、動画送るから! なんやライブイベントのポスターみたいやけど……後でネットにあげとこ」


 電話をしていた人はわたしたちがポスターを貼る姿を撮影する。ただボランティア活動とかで撮影されるのは慣れているけど一言撮っていいって言って欲しかったかなあ。


 でもなんでこんなのを撮影……ああそっか、ぶたにくは芸達者だけど普通のブタさんはポスターを貼るお手伝いとかは出来ないからびっくりしているんだろう。ここ最近は慣れてきてみんなはどうとも思っていないけど考えてみれば珍しい光景だよね。


 しばらくしてフィリアがどこからともなく現れて撮影した人を注意した。これに懲りたら今度からちゃんと最低限のマナーは守ってね。


 ちなみにブタがポスターを貼るこの動画は結局動画サイトに投稿されて、後々バズりにバズってすごい事になるんだけどこの時のわたしはそんな事を知る由もなかったんだ。


 さーて、この辺は終わったしそれじゃあ次いこー!



 ポスターを貼るのに疲れたわたしは一旦公園のベンチに座って一休みをした。今は暑いし熱中症には気を付けないとね。でもゾンビって熱中症になるのかな。


「ふにゃー、五臓六腑にスポーツドリンクが染み渡るの~」

「ぷひ~」


 ゴロンと横になったぶたにくはすっかり油断しきっておなかを見せていた。たくさん歩いて疲れただろうしセントマリアに戻ったら冷たいシャワーを浴びせてあげようっと。


 今はくたくたで何もする気が起きない。する事がなかったわたしは取りあえず公園に植えられた桜の木を眺めていた。


 桜は春が一番人気だけど宝石みたいにきらきらする新緑の葉っぱも素敵だ。太陽の光を一杯浴びてとっても気持ちよさそうだったの。


「ふに?」


 木の下には顔を上げてわたしと同じ様に桜の木を見つめていた人がいて、それはよく見るとヨシノくんだった。ヨシノくんも休憩しているのかな?


「ヨーシーノーくーん!」

「ん? ああ、ミヤタか」

「ぷひ」


 わたしがぽてちてと駆け寄るとぶたにくものそのそと動き出す。でもある程度近付いたところでぶたにくはぷひ? と不思議そうな顔になった。


「ぶたにく?」

「ぷひー」

「ええと」

「ぷひー?」


 何かが気になったぶたにくはくんくんとヨシノくんの匂いを嗅ぎまわり、その行動の意味が分からないヨシノくんは困った様な表情になって、気が済むまで匂いを嗅いだ彼女は不安げに距離を置いてしまった。


 一体どうしたんだろうね? まあいいや、気にするような事じゃないか。それよりもヨシノくんとお話ししようっと。


「ヨシノくんはお仕事終わった?」

「ああうん、ぼちぼち。ミヤタは?」

「今休憩中なのー。いやー、今日は暑いねー」

「本当だねー」


 ヨシノくんも疲れているのかどことなく心ここにあらずといった様子だった。なんだか出会った頃のキャラがぶれる前のヨシノくんみたいなの。


 むう、何でだろう。話題が続かなくてちょっと気まずいの。話のタネになりそうな事……なんかないかな。うん、この桜の木にしよう。


「この木ってソメイヨシノって名前なんだよね。ヨシノくんと一緒だね」

「そうだね。ところでソメイヨシノって大体同じ時期に花が散るけどその理由を知っているかい?」

「ううん、知らないの」


 苦し紛れに口にした話題をヨシノくんは掘り下げてくれる。名前以外はあんまり共通点がなさそうだけど。


「全国にあるソメイヨシノは同じ株から作られた、言うなればクローンなんだよ。だから皆同じタイミングで終わりを迎えるのさ」

「ほへー、いろんな事知ってるんだね、ヨシノくんって」

「割と有名な話だけどね。でもこの桜はどんな気持ちなんだろうね」

「どんな気持ちって?」


 雑学を披露してくれたヨシノくんは寂しげな眼差しになり桜の木を見上げた。私には木の気持ちはわかんないけど……ヨシノくんがなんとなく悲しいんだって事はわかったの。


「人間の都合で作られて、そして咲いた意味を知る事もなく散っていく。ただ生きて死ぬだけの存在だ。人間なら生きてて楽しくないだろうね」


 ヨシノくんはなんともセンチメンタルな事を話した。確かにそう言われてみれば桜って悲しいのかもしれないね。


「でも、だからこそ咲くその瞬間に全力を尽くせるんじゃないのかな。一瞬でも花を咲かせる事が出来たのならその人生に意味はあると思うの」


 わたしはヨシノくんに率直な感想を伝えた。少なくともそれはただ何も出来ずに枯れていくのと比べたらとても幸せな事には違いないし。


「花を咲かせる、か。そうだね。やっぱり死ぬ前に一度は花を咲かせるべきだよね。ありがとね、ミヤタ」

「よくわかんないけどどういたしましてなの!」


 何に悩んでいたのかわからなかったけどヨシノくんはその言葉に励まされたのかわたしにお礼を言った。こっちも悩みを解決出来て嬉しかったの。


 てけてけてけてけてけてけてんてん。


「スマホ、鳴ってるよ」

「あ、うん」


 お話が終わったあたりでわたしのポケットに入れていたスマホがYTRの出囃子の曲を奏でる。さっちゃんからだけどお仕事の話かな。


「どったのー?」

『ミヤちゃん、今どこにいるの!?』

「ふにに、どうしたの?」

「ぷひ?」


 電話口でさっちゃんはスピーカーボタンを押さなくても聞こえるくらいとても大きな声で慌てていた。ぶたにくも気になったのかわたしに近付き耳をそばだてて内容を盗み聞きしようとしていたの。


『ええと、電話じゃ話せないからとにかく急いでセントマリアに戻ってきて!』

「ふに、わかったの!」


 わたしはひとまずスマホを切って言われた通りセントマリアに向かう事にした。もちろんこの話はヨシノくんにもしたほうがいいだろう。


「どうかしたの、ミヤタ」

「よくわかんないけどトラブルだって。わたしはセントマリアに戻るけどヨシノくんは?」

「そっか、僕は後で行くよ。ミヤタは先に向かって」

「うん、わかったの。行くよぶたにく!」

「ぷひ!」


 ヨシノくんと別れたわたしはぶたにくにライドオンして急いでセントマリアに向かった。何があったのかはわかんないけどピンチっぽいから急がないと!

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