12-2 現実逃避に猫もふもふ
――芳野幸信の視点から――
岡山から戻ってきて、夏も真っ盛りな七月になる。
僕はクーラーがあまり効いていないチーム明日花の工房でせっせとよくわからない部品を仕分ける作業をしていた。これが何なのかはわからないけどこれがあれば被災地の岡山の人は助かるらしい。部品から推測するに水系の何かっぽいけど。
僧侶が掃除をする様に僕は黙々と作業を続ける。うむ、今の僕にとってこういう無心になれる仕事はぴったりだ。
「暑いねー」
「ですねー」
中身のない発言をすると部屋にいたシャロはニコニコしながら相槌を打ってくれた。ここの所事務所とはご無沙汰で人とおしゃべりしていないし山猫一家の皆と絡んでみるか。
「このクソ暑い中猫ってどうやって休んでるの? 特にうめまるとか地獄でしょ」
「まーね。野良猫時代は基本家の床下に忍び込んでのんびりしてたよ。なかなかひんやりして気持ちいのさ」
「あ、それわかります。美味しい虫とかも結構いますし結構快適ですよね」
「虫って……まあ猫だから食べるよね。そういや猫って元々先祖が暑い地域に住んでいたから暑さには強いんだっけ」
「そうだニャ。夏は地獄だけど冬はもっと地獄なんだニャ」
うめまるとチョコも会話に参加し二人は猫についての雑学を話してくれた。ただ暑いのが平気っていっても限度はあるから猫を飼っている皆は熱中症にはくれぐれも気を付けてね。
「それよりも珍しいですね、ヨシノさんが工房にいるなんて」
「ああうん、今ちょっと事務所に居辛くてね」
シャロは僕の様子に何かを察したのか優しい言葉で気遣ってくれる。相変わらずチーム明日花随一の気配りの出来るええ子や。
「そうですかー。でもどうしてなんです? 岡山から帰ったあたりからこんな感じでしたよね」
「生きているといろいろあるのさ。今の僕はとても悶々ムラムラしている。だから人とは距離を置きたいんだよ」
「も、悶々ムラムラですか。人間さんにはいろいろあるんですね」
あからさまな表現に彼女は苦笑するけど引く事はなかった。だからどうして君はこんなにええ子なんやー。
いろいろな事――それはもちろん紗幸との事だった。結局聞きそびれたけどアレ絶対告白だったよね……。
「角を立てたくないしもう仕方ないからシャロルートでいいかい? というわけでシャロ、ストレス発散にもふもふさせて」
「ニャ!? は、はい、いいですけど!? あ、駄目、そんな、やぁああ~ん! みんな見てますよぉ!?」
「クックック、君は見られて興奮するんだろう?」
僕は消去法でシャロとイチャイチャする事に決めた。同じ禁断の愛でもこちらのほうが業が深い気もするけどさ。
「ニャアアア……!」
「ふう、暑いね~」
夏バテをしたうめまるは嫉妬に狂うチョコを無視し液体の様に溶けてしまう。あっちもあっちでもふもふしたいけど暑苦しいだろうなあ。
「こらー! 何してるんですかヨシノさん!」
「あら」
けれどシャロと戯れていると部屋にハナコが乱入しお叱りの言葉を貰ってしまう。流石にずっと仕事をさぼって猫をもふもふしていたら怒られるよね。
どうやら現実逃避もここが限界か、やれやれ。




