12-23 蓑呂木商店街を盛り上げるために
商店街振興の話し合いが散々な結果に終わり、シャッター商店街を歩いていたイナデラは深いため息をつきながらがっくりと肩を落としてしまう。
「はぁ~、何でこう上手くいかないかな」
「どんまいなの、イナデラちゃん!」
「うう、あたしの味方はあなただけだよ。ぐすん」
ミヤタが慰め彼女がそれを撫でる様はまるでストレス社会に疲れ切ったやさぐれOLが寂しさを察してじゃれつくペットに甘える様だ。女同士とはいえ初対面なのに随分と馴れ馴れしい子だなあ。
「だけどミヤタ、どうするの? お金もない、協力者もいない、やる気もない……上手くいく要素が微塵もないんだけど」
「ぐへっ」
「うーん、そうだよねー」
僕が正直に告げるとイナデラはグサグサという効果音と共に精神的なダメージを受ける。特にやる気のある協力者がいないのは致命的だろう。何をするにしてもまずは行動を起こす人がいなければ何も変わらないのだ。
たとえイナデラの様にファーストペンギンの役割を担う勇敢な存在がいたとしても、無気力という鎖に縛られ続くものがいなければ衰退によって飢え死にするだけである。そうなってしまえばせっかくの勇気も無駄になってしまうだろう。
「こういうのってやる気に満ち溢れた若者が変えていくってパターンが多いけどあれじゃあねぇ」
「ええ。正直かなり厳しいでしょうね。リスクがあろうと変化を望まなければこの商店街に未来はないというのに」
「ですね。なんかちょっと腹が立ってきました。やる気さえあればまだいくらでもやり直せるのに」
苛立っていたレイカはフィリアさんに愚痴をぶちまける。彼女からすれば、というか震災を経験した僕らからすればここの商店街の人はかなり恵まれている。関西を襲った震災からは月日も経ちいくらでもチャレンジが出来るというのに。
「まあまあ、そんなに落ち込まないで~」
「え?」
だけど背後からのほほんとした声が聞こえイナデラは顔を上げる。確かこの子は怪獣の中の人のケマちゃんだっけ?
「私は協力するよ! アイデアは出すのは苦手だけど体力には自信があるから」
「ケマちゃん! うわーん、心の友よー!」
どうやらケマは次に勇敢なペンギンだった様だ。イナデラは泣きながら親友に抱き着き彼女は聖母の様に愛情をこめて抱きしめた。
「わあ! 良かったね、イナデラちゃん!」
「うぇへへ~」
ミヤタは我が事の様にその瞬間を喜んだ。所詮は一人、されど一人。ここから巻き返す事は出来るかな。
「ふむ、良かったですねぇ。しかし状況はあまり変わっていませんが」
「そうなんですよねー。どうしましょうか」
しかし現実的な黒鬼さんは大して喜ばずイナデラは再度落ち込んでしまう。前途多難な事には依然変わりないのは間違いないけどどうしてこうやる気を削ぐような事を言うんだろう。
「そうね。人を惹きつける具体的なプランを示せば賛同する人が出てくるかもしれないわね」
「はい! 何かを変えたい時には行動に勝る手段はないですからね!」
そっけなく告げた律子の発言にハナコはガシッと食いつく。彼女の事だ、このあたりの事も正史で知っているだろうし成功すると確信があるのだろう。
こそっと聞いてもいいけど別に命にかかわる事じゃなさそうだしネタバレ防止のためにも聞かないでおこうか。果たして彼女たちが故郷を救うためにどんな物語を紡ぐのか楽しみにさせてもらうよ。




