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ゾンビのミヤタさん~英雄が敗北した未来を変えるために、勇者の剣と愛と勇気と豊橋名産のちくわを携えやって来た二回目の世界、東北には太陽が昇り、花咲く明日への物語が始まる~【完結】  作者: 高山路麒
第十一章 永遠の村と『あの日』の償い【第二部2】

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11-65 山津見村タイムリープ殺人事件の犯人

 僕は尾行のお供に黒い雷神を貪りながらゲスミを追跡する。張り込みと言えばあんパンが代表的だけど尾行は何だろう。いや、普通尾行中にお菓子は食べないか。


 それはさておきこのお菓子はちくわで有名な愛知のとある地域と深いつながりがあるけど無性に親近感を感じてしまうのはなぜだろうか。何にしたって甘いから体力回復にはぴったりだよね。


「今度はどこに行ってるんだろう」

「ゲスミは殺人鬼に会いに行ったわけだから殺人鬼がいる場所、つまりフミがいる場所だろうね。となると自然と絞られてくるけど……」


 紗幸にそう答え、僕は彼女たちの行動を予想しつつ尾行を続ける。こんな田舎では行く場所も自然と限られてくるけど正直細かいフミの行動パターンは把握していないからなあ。


 けれどゲスミはその場所を把握していた。それはつまりこの異界で発生したあらゆる出来事を網羅する程タイムリープを繰り返しているという事なのだろう。どうしても友人を助けたいというその執念には感服するけど同時に切なさも感じてしまった。


「ふむ」


 でも感傷に浸っている暇はない。何故なら僕らは目的地らしき場所に到着してしまったからだ。


 数十メートル先にある民家は山津見村にある他の家と違い随分と新しいオシャレな家だった。この家が誰の家かはわからないけど消去法で考えるときっとフミの家なのだろう。


 そして僕はすぐに家の周囲に生えていた大木の陰に隠れて警戒していたゲスミを発見する。向こうも僕らの存在にすぐに気が付き、あからさまに嫌そうな顔をしていたけど僕は陽気に手を振ってあげた。


 彼女は最初会った時と同じようにボウガンを構えていた。きっと僕に襲い掛かった時も殺人鬼を倒そうとしていたんだろうな。


「ねえお兄ちゃん、私はどうすればいいかな。ガトリングだけど」


 紗幸は威力の高すぎるガトリングで戦う事を懸念してしまう。ガトリングはもちろん強力な武器だけど人間に向けたら確実に死ぬからやはり躊躇いはあるんだろう。


「紗幸の出る幕じゃないよ。殺人鬼ぐらいどうとでもなる。けどもしも人外なら遠慮なくぶっ放して」

「うん、わかった」


 彼女の手を借りずとも問題はないはずだけど僕は別の可能性を危惧していた。


 ここは異界なので相手が普通の殺人鬼だとは思えない。そうでなければゲスミはとっくに相手を殺していたはずだ。つまり容易に殺せない何かしらの理由がある……僕はその事に気付いていたんだ。


 パァン!


「「ッ!?」」

「あら」


 考え事をしていると突如として乾いた銃声が民家の中から聞こえてくる。そして僕らが戸惑っている間にゲスミは僕らの誰よりも早く縁側の窓ガラスを破壊して家の中に侵入したんだ。


「お兄ちゃん!」

「わかってる」


 どうやら待ちかねた殺人鬼がお出ましの様だ。向こうから来てくれるのなら万々歳、その顔をしっかり拝ませてもらうとしよう。


「お邪魔しま~す」

「弓削さん!」


 僕らは割れたガラスを踏み砕き室内を調べる。家の中はエレガントを通り越してやや悪趣味な家具が多く家主の趣味がよくわかってしまう。


 しかしその辺のチェックは後回し、まずはフミを助けないと。だけどどこにいるんだ――?


 パァン!


 続けて二発目の銃声。その最初の惨劇と酷似した状況に僕はひどく不愉快な感情になる。もしかしたらまたあの時の様にグロテスクな死体を見る羽目になるのだろうか。


 だけど音を出してくれたおかげで相手の位置は丸わかりだ。あっちか!


