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ゾンビのミヤタさん~英雄が敗北した未来を変えるために、勇者の剣と愛と勇気と豊橋名産のちくわを携えやって来た二回目の世界、東北には太陽が昇り、花咲く明日への物語が始まる~【完結】  作者: 高山路麒
第十二章 失われた理想郷【第二部3】

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12-21 寂れた商店街、蓑呂木商店街へ

 中華街の観光を終え、僕らは某お笑いコンビの出身地でも有名な海崎市に移動する。神渡ほどではないけどこちらも政令指定都市レベルの規模の都会でありなかなか賑やかで楽しかった。


「うずうず、うずうず。ここがヤンキーで有名な海崎なのね! ねえねえ、あそこにいかにもヤバそうなヤンキーがいるから喧嘩してきていいかしら?」


 海崎は知っての通りヤンキーが多いイメージがあるのでレイカはものすごくワクワクしていた。でも海崎イコールヤンキーってイメージは絶対あの芸人さんのせいだよね。実際そういう人は多いし(※この辺に縁のあるとあるなろう小説家談)否定しきれないけどさ……。


「もー、駄目ですよレイカさん。向こうから仕掛けてきたらいいですけど」

「妹よ、お願いだから龍が○くみたいな発想はやめてくれないかい? 現実でそれをしたら犯罪だからね」


 暴力的なレイカにすっかり慣れた紗幸はそんな悲しくなる事を言った。いい加減軌道修正させたほうがいいかなあ。


「喧嘩は良くないよー? それで今から行く蓑呂木みのろぎ商店街ってどんな場所なの?」

「行けばわかります。こっちですよ」

「はーい」


 ボランティア組織らしいお仕事にやる気十分なミヤタは先導する黒鬼さんの後を追ってずんずんと歩き、彼女はその間にも街やそこに住む人々をきょろきょろと興味深そうに眺めていた。


 流石に全身トラキチコーデのおっちゃんやヒョウ柄おばちゃんみたいなコテコテの関西人はいないけど、なんか歯がないオッサンは結構いるなあ。


 お、パンチパーマの絶滅危惧種の強面さん発見。何かもさもさしたデカい犬連れて散歩してるよ。


 喧嘩上等のスカジャンを着たおばあちゃん、ガ〇フィーを着た目が死んでるアラサー女性に……犬の絵が特徴的なガ〇フィーは最近は若者の服になったけど昔はヤンキーの制服だったんだよね。うーん、皆独特なファッションをしているから見ていて楽しいよ。


「ふむ、賑やかな場所だな。ここが蓑呂木商店街なのか?」

「いや、ここじゃねぇよ」


 そして僕らは賑やかな商店街にたどり着く。てっきりそこが蓑呂木商店街かと思ったけど、ギバさんは笑いながらチェルノの言葉を否定し素通りする。


 蓑呂木商店街は海崎駅からほど近い場所にあり立地的には悪くない。実際近くにある素通りした商店街はかなり賑わっているし。


 だけど目的地に到着し現地を目の当たりにした僕らは思わずウッとなってしまった。


「えーと、まさかここが蓑呂木商店街だったり?」

「そうですよ」

「廃墟にしか見えないんですけども」

「まだギリやってますよ」

「くらーい」

「じめじめー」


 ひかげはあまりの寂れっぷりにドン引きしてしまうけどこういう場所を好むマタンゴさんは楽しそうにはしゃいでいた。


 シャッター商店街という言葉があるけど、蓑呂木商店街はほぼすべての店のシャッターが閉まっていて薄暗く、というか真っ暗で一見すると廃墟にしか見えなかった。


 なお後に地元出身のお笑いコンビが水曜日にやっている番組の商店街のシャッター率を調べる企画で堂々の全国六位になったと言えばそれがどれほどのものかわかるだろう。雰囲気があるからホラー系のロケにはちょうどよさそうだけどさ。


 人が誰もいない商店街で販促ののぼりは虚しくたなびく。強いて褒める場所があるとすれば入口にあるトラ猫の看板が可愛らしいくらいか。


「なあ、商店街の振興っちゅう依頼やったな。これもうそういうアレでどうにかなるアレちゃうやろ」

「うん、気持ちはわかるぞ」


 ドーラもそのあまりの惨状に語彙力を失いギバさんは笑いながら肩をすくめた。まあこれはあくまでも建前の目的で本気で解決するつもりはないっていうのもあるんだろうね。


「よーし、それじゃあ商店街の人にお話を聞きにいくの! ファイオーなの!」

「はい、その意気ですよミヤタさん!」


 だけどそんな税金を使い切るために無理やり作られた国家事業にも似た仕事だとしてもポジティブなミヤタと彼女の信者のハナコからすれば関係なかったらしい。彼女たちを見ているとなんだかこっちも前向きになれるよ。


「ふふ、では約束の場所に移動しましょう」

「はーい」


 黒鬼さんもそれは同じだったみたいで強面な顔をほころばせる。四の五の後ろ向きな事を言わずにまずは手を動かそうか。


「それにしても本当に雰囲気のある場所だね。オバケでも出そう。物理半減の」

「物理半減なら二倍叩けばいいだけですので問題ありませんよ」


 ひかげはビクビクしながら商店街を進むもフィリアさんにバッサリあしらわれる。だけどたとえオバケが出たとしてもこんな廃墟になる寸前の商店街からすれば貴重なアピールポイントには違いないだろう。


「がおー!」

「ぴゃー!」

「わー!」


 商店街を歩いていると突然僕らはモンスターとエンカウントしてしまいお子様たちはびっくりしてしまった。でもよく見なくてもそれが着ぐるみである事はすぐに分かったので誰もそれ以上の反応はしなかったよ。


「シャー! ヒカゲ下がれ!」

「ええとサバト、これ多分違う、」

「がおがおー!」


 サバトは友達を護るため仁王立ちになるけど、着ぐるみの怪獣は可愛らしい声で威嚇しているから中に入っているのは女性なのだろう。この商店街のゆるいキャラみたいな奴なのかな。


「おーい、ケマちゃん。そろそろお客さんが来る時間だよ」

「がおがおー。おやつはなーに?」

「あべかわ餅。いつもの店で買った奴」

「わーい」


 反応に困っているとメタル風のファッションの女の子が現れ中の人の名前を呼んだ。仮にもゆるいキャラなら最低限のルールは守ったほうがいいと思うけど。


「ありゃ? あなたたちは?」

「初めまして! チーム明日花のミヤタさんなの!」

「おお、君たちが噂の! ささっ、こっちだよ!」

「うん!」

「がおー!」

「シャア? 危なくないのか?」


 メタル風の女の子はやはり商店街の関係者だったらしく嬉々として僕らを案内してくれる。サバトだけは終始よくわかんなさそうだったけどね。


 さーて、それじゃあじっくり話を聞かせてもらおうか。何かをするにしてもまずはここの商店街の人といろいろ話し合わないとね。

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