12-36 バンド練習と差し入れ
その後僕たちはポスターのアイデアを出し続け、ひかげの手により大まかなデザインが決まる。
「こんな感じかな」
「おー、いい感じ!」
そのポスターは商店街のマスコットであるミノキングをメインにしていたけど、それでいてロックンロールでなかなか中二、もといカッコいいデザインだった。
「うむ、まだ下書きだがこのままでも様になりそうだな。吾輩は気に入ったぞ!」
特にチェルノにはドストライクだったらしくべた褒めをする。ただ彼女は良くてもこれでいいのか依頼主の意向を伺わなくてはいけない。きっとオッケーは貰えるだろうけどね。
「ほなイナデラのとこに戻るで。クライアントからオッケーを貰うまでがデザインの仕事や。こういうのは完成したのに無茶ぶりで最初から練り直しっちゅうパターンもあるからのう」
「そうなの! タイムカードとか押したら駄目なんだよね?」
「君らなんで猫と幼女なのに広告代理店のブラックさを知ってるの」
「いや広告代理店じゃないから」
軽く小ボケを挟みつつひかげからツッコミをもらい僕らは数枚の下書きを持って練習場所へ移動した。流石にボロカスに批判したりはしないだろうけど皆は気に入ってくれるかな?
「ほうほう、これはいいね! どれもいいから迷っちゃうよ!」
「それほどでも~」
イナデラたちは練習を中断し作成したポスターをしげしげと眺める。その感想はおおむね好評で担当したひかげはこれでもかと誇らしげな顔をしていた。
「何から何まで助かったよ~、おかげで練習に専念出来るね」
「いえいえ仕事ですから、ドヤァ」
ケマにも褒められ、その友人のハナコもまた何故かドヤ顔をする。君は特に何もしていなかった気もするけどなあ。
「みんなー、頑張ってるー?」
「あ、お母さん!」
そんな感じで話し合いをしていると部屋に恰幅のいい中年女性が入ってきた。彼女の右手にはレジ袋がひっさげられていて、ケマがお母さんと言ったという事は彼女はケマの母親なのだろう。
「はいこれ差し入れ! これ食べて元気出してね! お客さんの分もあるからどうぞ!」
「わーい!」
レジ袋の中にはプラ容器に入った大量のメンチカツが入っておりそれはミヤタを大喜びさせるのに十分だった。ちょうどいいしここで一休みしておこうか。
「私もいますよ。上手くやってますか、A子さん」
「うん、皆覚えが早いし楽しいよ」
「お?」
続けて黒鬼さんも入出し彼もまたレジ袋を持っていた。当然ミヤタは何かを察知しこれでもかとアホ毛をブンブン振り回す。
「私のほうはマ〇ケンのワッフルを。メンチカツとは合いそうにないですが」
「ううん、大歓迎なの!」
黒鬼さんのほうはワッフルを用意してくれていた。全体的に高脂質かつ糖分過多だけどうちのカロリークイーンはそんな重たいものでも諸手を挙げて歓迎していた。
「では私はこの辺で。ちょっと仕事がありますので」
「お忙しい中わざわざすみませんね、黒鬼さんも」
「頼んだ手前何もしないわけにはいかないでしょう」
黒鬼さんは手土産を渡し目的を果たすととんぼ返りをして去っていく。今は街全体が抗争でピリピリしているし麻薬取締官の彼は大変なんだろう。
「じゃあいったん休憩しようか」
「はーい!」
とにかく目の前に美味しいものがあるのにお預けを食らうのもしんどい。ここは厚意に甘えてグルメを堪能するとしよう。




