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ゾンビのミヤタさん~英雄が敗北した未来を変えるために、勇者の剣と愛と勇気と豊橋名産のちくわを携えやって来た二回目の世界、東北には太陽が昇り、花咲く明日への物語が始まる~【完結】  作者: 高山路麒
第十一章 永遠の村と『あの日』の償い【第二部2】

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11-51 カヤとサクタロウの本当の関係

 ――芳野紗幸の視点から――


 知らない人の家で過ごす一夜はものすごく緊張してしまう。とりあえずする事もなかったので、私は睡魔に襲われるまで天井の顔みたいなシミをぼんやりと眺めてシミュラクラ現象を体験していた。


「そわそわ」


 部屋には古びたお布団があってクーラーも効いている。『あの日』を経験した私からすればなんて事のない環境だけど、やっぱりそれでも知らない人の部屋で、しかも殺人鬼が現れるかもしれない状況で眠れるほど私は鋼のメンタルを持っていなかった。


 それに弓削さんの事もある。弓削さんの存在は殺人鬼と比べればどうって事はないんだろうけど私にとっては……。


(恵まれている、か……)


 彼女と戦った時弓削さんは私の事を恵まれていると言っていたけど私はその意味が分からなかった。自分で言うのもなんだけど私は家族を二人失って家も半壊して引っ越してきて、結構不幸だって自負はあるんだけどなあ……。


 もしかしたら弓削さんは私よりも不幸だと思っているんだろうか。昔虐められていたと聞いたけど、そうだとしても不幸と言うにはまだ足りない。だとするならそれ以上の辛くて悲しい経験をしたのだろうか。


 もしそうだとしたら……私はもう少し理解してあげるべきだったのかな。ううん、震災で心が荒んでいたとはいえ昔の私は結構わがままだったしもしかしたら何か傷つけるような事をしたかもしれない。だけどそっちに関しては全然思い当たる節がなかったんだ。


「あーもう、駄目だ寝れない!」


 私はたまらずがばっと布団から起きる。どうせ一日が終わったら疲労も回復するし寝なくてもいいか。


「何か飲もうっと」


 完徹を覚悟した私は部屋から出て音を出さない様静かに歩いてキッチンへと向かった。泊まっていいって言われたけどやっぱり気を使っちゃうよね。キッチンはどこだっけ……暗い廊下ってそれだけで怖いなあ。


「まったくもう、兄ちゃんったら無茶するんだから」

「?」


 廊下を歩いているとカヤちゃんの声が聞こえた。どうやら居間にお兄さんと一緒にいるらしい。こんな時間に起きているなんてやっぱり二人も眠れないのかな。殺人鬼とタイムリープっていう異常な事が二つも起きれば普通はそうなるだろうけど。


「別にいいだろ。明日になれば怪我は治るしそんなに心配しなくても」

「そういう問題じゃなくてさー。わかんないかな」


 私はそっと居間を覗いてみるとサクタロウさんは定位置の縁側に座って上の服を脱ぎ、カヤちゃんが包帯を取り換えている姿が見えた。一見すると怪しい事をしている様に見えなくもないけどどうやら手当てをしているみたいだね。


「やっぱり兄ちゃんが怪我をするのを見るのは妹として嫌なわけさ。いっつも無理しちゃうよね、兄ちゃんって」


 カヤちゃんは全然関係ない二の腕を優しくさするけどこれは手当てだ。そしてスキンシップだ、うん、そうに決まってる。


「そりゃさ、殺人鬼はどうにかしてほしいけど私も結構この世界を満喫してるんだよ。兄ちゃんが高校を卒業して大学に行ったらもう会えなくなっちゃうし……」

「仕方ないだろ。いくら愛着があってもこの村に未来はない」

「嘘。本当の理由はそうじゃないよね?」


 そしてカヤちゃんは甘えた様な声を出し――そのしなやかな指をサクタロウさんの太ももの間に、ヴォ!?


「知ってるよ、兄ちゃんが村を離れたがっている……ううん、私から距離を置こうとしている本当の理由を」

「……おいバカやめろ。ヨシノたちに見られたらどうする」


 見てます見てます! ガッツリモッコリシッポリむふふとね!? ななな、なんばしよったいこの妹型プレデターは!? なんかこれ見よがしに背中に胸を押し当てていませんかね!?


「このまま時が止まって大人にならなかったらいいのに。そうすれば兄ちゃんと一緒にいられるのにね」

「俺たちは兄妹だ。それくらいわかってるだろ」

「いいじゃん別に。この狂った世界に護るような倫理もないんだし。そんな事気にせず私を女にしてもいいんだよ? ねえ、一緒に壊れてみない?」


 オーマイガーファンクルッ! これ絶対に他人が見たらイケナイアレでござあますよね!? 禁断のラァブ的なアレでござあますよね!? おっほっほ!


「ルールを護る必要は無くても妹を護る義務はある。だからその一線だけは越えちゃいけないんだ」

「ちぇー。ずるいよ」

(あばばばば!)


 私は喉が渇いた事を忘れてその場から急いで逃げ出した。これ以上は耐えられません!

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