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ゾンビのミヤタさん~英雄が敗北した未来を変えるために、勇者の剣と愛と勇気と豊橋名産のちくわを携えやって来た二回目の世界、東北には太陽が昇り、花咲く明日への物語が始まる~【完結】  作者: 高山路麒
第十二章 失われた理想郷【第二部3】

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12-39 神渡の抗争事件についての考察

 通報から数分後、すぐに駆け付けた警察により事件現場となった暴力団の事務所は誰も立ち入る事が出来ない様に封鎖される。


 現場に居合わせた黒鬼は第一発見者ではあるものの、それは同僚や部下全員に当てはまるので全員から話を聞くとなると時間がかかる。そのため彼は雑居ビルの屋上で煙草を吸い自分の番が来るのを待っていた。


美夜子みやこさん、いますか?」

「ここに」


 黒鬼がその名前を呼ぶと鬼の面を被った忍者の様な少女がどこからともなく現れる。両手両足が義足でありなかなか個性的な見た目をしているが彼女も自分の頼れる部下の一人である。


 その風貌通り彼女が得意とする事は諜報活動だ。黒鬼は早速妹分から昨今の関西で起こっている日本の暴力団と中国マフィアの抗争事件について話を聞く事にした。


「奴さんの他の拠点はどうなっています? 白き帝の軍勢の系列も赤月会も」

「双方関西の至る所の事務所が襲撃されています。本格的に抗争が始まったとみて間違いないでしょう」

「ふーむ。もう少し長引いて共倒れになってくれればこちらとしては助かるのですが。ネクロムを売りさばいている白き帝の軍勢も、山蛭商会と一緒に普通の麻薬を売りさばいている赤月会も我々からすれば同じ穴の狢ですからねぇ」

「仮にも公安職に限りなく近い麻薬取締官がそんな事を言うものではないと思いますが」

「フフ、マトリは麻薬を撲滅するためならグレーな事も許される唯一の職業です。自分で言うのもなんですが私は特に手段を選ばない事には定評がありますよ。今更では?」

「それもそうでしたね」


 あくどく笑う黒鬼に美夜子は眉一つ動かさず同意する。


 そう、今更だ。彼の故郷を想う気持ちと麻薬への激しい憎悪は長い付き合いで嫌と言う程知っていたではないか。自分に求められることは意見する事ではなく、その永遠に叶うはずのない悲願をサポートするため影に徹する事なのだ。


「しかしなんでまた急に抗争を始めたのでしょうか。ここのところは割と良好な関係だったというのに。やはりソウゲツの失脚が?」

「その事ですが金銭が絡んだ揉め事が理由だそうです」

「はて、反社が揉めるのは結局のところ大抵金だと思いますが」

「いえそうなのですが、どうやら白き帝の軍勢が赤月会との取引に多額の偽札を用いた可能性があるようです。この情報はまだ精査していないので詳細な事はわかりませんが」

「ふむ、偽札ですか」


 黒鬼は与えられた情報と自分が今まで手に入れた情報からロジックを組み立てる。そして彼はここ最近街で感じていた違和感をふと思い出した。


「そういえば近頃やたら中国人の成金が街に増えましたね」

「はい、増えているとは思いますが。中国は経済発展著しい国ですし。それがなにか?」

「美夜子さん。もしもそのお金が正当な手段で手に入れたものではないとすれば? 例えば違法な電子マネー……具体的には偽造されたものという可能性は」

「取引に偽造電子マネーを使ったと言いたいのですか? 高度に暗号化された電子マネーの偽造はまず不可能です。紙幣の偽造よりもはるかに。もし違法な電子マネーがあるとするならば不正アクセスで入手した電子マネーを使う、というのが一般的です。そちらの可能性はあるとは思いますが」

「ただ違法に手に入れた金でも反社にとっては別に関係ないでしょう。赤月会が怒る理由にはなりません」

「とはいえ不可能なものは不可能です。少なくとも現代の技術では」

「ふーむ、これだと思ったんですけどねぇ」


 自分の考えた推理が否定され黒鬼は落胆する。だがこのあたりの事もそのうち警察が調べるだろう。やはり自分は麻薬取締官らしく本業の麻薬の摘発に専念すべきだ。ヤクザが何故喧嘩をしているのか、自分がその様な事を知る必要は無いのだから。


「ちなみに他に面白いネタはあります?」

「そうですね、ここ最近神渡市内で下着泥棒が多発しているそうです」

「こりゃまた落差が激しい話題ですねえ」

「ちなみに盗まれたものはどれもこれも幼い子供のものだそうです」


 美夜子は話すネタがなかったのか至極どうでもいい話をする。低俗なワイドショーは食いつきそうだがはっきり言ってまったくもって緊急性を感じられない犯罪についての話題を。


「ただ、別にそれ自体はありふれた犯罪ですが、防犯カメラの映像や目撃証言などからその犯人は白き帝の軍勢の幹部だそうです」

「ホワーイ? 何故? ここの所白き帝の軍勢は落ち目ですが落ちるところまで落ちましたねえ」


 だが補足の説明に黒鬼は引きつった笑みを浮かべてしまった。まさかこれには深い意味が……いや、そんなのあるはずがない。ただの特殊性癖なアホが起こした犯罪、それだけの話なのだろう。


「まあいいでしょう、美夜子さんは引き続き諸々の調査をお願いします」

「承知しました」


 黒鬼は投げやり気味に美夜子に指示を出すと、彼女は転落防止用の柵を飛び越え隣のビルに飛び移りコンクリートジャングルの中に消えていってしまう。


 そして煙草を吸い終えた黒鬼は携帯灰皿に煙草を押し込み、警察の相手をしているギバと律子がいる場所へと戻っていった。

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