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ゾンビのミヤタさん~英雄が敗北した未来を変えるために、勇者の剣と愛と勇気と豊橋名産のちくわを携えやって来た二回目の世界、東北には太陽が昇り、花咲く明日への物語が始まる~【完結】  作者: 高山路麒
第十二章 失われた理想郷【第二部3】

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12-8 食えない男、黒鬼と同盟を結ぶために

 怪しい店に行ったらそこには黒鬼さんが、そしてミヤタとフィリアさんがいて。僕はまだこの状況がいまいちわかっていなかったけど黒鬼さんはにやにやと悪い笑みを浮かべた。だからもう完全に悪役にしか見えないんですけども。


「ええと?」

「事前の裏工作ですよ。チーム明日花の事務方のトップはアキヅキさんですが実権はミヤタさんが握っておりますので」

「はあ」

「見て見てー! ハ〇クホーガンのフィギュアとかDVDとかもらったの! ヨシノくんもこっちでおかし食べようよ!」


 フィリアさんは静かに警戒するもミヤタは完全に買収されてしまっていた。ううむ、こんなちょろい奴がうちのトップで大丈夫なのかなあ。


「しかし私の企みを察知しここに訪れるとは流石ですねぇ」

「はて、何の事やら」

「ふふ、そういう事にしておきましょう」


 本当に何も知らなかったんだけどなあ――そう言いたかったけど訂正するのも面倒くさかったので僕はそういう事にしておいた。それに彼は多少腹黒い部分はあっても悪い人じゃないからね。


「それで? 僕らに仕事の依頼でもしたいんですか?」

「そうですねぇ。まあその辺の話はまた今度、あなたも欲しい商品があればお近付きのしるしに差し上げますよ。うちは稀覯本も取り扱っておりますので」

「ほう」


 彼は僕も買収しようと賄賂を贈ろうとする。ただその誘いは実に魅力的だったけど僕が食いついたのはその部分ではない。


 未来から来たハナコは現在様々な脅威に立ち向かうため正史において七大派閥と呼ばれる英雄たちと同盟を結ぼうと暗躍し僕もその手伝いをしている。彼女いわく確か黒鬼さんもその一人なんだっけ。


 こっちとしても仲良くしたかったし向こうのほうから来てくれるのならありがたい。ここは丁重におもてなしされておこう。


「ねね、私は!? 贈り物的な奴!」

「いえあなたは普通に買ってください」

「ぐぇ」


 美味い話を聞き嬉しそうに近づいたヤオは黒鬼さんにバッサリ切り伏せられる。だけどちゃっかりと、


「ただ値引き交渉には応じますよ? 関西人の私相手に勝てればの話ですが」


 と、フォローする。けれど良からぬ事を企んでいるのは間違いない。きっと抱き合わせでいらないものも売りつけられるんだろうな。


「くっくっく、望むところだよ!」


 ただヤオは挑発に乗ってバトルを始めてしまった。やれやれ、どうなっても知らないよ。


 僕は仕方なくちゃぶ台の周りにあった座布団に座り、箱に風見鶏の絵が描かれた小さなチーズケーキを食べる事にした。こんな姿を見られたらアキヅキさんに怒られそうだけど……うーん、ま、いっか。


「ヨシノさん、わかってますね」


 お菓子を食べているとフィリアさんは小声で僕に告げる、なので僕はもちろん素敵な笑顔で、


「わかってます。この店で一番高い商品を持って帰りますよ」


 と言うともちろん彼女から「違います」とお叱りの言葉が返ってきてしまった。むう、相変わらずボケを理解しないんだから。


「ならさっきわたしが見つけたよくわからないアートみたいな奴はどうかな。ほら、そこにある線が引かれた長方形の奴」

「んー? ああこれ? これなんなのかな。僕にはよくわかんないよ」


 早速店内を物色するとミヤタは何を表現したいのかさっぱりわからない芸術作品の様な何かをおススメしてくれる。


「でしょうね。私にもそれが何なのかわかりません。一応八千円程度の値段をつけていますが」

「無名のアート作品につけるのには絶妙な値段ですね」


 そのアートっぽい何かは長方形の形をしていて上半分には四という数字とお花見のイラスト、下半分には中に一から三十までの数字が書かれた四角形が集まった図形が描かれていた。


 何となく春の絵画って事はわかるけどこれはどういうアート作品なんだろう。芸術はわかんないよ。でもこういうよくわかんない奴が数億とかに化けたりするんだろうな。


「この店で一番高い商品と言うとあのレンブラントの絵画でしょうか。一体どういう経緯でこの店に運ばれたのか気になりますが」

「他にもザクザク数百万単位のお宝がありますね。ただ繁盛しているようには見えませんしどう考えても採算は取れないと思うんですけど」


 僕はさほどお宝には詳しくないけど知識のない僕でも店内にはお宝と呼べる高価な品物がある事はすぐに分かった。そんなものが二束三文のがらくたに交じって並んでいるわけだからまさしく玉石混交という言葉が相応しいだろう。


「その辺について考えるのはやめましょう。薮蛇です」

「ですね」


 蛇の道は蛇、きっと知ったら面倒くさい事になるに違いない。だけどヤオはどうしてこんな店を知っていたのだろうか。


 麻薬取締官の黒鬼蒐兵。悪意ある人間に蹂躙された東北を憂い、一度は僕らを救ってくれた彼は間違いなく英雄と呼べる人間だ。


 けれど同時に危ういものも感じる。清濁併せ吞むというけれど潜入捜査を行っていた彼はきっと必要に応じて倫理的に問題のある事もしてきたのだろう。真っ当な方法では手に入るはずがないこの店の商品が何よりの証拠だ。


 七大派閥と同盟を結びたいハナコには悪いけど僕にとっては悪意のある人間からミヤタを護る事が第一だ。果たして彼は信頼に足る人物なのかどうか――見極める必要がありそうだね。

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