 僕は開きっぱなしになっているドアを発見、すぐに内部に侵入する。場所的にはここっぽいけれど。


「サクちゃん!」

「兄ちゃん!」

「ぐ、ぬぅうッ!」

「クソッ!」


 扉を抜けた先にあった可愛らしい室内、おそらくフミの部屋では既にサクタロウが仮面をつけた殺人鬼の銃を掴んでもみ合いになっており、カヤとフミが怯えゲスミが矢を装填している最中だった。


 なおゲスミが撃ったであろう矢はしっかりと殺人鬼の後頭部に刺さっていた。それは人間の最大の急所の延髄がある位置で普通ならば即死する場所である。


 だけどこの殺人鬼は生きている。それはこいつが人間ではない何よりの証拠だったんだ。


「ふむ」


 効果があるかどうかはわからなかったけど一応僕はヘッドスナイプを連発すると敵は怯んで猟銃を落とし、僕を認識してこちらのほうを向いてくれたのですかさずハイキックで頭を蹴り飛ばした。


 ヒーローの仮面が外れ転倒した殺人鬼は小物が飾られたカラーボックスにぶつかり可愛いぬいぐるみや置物が落下してしまう。


「こ、こいつは」


 その場にいた全員が殺人鬼の素顔に唖然としてしまうけど僕は銃口を向けたまま粛々と対処する。相手が誰であろうと殺すべき対象には変わりなかったし。


「ねえ、これってもしかして」

「ああ。バグ人間だね」


 殺人鬼の正体はなんとバグ人間だったのだ。殺人鬼は仮想世界で出会ったバグ人間の様に顔がバグったゲームの画像の様に歪んでおり、一目で普通の存在ではない事が理解出来たよ。


 薄々敵がゾンビか何かしらの化け物だとは思っていたけどまさかバグ人間だったとはね。敵が人間じゃないのなら気持ち的に殺しやすいからそこはいいけどさ。


「殺すさアなキャ、秘密知縷縷nン間、全員……ッ!」


 バグ人間は鬼のような形相で何かを呻いてグラフィックが大きく歪み、そして消滅する。


 死人が出なかったのは幸いだったけど仕留めきれなかったのは残念だな。そもそも倒す手段があるかどうかもわかんないけど。


「えーと、いきなり押しかけてごめん。みんな生きてる?」

「な、なんとかな」


 一目見て無事である事はわかっていたけど僕は念のため確認するとサクタロウがひどく震えた声でそう答えてくれた。さすがの彼も生きた心地がしなかったのだろう、少なからず動揺している様に見えたよ。


「ってカスミちゃん! 血出てるよ!?」

「え? 本当だ……」


 だけど僕らはカヤの指摘でゲスミが負傷している事に気付いた。流れ弾が当たったのか跳弾が命中したのかどうかはわからないけど彼女の右わき腹からは大量の血が滲み出ていおり、命にかかわる程度の怪我である事はすぐに分かったからだ。


「フミさん、止血するものはあります? ほかにも手当てに使えそうなのとかがあれば貸してほしいんですけど」


 タイムリープすれば死んだとしても元に戻るとはいえ放っておくのは忍びないし一応止血してあげたほうがいいだろう。僕は家主の彼女の助けを得るためそう尋ねた。


「……ねえ、これって何なの? 今のは何なの!?」


 ただフミは相当怖かったのだろう、かなり怯えて気が動転していた。この様子じゃちゃんと話を聞くのは無理っぽいな


「フミ、気持ちはわかるけど今は、」


 そんなフミを落ち着かせるためサクタロウがなだめようとしたけど、


「この前からずっとずっとおかしいよッ! いくら私でも気付いてるよッ! 私ずっと我慢してたんだよッ!」

「っ」


 フミはとうとう壊れて発狂してしまった。そりゃこの状況じゃこうなるのも仕方ないけど……よりにもよって今こうなるとはね。


「狂ってる、全部全部狂ってるッ! もうたくさんだよッ! あんたの友達のふりをするのもッ! 私カスミが東京で何をしてたのか全部知ってるんだよッ!?」


 壊れたフミは優しさの仮面を外しずっと思っていた事をついに口に出してしまう。それがひどく友人を傷つける言葉だと知っていながら。


「い、今はカスミちゃんを、」

「知らないよッ! 虐めをして引っ越した奴なんか死んでもッ! 何で私がそんな奴と仲良くしなくちゃいけないのッ! 何でそんな奴を助けなくちゃいけないのッ!」

「っ」

「ちょっ」


 そしてフミは暴言を吐いて部屋を飛び出て逃げ出してしまう。かつて絶望の中にいた彼女がそうしてしまった様に……。


「紗幸はここにいて。僕はフミを追いかける」

「う、うん」


 何にせよ今この状況で殺人鬼に狙われているフミが単独行動するのは自殺行為に他ならない。僕は彼女の身の安全を確保するためすぐにフミの後を追いかけた。

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