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ゾンビのミヤタさん~英雄が敗北した未来を変えるために、勇者の剣と愛と勇気と豊橋名産のちくわを携えやって来た二回目の世界、東北には太陽が昇り、花咲く明日への物語が始まる~【完結】  作者: 高山路麒
第十一章 永遠の村と『あの日』の償い【第二部2】

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11-62 黒板アートに隠された裏テーマ

 ――芳野幸信の視点から――


 カヤとサクタロウの家で一泊し、殺人鬼と遭遇する事無くタイムリープは三周目に突入する。


「ふむふむ」


 そして今はミキコ先生が約束通り拠点として貸してくれた学校の宿直室でスマホに届いたメールを確認していた。フミについて調べてほしいと伝えてすぐにあれこれ情報を見つけてくれるだなんてさすがだよ。


「フミさんの周りでこんなに人が死んでるだなんて……やっぱり何かあるのかな?」

「だろうね。きっと犯人は彼女の中学時代の知り合いに違いない。この悪趣味な黒板アートもそうだけど」


 皆が調達してくれた情報の中で僕が一番気になったのは卒業式の黒板アートの記事だ。そこには三十五人の笑顔が描かれ、中央には自己主張の激しい担任の美術教師がこれでもかと素敵な笑みを浮かべていた。


「この絵は私もニュースかなんかで見た事あるよ。これを描いたユキシモ先生はこの絵で有名になって芸術家になったんだよね」

「正確には元々芸術家だったけど日の目を見る様になったって言ったほうが適切な表現だけどね。彼にとって美術教師は収入を稼ぐための副業だったから」


 芸術家は才能があっても成功するとは限らない世界だ。多くの人間は世間に知られる事なくひっそりと消えていき、この黒板アートが話題にならなければ彼もまたそうしたありがちな運命をたどっていたのだろう。


「これのどこが悪趣味なの? 素敵な絵だし、幸せそうなクラスだったんだろうと思うけど……この中に本当に犯人がいるのかなあ」


 純粋な紗幸はこのニュースを聞いた大衆と同じ様な反応をしてしまう。きっとこの記事を書いた記者も何も知らないまま上辺だけの取材で適当に書いたんだろうな。あるいは気付いたけど気付かないふりをした可能性もあるね。


「そっか、紗幸はこの絵に隠された裏テーマに気付いていないんだね。これは意味が分かると怖い絵って奴だよ」

「え、そういうジャンルの話? ホラー的な?」

「そういうのじゃないけどある意味幽霊よりも恐ろしくて醜いかな。その辺の答え合わせも兼ねてフミに話を聞いてこようか」

「う、うん」


 思わせぶりに驚かすと紗幸の表情はやや強張ってしまう。フミにとっては思い出したくもない過去を掘り起こす事になるかもしれないけど殺人鬼の正体を知るためには必要な事だ。ここは心を鬼にして真実を追求させてもらおう。



 フミの家に行こうにも場所がわからなかったので、僕と紗幸は学校で待機し向こうから来るのを待つ事にした。


「まずこの世界のルールを確認しよう。この異界はタイムリープをしているけどまったく同じ日常を繰り返しているわけじゃない。そして時間の流れも現実世界とは異なっている。だからタイムリープというよりも俗に言うサ○エさん時空って言ったほうがいいかな」

「あの家族に限らず大体の漫画やアニメってそんな感じだよね。日常系の奴に多いけど殺人鬼と一緒っていうのはちょっとなあ」

「日常系ならまだいいけど……バーローとかミステリー系は時代の変化と共にトリックとか法律が変わるから整合性を保つのがめんどくさいだろうね」


 ここにサブカル好きなひかげがいたら楽しんでくれそうなおしゃべりをしながら僕は水出しで淹れたお茶を飲んだ。


「たまにはこうしてのんびりするのも悪くないね。でもこの暴力的に暇なのは何とかならないものかなあ」

「お兄ちゃん凄いね、殺人鬼が襲ってくるかもしれないのに」

「殺されてもこの世界じゃ死なないからね。むしろ暇つぶしになるからさっさと来てほしいよ」

「殺人鬼との遭遇が暇つぶしって」


 紗幸は肝が据わりすぎている僕に呆れてしまい苦笑しながらお茶を飲む。今回のお茶請けは山津見ロールなるお菓子で、それを一口かじった彼女は「あ、美味しい」と顔をほころばせてしまう。


「ねえ紗幸。今君の目の前にいるお兄ちゃんの肩書を言ってごらん」

「表向きは変態で裏は高校生だね」

「高校生は本業だよ。一応元通り魔で日本の犯罪史上に語り継がれる程度の悪党でしょ」

「そういえばそうだったね」


 紗幸は僕がペイルライダーという殺人鬼だったという設定をすっかり忘れていた様だ。あれは僕の黒歴史だから忘れてくれるのならそれはそれで嬉しいっちゃ嬉しいけど。


「付け加えると紗幸はチーム明日花で最強の遠距離アタッカーだ。マウンテンゴリラでも勝てないのにただの殺人鬼如きが僕らに勝てると思う?」

「マウンテンゴリラって……でも確かにそんなに心配しなくてもいいのかな。お兄ちゃんも食べる? 美味しいよこれ」

「あ、うん」


 僕は紗幸に促されて緑色のクリームが塗られたロールケーキをパクンと口に運ぶ。うーん、実にふわふわでクリーミィだ。甘さもしつこくなく上品だからお茶とよく合うね。


 とまあティータイムをまったりと楽しんでいる最中、サードマンモードをほんのり発動していた僕は何者かの気配を察知する。どうやら目当ての人物がようやく来てくれた様だ。


「ふむ、来たみたいだね。そろそろ行くよ」

「あ、うん、ちょっと待って!」


 僕が立ち上がると紗幸は急いでロールケーキを口の中に突っ込んだ。美味しかったから外の世界に出たらお土産で買ってみようかな? たくさん買えば多少は復興の手助けにもなるだろうし。

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