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ゾンビのミヤタさん~英雄が敗北した未来を変えるために、勇者の剣と愛と勇気と豊橋名産のちくわを携えやって来た二回目の世界、東北には太陽が昇り、花咲く明日への物語が始まる~【完結】  作者: 高山路麒
第十二章 失われた理想郷【第二部3】

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12-11 関西第二の都市、神渡市の神京町中華街にて

 神渡市は兵庫の県庁所在地であり、日本の貿易の拡大と共に発展した国内有数の港湾都市で言わずと知れた関西第二の都市である。


 近年は震災によって大きな被害を受けるもその後目覚ましい復興を遂げ今ではすっかりその面影はない。東北もこの街と同じ様に賑やかな街になればいいんだけどな。


「おー!」


 神渡市の観光面ではやはり外せないのは日本三大中華街の神京しんきょう町だろう。ミヤタは入口に作られた立派な中国式の門を見上げアホ毛をしきりに回転させて興奮していた。


 門をくぐるとそこは別世界だった。


 店は全体的に赤い塗装のものが多く視界が真っ赤に染められ、四方八方からはこんがりと焼いた肉や小麦のニオイ、食欲をそそる甘辛いタレの香りなど街を漂う空気は耐え難い空腹感をもたらしてくる。な、なんたる飯テロ!


 中央広場の神社っぽい場所には動物の石像が置かれておりニワトリ、犬、ウサギと大体三体目で僕はこれが干支にまつわるものだと理解した。


「なるほど、これは干支ですか! ん、干支?」


 ハナコはいつもの様に写真を撮ってみようと思ったらしく、順番に撮影していると途中でパンダの石像を発見し数秒思考が停止してしまった。が、すぐに何でもかんでもパンダを設置する中国人の思考を理解しそれも一緒に写真に収めた様だ。


「ひとたくさーん」

「おもしろそうなものたくさんあるよー」

「はいはい、皆散らばらないでね」


 好奇心旺盛なマタンゴさんは早速散らばりそうになるもひかげは遠足で引率する先生の様に皆を呼び寄せる。しかし数秒後には、


「なにこれかわいい~!」

「おいっす」

「ギャー! 陽キャギャルが襲い掛かってきた!」


 その可愛すぎる見た目のせいで観光客のギャルどもに絡まれ彼女のお友達は写真攻めにあってしまう。腕輪にしまっておけばいいものの学習しないね、ひかげも。


「見て見て、ぶたさんなの!」

「ぶたさんだね」


 ミヤタは店に置かれたブタのキャラクターの置物に大はしゃぎだ。中国人は豚肉が好きだと前にゼンが言っていた通り周囲のお店には豚肉を使った料理がたくさんある。きっとこのお店もそうしたものを提供しているのだろう。


「ふふ、どうです、神渡市自慢の中華街は?」

「すっごく楽しそうでワクワクする場所なの!」


 地元民の黒鬼もそんなピュアな彼女のリアクションが嬉しかったのか嬉しそうにほくそ笑む。心温まる光景のはずなんだろうけど……うーん、やっぱりヤクザにしか見えないんだよね。


「約束まではまだ時間があるのでしばらくここで時間を潰しておいてくださいな。経費はこちらで持ちますのでどうぞ好きに飲み食いしてください。ああ、昼時は鬼の様に混みますのでそのくらいを目安に切り上げてくださいね」

「あんたは神様か! じゃあ早速あの角煮まんを買ってくるの! フィリア、神京町を食べつくすの!」

「承知しました、お嬢様」


 その太っ腹な提案にミヤタは従者を連れてぴゅー、と去っていく。あらら、黒鬼さんあんな事言って大丈夫かな。ミヤタはシャレにならないくらい大食いなのに。


「ここって確か中国系マフィアの赤月会のシマなんだっけ。そっちは楽しめるのかしら」

「楽しむ様なものじゃないと思いますけど」


 ただレイカは全く違う娯楽を楽しみにしていたので紗幸は苦笑いしてしまう。もっとも見た感じは至って賑やかな街並みでナゴヤの風俗街の様な陰鬱な空気は感じられなかった。


「あなたがシマ荒らしに来た敵対する組の人間ならともかく、基本的に治安は普通の日本の安全な繁華街程度なのでいきなりバトルという事はありませんよ。客引きは少し鬱陶しいですが赤月会は長年この地域と比較的良好な関係を築いておりますので」

「なーんだ、つまんないの」

「治安がいいという情報でがっかりされたのは初めてですねぇ。まあ反社と仲がいいというのもそれはそれで問題ではありますが。彼らの息がかかった政治家や企業も多いですし、何よりクスリの密売組織のケツモチをしてますし」


 中華街は関西屈指の観光地という事もあり観光客がたくさんいる。これだけ人がいれば揉め事の一つや二つは起きそうだけど……うん、喧嘩っ早いレイカがやらかさないか気を付けておかないとね。


「やれやれ、修学旅行に行って真っ先に他校の不良に喧嘩を仕掛けに行く昭和のヤンキーじゃないんだから他に思い浮かぶ事はないのかい? ドーラと紗幸もレイカをしっかり見張っていてね」

「ハハ、それは構へんけど見張るだけやで。巻き込まれたらかなわんし」

「えーと、あんまり期待しないでね」

「違いない」

「あたしどんだけ凶暴な奴だと思われているの? ちゃんとTPOを弁えて自重しながら喧嘩するから」


 そもそも喧嘩をすんなよ、と誰もが言いたかったけど僕らはとっくに諦めていたのであえてそれを口にする事はなかった。このどうしようもない戦闘狂は定期的に暴れさせて破壊衝動を発散させるしか制御する方法はなかったからね。


「じゃ僕らも時間を潰しがてら観光しようか、ハナコ」

「え、あ、はい、そうですね」

「?」


 まあその辺の事は仲良しな猫と妹に任せて僕は別の目的を遂行しよう。皆は内緒話をする僕らを不審な目で見ていたけど、僕は当初の予定通りハナコと一緒に中華街を探索する事にした。

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