11-57 プラモデル屋で組み立てた絆
お店を助けに来た常連客の人が加わって、仕分け作業は労働とは思えないくらいに楽しいものになっていった。
「いやー、アレは個人的には生きていると解釈シマス! ラストの黄色い花はその暗喩だったんですヨ! 続編が作られていたらきっとまた現れたはずデス!」
「それはないない! ロマンはあるけども普通に無理があるから! あの監督はメインキャラでも容赦なくリタイアさせるし!」
「おお!? こ、これはお宝だぞ! 見ろ、初回生産限定の奴だ!」
「うお、マジで!? これ俺が買ったらダメかな……」
「むむ、では私もオークションに参加していいっすか!」
常連客の人やチェルノちゃんたちは大好きなロボットアニメについて楽しくおしゃべりしながらお仕事をしていた。わたしはどちらかと言えば特撮派だからよくわかんないけどこういうのってなんかいいよね。
お客さんの中には片言の日本語を話す中国人の人もいた。だけどここにいる人は誰も彼やメイリンさんの事を迷惑そうな目で見ていない。外側では今も殺伐としているというのにこの空間だけはとても幸せな気持ちで満ち足りていたんだ。
「楽しそうですね、お嬢様」
「そりゃそうだよ。なんだかすっごくキラキラしてて幸せなの!」
「ふふ、そうですね」
フィリアもその愛しか存在しない幸せすぎる光景に優しく微笑んでしまう。年齢も性別も国もバラバラの人たちは全員このお店に何かしらの想い出があって、応援するために遠いところからやってきて協力して困難に立ち向かっていたんだ。こんなの幸せな気持ちにならないわけがないの!
「本当に幸せ者だよ。古いプラモデルしかないおんぼろのお店だけど……こんなに愛されていただなんて。続けてきた事にも意味はあったんだね」
「えへへ、どんな人生でも意味のない人生なんてないんだよ」
そして店主のおじいちゃんにもようやく笑顔が戻ったからわたしは胸を張ってその言葉を送った。こういうのはもうちょっと年を重ねてから言うべき言葉かもしれないけどね。
「あはは、まさかこんな小さな女の子にそんな当たり前の事を教わるとはね。長生きはしてみるもんだ」
「うん、生きてるだけで丸儲けっていうよね!」
「違いない。僕ももう少しだけ頑張ってみようかな」
そしておじいちゃんは最後にポツリとそう言った。皆から幸せパワーを分けてもらったところでラストスパートいっちゃうの!
「でけたー!」
「わーいわーい」
「シャッシャッシャー!」
お仕事は皆で協力した事で予定よりもすぐに終わらせる事が出来たの。わたしは嬉しくなって両手を上げて皆と一緒に大はしゃぎしたの!
「それじゃあ後の事はお願いするっす!」
「ああ、フォロワー二十万人の実力を発揮させてもらうよ!」
メイリンさんは常連客の人に通販や宣伝業務の引継ぎをする。お金を扱うから信頼関係がないとお願い出来ないお仕事だけど、わざわざ遠いところからお店を助けるためにやってきた人たちなら問題ないだろう。
「本当にありがとう。僕一人だけだったらきっと心が折れていたよ」
「えへへ、どういたしましてなの」
笑顔が戻ったおじいちゃんはわたしたちに深々と頭を下げる。まだ本当の意味でお仕事は終わりじゃないけどわたしたちに出来る事は尽くした。だからきっと時間が経てばすべていい方向に転がるはずだ。
「ミヤタちゃんだったかな。お礼と言っちゃあなんだが君にこれを受け取って欲しい」
「ふに? これって……いいの?」
そしておじいちゃんはお孫さんに渡すはずだったプラモデルをわたしにくれた。でもそんな大事なものを受け取れないからわたしはちょっと困ってしまったの。
けれどおじいちゃんはわたしにこのプラモデルを渡してくれた理由を教えてくれた。
「ああ。これはこのお店で一番大事なものだから処分するのはもちろん売る事も出来ない。だけどお店のために一生懸命頑張ってくれた君になら、もう一度立ち直るための勇気をくれた君になら託してもいいと思ってね」
「……そっか。ありがとうなの!」
もちろん少し迷ったけどわたしはおじいちゃんの想いに応えるためそのプラモデルを受け取る事にした。家に帰ったらお部屋に飾ろうかな?
「むむ……むむー、いいなー」
ただチェルノちゃんはあからさまに羨ましがってジト目をしてしまう。チェルノちゃんはロボットとか好きだからなあ。別にそこまで欲しいのならあげてもいいしチェルノちゃんに渡そうかな?
「それもそうか。なら君にはこっちをあげようか」
「おお! 見返りを求めたわけではないが好意は受け取らなければな!」
「チェル、がめついよ」
でもおじいちゃんはニコニコと笑いながらチェルノちゃんにもカッコいいプラモデルをプレゼントした。その革命家らしからぬ無邪気な笑顔に皆は思わず笑ってしまい、和やかな空気がその場に流れて無事ミッションを最高の形でクリアする事が出来たんだ。




