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ゾンビのミヤタさん~英雄が敗北した未来を変えるために、勇者の剣と愛と勇気と豊橋名産のちくわを携えやって来た二回目の世界、東北には太陽が昇り、花咲く明日への物語が始まる~【完結】  作者: 高山路麒
第十一章 永遠の村と『あの日』の償い【第二部2】

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11-84 山津見分校があった場所へ

 わたしがまず向かったのは山津見村の道が塞がれた場所の向こう側のエリアだった。


 アラディア王国の人たちのおかげでおおよそのガレキや土砂は撤去されて通れるようになっている。つまりここから先はほぼ手つかずだからやれる事はたくさんあるはずだ。


「あんな素敵な場所だったのに……」

「こりゃまた派手にやられたねぇ」

「ふにぃ」


 だけど被災エリアに立ち入ったわたしたちは、特に異界で平和な山津見村を目の当たりにしていたヨシノくんとさっちゃんはひどく落胆してしまった。


 無事な場所もあるにはあるけど村の至る所で土砂崩れが発生していて、川の近くにあったおうちは建っていた地面ごと抉られて斜めに傾いていた。


 先行していた自衛隊や消防の人は壊れた家の中から人を救出する。けれど助けられた泥まみれの人はだらんと脱力して動く様子はなく、あの人がもう生きていない事はなんとなくわかったの。


「ぷひぃ」


 避難所の学校からも遠目で見る事は出来たけどここまでだったなんて。あまりにも酷過ぎる光景にわたしは意欲を失ってぶたにくたちも元気を無くしてしまった。


「さて、どこから手を付けたものか。ここまで被害が大きいと何からすればいいのやら」

「あの、まずは山津見分校に行ってみない?」

「山津見分校か。いいよ」

「あ、待って!」


 ヨシノくんはさっちゃんとお話をして目的地を決める。途方に暮れたわたしも取り敢えずついて行く事にしたの。


「何人くらいの人が亡くなったんだろう」

「そのあたりの数字はまだ出てないけど柳敷も含めて何人かは遺体で見つかったみたい。他の地域も合わせたら三桁は行くんじゃないかな」

「そっか。弓削さんは上手くいったかな。後でカヤちゃんたちを探してみようか」

「だね」


 二人は移動中被害状況についてお話をしていた。わたしの知る限り岡山には二人の知り合いはいないはずだけど友達が被災したのかな。


「学校……があった場所はここかな」


 道の悪い中を歩き続けると私たちは多くの木片が混ざった土砂の山を発見した。多分ここにあった建物の残骸なんだろうけど。


 学校の跡地にも自衛隊の人たちがいて捜索活動をしている。ただ土砂の量は膨大で作業は難航している様だ。


 加えて裏手にある山は山肌が剥き出しになっていてまた崩れそうだ。慎重に作業をしないと二次災害の危険もあるし気を付けないといけないだろう。


「コケー」


 学校の近くにはどこかからか脱走したニワトリもいて寂しげに残骸を眺めていた。もしかしたらこの場所はこの子にとっても大事な場所だったのかもしれない。


「ぷひ? ぷひ!」

「「ぷぎー!」」

「あれ、ぶたにく?」

「おわ!? なんでブタ!?」


 ぼんやりと現場を眺めていると何かに気が付いたぶたにくたちが土砂の山を登り鼻をぷひぷひと動かして穴を掘り始めた。救助活動をしていた人たちは突然ブタが現れたものだからとてもびっくりしていたの。


「もしかしてそこに何かがあるの?」

「私たちも行ってみよう、お兄ちゃん!」

「ああ」

「っていうか危ないから早く離れ、」

「ぷひぷひぷひ!」


 作業をしていた人はわたしたちを追い返そうとしていたけど、ぶたにくたちはわき目も振らず猛烈な勢いで掘り進める。そしてしばらく穴を観察しているとそこから人の身体っぽいものが見つかったの!


「誰か埋まってるよ! 誰でもいいから手伝って!」

「なに、本当か!?」


 大人の人たちは人が埋まっていると知りすぐにそれどころではないと判断し総出で救助活動を始めた。助かるかどうかはわからないけど急いで出してあげないと!


 パラパラ……。


「ふに?」


 でも作業をしていると小石が転がる音が聞こえてきた。不思議に思って山のほうを見ると土や石が少しずつ崩れていくのが確認出来てしまった。


「まずい逃げろ、崩れるぞ!」

「ふに!」

「そんな、下に誰かがいるかもしれないのに!」


 自衛隊の人は大声で叫び全員が慌てて土砂の山から逃げ出した。けどまた崩れてしまえばもうこの人は絶対に助けられないだろう。


「そうも言ってられないよ、ミヤタも避難して!」


 ヨシノ君の言う事はもっともだ。そうしないといけないのはわかる。けど、


「やなの! 助けを待ってる人を見捨てるだなんて!」


 わたしは拳に力を籠め呼吸を整え深く腰を落とす。危険だとしてもわたしは名前も知らない誰かを助けたかったから!


「この技はもしかしてミドウを倒した時の!?」


 この拳は誰かを傷つけるためじゃない。誰かと手をつなぐためにあるんだ。ヒーローになんてならなくていい。わたしは大切なモノを護れる強さだけあればいい!


 その拳に目いっぱいの愛と勇気を込めて。全てのタイミングはバッチリ、今だ! 不可能な事でも無理やり可能にしてやるの!


「どーんっ!!」


 そしてわたしは人体の限界を突破し戦艦の主砲が如く力の限り強烈なパンチをした。


 轟音と共に放たれた高速の拳は土砂の山を、その先にある壊れた山すらも容易く吹き飛ばす。


 その凄まじい威力に山には隕石が落ちた様なクレーターが出来てしまう。今日はいつも以上に暴れちゃったけど後でアキヅキさんに怒られないよね。


「な、なんじゃこりゃッ!?」

「はは、ミヤタは相変わらず無茶をするね」


 相手が人ではなく物だったのでリミッターが外れた結果今回は前よりも凄い威力でぶちかます事が出来たらしい。ていうかあの時は初めてだったから威力はそうでもなかったけどミドウもこんな攻撃食らってよく死ななかったね。


「生きてる? ねえ生きてる!?」

「ぷひ!」


 そんな事より今は埋まっていた人だ! わたしはぐったりと倒れた泥まみれの人を急いでぶたにくたちと掘り起こし声をかけたの!


「あ……」


 けれどその人はピクリとも動かなかった。でも考えてもみればそれも当然だ、この人はきっと何日も埋まっていたんだから。


 だけどわたしはあり得ない奇跡を願ってしまう。それがどれだけ低い可能性でも、わたしは希望を捨てる事が出来なかったから。

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