レイナは、目覚める
9月の台風で実家が大きな被害を受けて、その片付け等で遅くなりました。
すごい経験をしてしまいましたが、こうして続きが書けてよかったです。
お時間いただいて申し訳なかったです。
朝のキッチンは活気に溢れていた。
夜の酒場の様な騒がしさでも、市場の様な物々しさでもなく。
さざなみの様な賑やかさだ。
大皿に用意された焼き立てのパンとサラダ、カリカリのベーコンと目玉焼き、そしてスープ。これが男爵家定番の朝食で、子供たちはお行儀よく・・・いや、所々でおふざけが入るところを小声で「・・・こらっ」と注意しながら回るが、彼らは怒られながらも嬉しそうに食事をしている。
(少し前には、考えることもできなかったな・・・)
ジュード、そしてフランとミュラーに保護されなければ、こんな瞬間は来なかっただろう。
少し前までは、限られた食糧をお互いに気遣いあいながら食べる姿が本当に痛々しかった。
今はそのような素振りもなく、食べたい量をきちんと食べ、元気に仕事に向かう姿を見るだけで、心の安らぎを感じる毎日だった。
フィオナは、彼らの健康観察を命じてくれたジュードに心の中でお礼を述べた。
「いってくるね〜。フィオナ!」
行ってきます、行ってきまーす。と三者三様の言葉を告げていく。
「気をつけて行ってきな。ドナ!リン!サシャ!」
食事を終えた子供たちがそれぞれに割り当てられた仕事場に向かっていく。
さっきの3人は、正確な年齢は分からないが、大体7、8歳くらい女の子だ。
保護をした時期はバラバラだったが、年の頃合いが近く、よく3人で行動していることが多く、3人がまとめて同じ仕事をさせてもらってるのもフランの采配だろう。
「あらら、あの3人はもう行っちゃったか、ったく待ってろって言ったのに・・・。」
奥の厨房から顔を見せたマッテオはぶつくさ文句を言いながら食堂に出てくる。
彼は、幼い頃からの古馴染で、今は、この男爵家の料理長を務めている。
料理長・・・。といっても、メイド長が全てを牛耳っている中で、彼女の指導を一番受けている料理人というのが正しいだろう。
「レイナ様の朝食?」
マッテオが運んできたのは、銀のトレイに深い金堀がされた皿が乗っており、その中には白くトロリとしたオカユがゆらゆらと湯気を上げていた。
このオカユはメイド長から指示で作られたものだ。なんでも体が弱っている時には、これが一番良いらしい。寒さが厳しくなった頃には、体調を崩す子も多かったが、このオカユを食べると、確かに皆元気になる不思議な料理だ。
「ああ・・・そうだ。フィオナ、朝の日課のところで悪いけど、これをレイナ様の部屋に届けてくれよ」
レイナ様、男爵家の婚約者候補としてやってきて、そのまま倒れた令嬢だ。
あれは秋の終わり、冬の始まりの頃だから、もう3ヶ月近く前のことになる。
一時期は、命を落とす危険もあったらしい、ということだが、今は山を越え、ずっと眠りに付いている。
フラン曰く、「これまでのダメージを急ピッチで癒している状態」ということだが、学のない私にはどんな状態なのか皆目検討も付かない。
今、レイナ様は長く眠っている状態だが、当然、何も食べず、何も出さないというわけにはいかないので、彼女に元々着いてきていたペリヤ夫人こと、マーヤが付きっきりでそのお世話をしていて、マーヤの手伝いということで、あの3人が主に行く事が多かった。
「やった。ツいてる」
あの3人以外にも、手伝いに行くメイドは多いが、レイナ様のお世話は、人気のある仕事だった。
眠るレイナ様のお髪を解かしたり、お風呂に入れるお手伝いや、お食事を口元に運ぶとパクリと食いつく姿が何でも可愛らしい、という理由と彼女の髪や体に使う化粧品がかなり良いものだからか、なぜか彼女の世話をすると、髪が綺麗になったり、肌の質感が変わるともっぱらの評判だった。
そういうと、マッテオはニヤニヤ笑いながら
「ウィザーのために綺麗でいないといけないからなぁ・・・アイッタ!!」
マッテオの頭にゲンコツを落とすと、トレイの中がこぼれないようにサッと奪い取った。
引き続きよろしくです。




