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ゾンビのミヤタさん~英雄が敗北した未来を変えるために、勇者の剣と愛と勇気と豊橋名産のちくわを携えやって来た二回目の世界、東北には太陽が昇り、花咲く明日への物語が始まる~【完結】  作者: 高山路麒
第十一章 永遠の村と『あの日』の償い【第二部2】

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11-81 ゲスミの決意

 商店街を抜けるとそこには見覚えのある駅を発見した。表側と裏側の違いはあるけど岡山駅とデカデカと書いてあるし、ここが白の世界でいう所の吉備駅で間違いないはずだ。


 とにかく寒いし雪をしのぐためにもさっさと駅の中に入ろう。僕らはいそいそとゴールである駅の構内に入っていく。


「ミッションコンプリートお疲れ様。ご褒美にお〇きやの鯛ちくわをあげるわ」

「セラエノ、こっちに来てたんだ」

「ご褒美にお〇きやの鯛ちくわをあげるわ」

「あ、うん」


 そして構内ではセラエノが待ってくれていたけど彼女は発見するや否や瀬戸内名物の鯛ちくわを勧め、無視をしてもゲームのNPCのみたいにしつこく同じ発言を繰り返したので僕はイベントを進めるために仕方なくそれを受け取った。


「あれ? どうしてここに、というかどうやってここに来たんですか?」

「ええと、お前らの知り合いか?」

「彼女はセラエノで、まあ案内人というか門番的な人だよ」


 紗幸はセラエノの正体を知らず、ゲスミに至っては初対面なので僕はちくわを食べながら軽く説明をする。もっとも僕も彼女についてそこまで詳しく知っているわけじゃないんだけど。


「ありがとう、あなたたちには自覚はないでしょうけどおかげでトラブルが一つ片付いたわ。皆の活躍で世界の安定を少しだけ保つ事が出来た。時空の秩序を護るものとしてお礼を言わせて頂戴」

「よくわからねぇけど……こっちはお礼なんて言われても全然嬉しくねぇよ。世界とかどうでもいいし……そんな事したって皆は……」


 セラエノは称賛するもゲスミは友の顔を思い浮かべ悔しそうに俯く。全てを失った彼女にとってはこの結末は敗北以外の何物でもない。だから僕と紗幸も手放しで喜ぶ事は出来なかったんだ。


 けれどセラエノは真顔で、


「ねえ、あなた。もし対価と引き換えに皆を救う方法があるとするならばどうする?」

「え」


 と、彼女にとてつもなく心を揺さぶる提案をしたんだ。


「どういう事だ! 皆は助かるのか!? 皆を助けられるのか!?」


 一度失った希望を取り戻せる。ゲスミはすぐに食いつくもセラエノは浮かない顔をしていたので、それが必ずしも最善の結末をもたらすとは限らない事はすぐに理解出来た。


「けどもし容易く全員が幸せになる手段ならば君は最初にそれを伝えていたはずだ。そうしなかったって事はそれだけの理由があるんだよね」

「ええ」


 セラエノは重苦しい表情で頷く。こりゃ鬱展開の一つや二つは覚悟したほうがよさそうだな。


「その方法は弓削華澄、あなたが過去に戻って皆を救済する事よ。当然学校は土砂崩れに飲み込まれるからあなたも死ぬリスクはある」

「それくらい私はっ!」

「それだけじゃない。たとえ成功したとしても整合性を保つためあなたの存在はこの世界から消え去ってしまう。存在も、記憶も、過去に遡って全てね。今ここにいる二人は例外だけど」

「……ッ」

「そ、そんな」


 それはあまりにも悲しすぎる未来だった。たとえ親友を救う事が出来たとしてもその決して報われない残酷すぎる結末に果たして意味はあるのだろうか。


「やってやるよ、やるに決まってるだろ!」


 だけどゲスミは即断する。その過酷な運命を、友を救うために甘受する事を即座に決意したのだ。


「いいの、弓削さん」

「……当たり前だ。一度は捨てた命だ、皆に返さないとな」


 ゲスミは紗幸の問いかけに自信満々に答えるけれどその手は震えていた。きっととても怖くて仕方がないに違いない。いや、こんなのが平気な人間はまずいないだろう。


「何で兄さんが死んで自分が生きているのかずっと悩んでた。きっと私は今日この日のために生かされてきたんだ」

「君はそれでいいのかい。どんな結末でも報われないよ」

「ああ。自分の命に代えてでも護りたい存在がいる。そんな存在がいるだけで幸せな人生に決まっているだろ。私はとっくに報われていたんだ」


 彼女の瞳にもう迷いはなかった。ならば僕に出来る事は彼女を信じて見送る事だけだろう。覚悟を決めた人間を邪魔するなんてそんな無粋な事はすべきではないのだ。


「そう。ならば十七時九分発の快速ことぶきに乗りなさい。そして過去を、運命を変えなさい。健闘を祈っているわ」

「わかった」

「あなたたちは向こうよ」


 セラエノにそう伝えられたゲスミは改札口に向かって歩いていく。どうやら僕らと彼女はここで本当にお別れの様だ。


「あの、弓削さん!」

「ん」


 去り際、紗幸はたまらずゲスミに声をかけてしまう。そして、


「もし今度出会う事があったら……今度は普通に友達になろうね。私、待ってるから!」

「……ぷぷぷ、馬鹿野郎が。こんなゲス野郎と友達になりたいとか。生きてたら考えておくよ」


 そんな想いを告げ、ゲスミはようやく全ての憂いを断ち切る事が出来たらしい。


 彼女は最後に最高の笑顔をして手を振って改札口の向こう側に消えていった。


 だけどそれは叶わない願いだった。傷つきぶつかり合ってようやく分かり合えたのになんてこの世界は残酷なのだろう。


 でも、もしかしたら。


 僕は心の奥底では根拠のない淡い期待を抱いていた。


 この物語にハッピーエンドは存在しない。果たしてこれが正しかったのかはわからないけど、僕はそんな運命で決められた結末すらも彼女たちならば変える事が出来ると信じていたかったんだ。


 さあ、僕らもそろそろ自分たちがいるべき場所に戻るとしよう。


 ゲスミ、どうか望む未来をその手で掴み取るんだ。皆から強さを受け取った君ならそれが出来るはずだから。

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