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ゾンビのミヤタさん~英雄が敗北した未来を変えるために、勇者の剣と愛と勇気と豊橋名産のちくわを携えやって来た二回目の世界、東北には太陽が昇り、花咲く明日への物語が始まる~【完結】  作者: 高山路麒
第十二章 失われた理想郷【第二部3】

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12-4 ヤオとの偽装デート

 自分でもよくわからないまま始まった『緊急クエスト・妹との恋愛フラグをへし折れ!』。いろいろ考えた結果、僕はたまたま予定が空いていたヤオとデートをする事にした。


「あのー、状況がよくわかんないんだけど私は何で呼ばれたの? 私サブヒロインだよ? コンシューマー版になって一応追加されたとしても十分くらいで読み終わるタイプだよ?」

「ヤオ、僕は今から最低最悪のクソ男を演出するから女の君は黙って男の僕についてきてほしい。それじゃあ一生の想い出に残る最低なデートにしよう」

「おお、男尊女卑なセリフが吹き飛ぶくらい人としてどうかと思う発言だね。でも面白そうだからやってみるよ!」


 ノリのいいヤオは僕の失礼にも程があるお願いを快諾してくれた。それじゃあ早速デートを始めるとしようか。



 恋愛というものは古今東西世界中の人の興味を引き、あらゆる学問の中で最も長い間研究されてきたといっても過言ではないだろう。


 デートもまた同様だ。デートにおすすめの場所、その逆に避けたほうがいい場所は既にある程度結果が出ている。そりゃもちろん個人差があるから結局は人それぞれになるんだろうけど。ミヤタとかは四の五の言わずにプロレス観戦に誘えば一番だろうし。


「というわけでやってきました、デートには不向きな場所の代表格であるゲームセンターでございます」

「あれ? どうしてデートには向いてないの? 楽しいと思うけど」

「ゲームセンターっていうのは基本的に一人で遊ぶものが多くて彼女と一緒に楽しめるものはクレーンゲームくらい……なんだけど」

「ほとんどクレーンゲームしかないね」

「最近は収益を考えてどこもそんな感じだからねぇ」


 僕は自信満々で模範解答を出したもののゲームセンターの敷地面積の大部分はほぼほぼクレーンゲーム系が占めていた。ゲーセンの筐体の中では一番稼げるし、ここは家族連れとかも多いスーパーの中にあるゲーセンだから当たり前っちゃあ当たり前なんだけど。時代の流れが憎いよ。


 ついでに言えば当然の如く店内には若者も多くうちの高校の制服を着た人間もちらほら見かける。カップルらしき二人組も何名かいてまあまあ人気のデートスポットの様だ。


「ごめんね、ミスった。なんか知り合いも多いし噂になっちゃうかも」

「いーよいーよ。ギャグ担当ポジションを確立した私はちょっとやそっとの事じゃ大した噂にならないから」

「それもそっか」

「そこで納得されてもイラっとするんだけど。それで? 他の子みたいに大人しくクレゲでもする? 最近流行ってるこの妖怪の奴とか」


 ヤオの視線の先には最近やたら目にする妖怪の猫のキャラクターのぬいぐるみが置かれていた。僕はそこまで詳しくないものの一人につき一つだけという個数制限をする程度に人気ではあるらしい。


「化け猫ならもう間に合っているからなあ。ミヤタにでもプレゼントしようかな」

「あー、駄目だよヨシノくん。振りとはいえデート中にほかの女の子の話をしたら」

「ととっ、ごめん。最低限のデリカシーは持たないとね」


 しかし僕がうっかりミヤタの名前を口にするとヤオはほんのり嫉妬してしまった。もちろん本当にそんな事は思っていないだろうけど。


「あれ、けどそもそもこのデートは最低のデートにするのが目的だからそれでいいのかな?」

「それもそうだね。でもどうやって妹ちゃんにそれを伝えるの? 最低なデートをしてもその評判を聞くか実際に見てなかったら意味ないと思うけど」

「しばらくすれば紗幸がこのゲームセンターに中学組と一緒に遊びに来るからタイミングを見計らって幻滅するような行動をする予定だよ。なんか穴がありそうな計画だけどうちのポンコツな策士が一生懸命考案した作戦だから文句は言わないであげてね」

「そっか。じゃあそれまでは普通に楽しもっか」

「うぃー」


 というわけで僕らは紗幸が来るまで時間を潰す事にした。おそらく僕らの姿を人が見たら、多分百人のうち百人がカップルではなくただ放課後一緒に遊びに来た高校の同級生だと思ってしまうだろう。


 別にそれでも何ら問題はないんだけどね。ヤオとのフラグを立てたいわけじゃないし。


「でも普通って言っても……やっぱり普通にクレーンゲームでもする?」

「僕はそれでもいいけど。ヤオはゲームセンターに来た事がないの? 結構来そうなイメージがあったけど」

「まあぼちぼちかな」


 どう遊ぼうか困っているヤオに尋ねると彼女は言葉を濁す。その言葉にはどちらかと言えば初心者的なニュアンスがあったので僕は少し意外に思ってしまった。


 ヤオと言えばクソゲーとかバカゲーをこよなく愛する事で知られているけど普通のゲームはそうでもないのかな。よし、ここは彼女が好きそうなゲームにしようか。


「あ、ヤオ。あっちにリンゴを落とすゲームがあるよ」


 そう考えゲーセンの中を見渡した僕は以前彼女がプレイしたリンゴを落として消すクソゲーを発見した。これならプレイした経験もあるし楽しめるはずだ。


「リンゴを落とすゲーム?」

「うん。ほら、前に青森に行った時に大会に飛び入り参加してたじゃん」

「……ああー、あれね! っていうかゲーセンに置かれるレベルにまでブームになったんだ」


 ただヤオはその存在をすっかり忘れていたらしい。こんな奴に負けたと知られたら彼女にフルボッコにされた前回王者は悲しくて仕方がないだろう。


 元々このゲームはただ一人で黙々とリンゴを消すゲームだったけど対戦仕様になりリンゴを消したら相手にお邪魔リンゴを降らす事が出来る様になったようだ。権利的に大丈夫なのかという率直な疑問は野暮ってものだろう。


「じゃやろっか」

「うん、いいよー」


 こちらの台は対戦も出来るので一緒に楽しむにはちょうどいいだろう。サードマンモードは流石に使わないでおこうか。いや、次元の違う強さのヤオなら使うくらいがちょうどいいかな?


 というわけで向かい合った台に座り対戦スタート。相変わらずまったく見分けがつかない似たり寄ったりな見た目だけど今の僕なら簡単に見分けられる。


「のお!?」


 というわけでホホイのホイ。もっと苦戦するかと思ったけど意外にも勝負は一瞬で決まってしまった。


「いや強すぎるって!? ヨシノ君ってガチ勢だったの!?」

「ごめんごめん、手加減したほうがよかったかな」


 そのあまりにも圧倒的な強さにヤオは引いてしまった。クソゲーを極めた彼女の力をもってしてもやはりサードマンモードを打倒する事は出来なかった様だ。


 やはりサードマンモードは遊びで使うべきじゃないな、チート過ぎて楽しめないし。空気の読めない行動は盛り下がるデートとしては正解だったけどね。


「普通にクレゲにするかー」

「だねー」


 というわけで余計な手順を踏んだけど僕らは結局クレーンゲームをする事にした。こちらもサードマンモードを使えば余裕だけど……うーん、対戦じゃないからこっちは別にいっか。お店の人には悪いけど。

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