マーヤは泣き、フランは迷う
久方ぶりの更新です。
わかりにくさを気にしていたのですが、尊敬する作家様が「設定の解説は意味が無い」という話をされているのを
聞いて、改めて諦めることにしました。
わかりにくいお話ですが、引き続き、お付き合いください。
ジュード・ミュゼレム・クラレントは、困惑していた。
ある日、突然、フランシスカの命令で夜駆けをした上に、戦場に飛び込まされたあの時よりも状況は混迷を極めていた。
「ひめさまぁあああ」
執務室の応接用のソファに腰掛け、びぇえええ、と擬音が付くように泣くのは、レイナとともにフルディング辺境伯領よりやってきたマーヤ・ペリエだった。
マーヤは輿入れすることになっていたレイナに付き添い、そのまま彼女に遣えることになった侍従だ。ただ彼女の立ち振る舞いは、幼いころからの教育や海千山千の貴族社会を生き抜いてきた、そうフランと同じ隙のない洗練さを感じさせるご婦人だった。
そんな貞淑なご婦人が人目を憚らずに泣き腫らしている姿というのは、なんとも表現が難しいが、逆を返せば、そこまでの状況であるのだとも言える。
レイナは、到着のすぐ後、あいさつもそこそこに一息ついたとこで、椅子に座り込むように気を失った。長旅による疲れや、張っていた気も緩んだことでドッと疲れが出たのだろう。
マーヤは手慣れた動作で、何かの予兆を感じ取っていたかのようにレイナの身体を支えると年若いクラレントの侍従たちにわかりやすく丁寧な指示を出し、レイナを「よいしょお!」と豪快に担ぎ上げると、寝室に運び込み、そのまま療養をさせることになった。
それからすでに半月が経過した。
何度も見舞っているが、レイナは熱にうなされるわけでも、辛い表情をするわけでもなく、ただ静かに眠っており、まるで息を引き取る寸前のような静かさだった。
最初はマーヤから、レイナが寝込むと、1週間くらいはこういうことがあるらしい、という話も聞いた。2週目にはこれまでになく疲れてたのだろうと、しかし、3週目にはさすがのマーヤも「辺境伯領から医者を呼びたい」という話が出たが、クラレントには短くも深い冬が訪れ、ここまで辿り着くのは困難なことを話すと、マーヤは関を切ったように泣き出した、というところだった。
「ペリエ夫人、今は、とにかくお休みください。レイナ様は当家の侍従が見ていますから・・・」
マーヤは、「お気遣いありがとうございます・・・クラレント卿」というと、側にいたドナに付き添われて寝室に向かっていった。
すでに時間は夜半過ぎ、暗い窓の向こうではシンシンと雪が降っていた。
◇◇◇◇
この部屋の中心は、一人で使うのが勿体無いほどの大きさのベットだった。
そのベットに横たわるのは、美しい赤毛をした骸骨のような女の子だった。
すでに時間は夜遅く、日に光は随分前に無くなり、窓の外では、雪が降っていた。
部屋の明かりは落としてあり、私はただ彼女の容体に変化がないかを確認するためにここにいる。
レイナ・フルンディング。
彼女は、転生者である私の知識に無い、この世界の住人だ。
つまりは、モブというやつだ。
この世界の活況に関与なく、普通に生き、普通に死んでいくの定めの人物。
私は、この世界の進むべき道を変えることは好まない。
だから彼女の命を救うべきか、どうかを悩んでいた。
メイド服の袖に忍ばせておいて、小さな石に力を込め、それがパキリと壊れると、内包された魔力が私の体を包む。
それを視界に集中させる。
眠った彼女の体から赤、緑、青、黄のモヤというべきだろうか。
その4つのエネルギーが複雑に絡み合っていることがわかった。
「持って一ヶ月・・・というところかしら」
次回の更新も頑張ります。なるべく早くで。




