12-13 焼小籠包でNTR
神京町は歩きながら食べるのは禁止されているので僕らは広場で購入したものを食べる事にした。
「北京ダック美味しい?」
「はい! 北京ダックの味がします! 高級感がギンギンにします!」
「イマイチピンと来ないね。チーム明日花に入ったからには食レポも上手くならないといけないよ」
ハナコは先ほど母さんから受け取った北京ダックを実に美味しそうに食べていた。その料理は北京ダックとキャベツをなんかの皮で巻いただけのシンプルなもので見るからにファーストフードで正直高級感はあまりなかった。まあある意味では本場っぽいけどね。
「ちなみに北京ダックはピンキリだけど向こうじゃ庶民のおやつって感じらしいよ。日本でいう所のハンバーガーとかたこ焼きとかあんなポジションでさ」
「え、そうだったんですか!?」
「もちろん高いものもあるけどね。だから高級感は必ずしも適切な表現じゃないね」
「なるほど、ではとても庶民的でチープな味がします!」
「怒られるよ? 僕も食べようっと」
ハナコの食レポは相変わらず不適切だったけど、四の五の言ってないでここは僕がお手本を見せてあげよう。そいじゃ一口ぱくんと。
「もひゃもひゃもひゃ……うん、鶏肉とキャベツと皮の食感がするね」
「下手くそか!」
だけど僕の口から出た感想にハナコは抗議をしてしまう。うーむ、考えてみれば僕もそんなに食レポをした事がないんだよね。
「だって絶妙に庶民と高級の中間の味で不味くは無いけど美味しすぎでもなくていじりにくい味だから」
「つまり自分へのご褒美的なちょっと贅沢したい時に食べる味なんですね」
「ネガティブな言葉をポジティブに変換する自己啓発書みたいにすごく上手な言い換えだね。まあ美味しいのは間違いないけど比較出来るほど北京ダックを食べた事がないからなあ」
時間をかけて焼いた肉にはタレがしっかりしみ込んでいて鶏肉よりも若干硬めだ。確かに美味しいけれど、正直これが北京ダックとしてどういう位置づけになるのか僕はイマイチピンとこなかったんだ。そもそも北京ダックは高級なのと安いのに二極化していて比較しにくい食べ物だし。
「続きまして小籠包です! はふはふっ! ふぁち、ふぁふふっ!」
「あら、まだ熱かった?」
北京ダックを食べ終えたハナコは続いて一口サイズの焼小籠包を食べた。ただ口の中に入れても大丈夫な程度に冷める事を考慮して行動したけれど小籠包はまだ熱く彼女はお約束のリアクションをしてしまう。
「む、むう、これも含めて小籠包です!」
ハナコは舌を真っ赤にして強がった。どうやら彼女は本当の食べ方を知らない様なので僕は彼女に教えてあげる事にしたんだ。
「いや違うよ」
「はひ?」
「スプーンがないから箸で代用するけど、まずこうしてちょっと破いて汁を吸って、」
僕は割りばしで焼小籠包をほんのり破って美味しい汁を吸う。うん、肉の旨味がたっぷり凝縮されてこれだけでも美味しいね。
「で、ぱくん。あっふ……!」
そいてでもって汁の量が程々のバランスになった所で僕は焼小籠包を口の中に放り込む。う~ん、肉汁と肉が旨味の波状攻撃を仕掛けて、皮ももちもちした部分とカリッとした部分があってこれはなかなか。僕は美味しさのあまり飯の沼にハマったサラリーマンの様な恍惚としたリアクションになってしまった。
「ゴクリ……!」
「それは僕のリアクションに対して何かしらの性的興奮を覚えての事かい?」
「いえ違います。ささ、それよりももう一個私に!」
ハナコはたまらず箸を奪い取り僕と同じ様にして汁をすすり、それから一口でパクンと食べた。んで、
「ん、あ、はうぅ……ん!」
美味しさのあまり同じ様になんだかエロティックなリアクションを取ってしまう。最近のグルメ漫画ってやたらこういうリアクションが多いよね。
「誰に媚びてるの? 後間接キスだけど今更か」
「あ」
ただ僕の指摘に彼女は一瞬ポカンとしてから恥ずかしそうに頬をポッとしてしまう。あらら、こんな事で照れちゃうなんてなんてウブな子なのかしらん。
「まあ忘れそうになるけど紗幸にイチャコラしている姿を見せつけるって意味なら正解かな。すっかり本来の目的を忘れて楽しんじゃってるけど」
「そ、そうでした、そもそもこれは作戦の一環でしたね! そう、作戦の一環です!」
ハナコはやたら作戦を強調して全力で誤魔化す。どうやら向こうもすっかり忘れていたようで、偽装とはいえそんなにデートを楽しんでいてくれた彼女に僕はほっこりしてしまった。
「よし、ではあーんしましょう! お約束のあーんです!」
「はは、あーんか。いいよ」
暑さと恥ずかしさで頭がやられたのかハナコは一歩進んだ提案をした。恋人同士ならよくやるけど彼女とこんな事をするのは初めてである。
ここは提案通りのってみよう。というわけで焼小籠包をほいパクン。
「ん、ん、あ、ぁ、あああ~んほぉ!」
けれど汁をいったん吸い取る作業をしていなかったので焼小籠包は熱々の状態だった。当然僕は口の中が熱気に包まれてしまい性的絶頂を迎えたかの様な気色悪い声を出してしまう。
「ぴゃ」
「あ」
そいでもってそんな変態的な姿を神京町の散策をしていたミヤタにそれはもうガッツリと見られてしまった。これが紗幸だったのなら最高なんだけどよりにもよってこっちかあ。
「ヨシノくんがまた寝取られとるのー! うわーん! ハナコちゃんのくそびっちー!」
「ミヤタさーん!」
そしてミヤタはいつか見た様に半泣きでどこかに去って行ってしまった。何だろうこれ、最近よくデジャブを感じるなあ。
逃げたミヤタは……追いかけなくていいか。しばらくすれば戻ってくるだろうし。それはさておき後で乱暴な言葉遣いの原因となったフィリアさんにもクレームを入れておこう。




