12-10 悪化する中国とアラディア王国の関係
後日荷物をまとめ、僕らは修理を終えたセントマリアに乗り優雅な空の旅を楽しんでいた。
うん、やはり空高い場所で飲むコーヒーは美味しい。豆も高級だし貴族になった気分だ。普通にボタンを押して紙コップに注ぐタイプのものだとしても。
けれどスマホでニュースを見ていた僕はげんなりとした気分になってしまう。それは中国で発生したアラディア王国に対するデモが暴徒化したというものだ。
「ヨシノくーん、何見てるの?」
「ぷひ」
僕の険しい顔に気付いたミヤタはぶたにくに乗りながら近づいてくる。この過激な映像はちょっと彼女には見せられないので僕は言葉だけで伝える事にした。
「ニュースだよ。ほら、朝もやってただろう? 中国のデモ」
「ああ、あれ? 中国の人もどうしてアラディア王国に怒ってるのかなあ」
「利権を横取りしたり経済的な圧力をかけたり理由はたくさんあるけど、やっぱり一番は台湾にアラディア女王が訪問した事だね」
「ふに? それのどこが悪いの?」
まだ子供のミヤタはその理由がわからず首をかしげてしまう。何も知らなければ大体の人はこんなリアクションをするだろう。
そんな彼女にフィリアさんは困り顔で解説をする。
「いろいろあるんですよ、中国と台湾の間には。ただ一つだけ言える事はこの行為は間違いなく中国が最も嫌がる行為だという事です」
「ええ、下手をしたら小競り合いが起きるかもしれませんね」
「ふにぃ、喧嘩は良くないの」
「ぷひー」
喧嘩、か。その程度で済めばいいけれど。けれど僕たち一般人に出来る事は日本が巻き添えを食らわない様祈る事だけだった。
暴徒化したデモ隊はアラディア王国の国旗を燃やし、王国系列の店を襲撃、車を燃やすなど滅茶苦茶ブチギレていた。
流石にこれはやりすぎだけど、ここ最近は経済的な圧力によって中国国内の会社がいくつか潰れるなど実害として損失を被っているし気持ちは少しだけわかってしまう。穏便に事が済めばいいんだけどねえ。
うん、この辺の事を考えていても仕方がない。ちょっくらハナコに絡んでくるか。
「相席いいかい?」
「あ、はい、どうぞ」
僕はハナコが座っているテーブルに移動し、誰にも聞かれていない事を確認してからそれとなくあの話をする事にした。
「それで? ハナコは向こうで何が起こるのか知ってるの?」
「そうですね。ラストでは廃棄された工場からネクロムの流出を防ぐため奮闘します。ですが今回も正史はあまり当てにならないかと」
「うぃ」
ハナコは小声で何が起こるのか教えてくれるけどその答えは正直微妙なものだった。ただ荒事があるとわかり心構えが出来たのは良いかな。
「アロウレスかあ。かち合わないといいけどね」
「ええ。敵に回すとかなり厄介ですからね。黒鬼さんの派閥と久我さんの派閥は不仲で有名でしたが……何事もなければいいんですけど」
さらに追加で不安になる要素も聞いてしまい僕は落胆してしまう。同じテロリストでも彼らはチェルノ団とは違い躊躇なく相手を殺せるガチ勢だ。正直戦いを避けられるものなら避けたいけど嫌な予感しかしないよ。
「まあいいや。ハナコ、それよりも……」
「はい?」
ただそれはそれとして僕は彼女にお願いしたい事があった。その申し出を聞いたハナコは戸惑っていたけど、すぐにしゃきんとした顔になり引き受けてくれたのだった。




