墓石
嗅いだことのない濃い血の臭い。さっきまで生きていたのだろうと思える足の踏み場もないほどの遺体。焼死体、バラバラになった遺体、遺体だったと思われる爆発したような肉片、真っ赤に染まった景色。敷地内に入るまで、目隠しをつけていた青葉とバンバは、そんな光景を目にした。
「...何だ...これ...。」
青葉が呆然と立ち尽くしていると、学校から銃声と跳弾の音が聞こえる。青葉はそれを聞いて、目の前の光景を一旦飲み込み、学校に走り出した。
「...ん?」
同時にバンバは教師陣がいるはずのモニター室に訪れていた。全員が殺されている。
「銀狼...? 銀狼!!」
目の前まで行くと、既にこと切れた銀狼の遺体を見つける。しかし、ダリウスの遺体が見つからないことに気付く。
「いない...。この切り口...。クリードか...。」
バンバはそう考えてモニター室から出る。その頃には青葉はフェブルに止めを刺そうとしたクリードを吹っ飛ばして、こと切れた巴の遺体ともう助からないであろうフェブルを見て、愕然とする。
「フェブル。」
青葉は駆け寄り、フェブルを抱えながら、ここに来るまでに見つけた、グラスハッド、レゴン、クローヴン、神流、カーツェ、冰燎、凍燐の遺体を思い出す。
「青葉...。俺はもう...。」
「やめろ...。」
「助からねぇ...。ニルファを...。」
「やめろ...!」
「頼む...! お前にしか...頼めないんだ...!!」
まともに喋れないはずのフェブルの言葉が青葉にははっきりと聞こえた。
―――双葉を頼む。
死に際に父が言った言葉が重なる。同時に、双葉の死んだときの光景がちらつく。青葉は首を振って断ろうとする。
「俺には...無理だ...! 俺には...守り切れない...!!」
「! 青葉...!! 俺は...俺は...死んでも構わない...!! 元々...親を殺した時から......!! 碌な...死に方をしないのは...! 覚悟してた...! でも...な....ニルファは...違う..!! あいつには...あいつだけは...幸せになってほしいんだ...!!」
「幸せになってほしいんだったら...生きろ...フェブル!! 赤の他人の俺が...ニルファさんを救っても...お前がそこにいなきゃ意味ないんだよ...!!」
青葉がそう叫ぶと、フェブルは悔しそうな顔で答える。
「わかってるよ...。でも...無理なものは無理なんだよ...! 青葉...じゃあ...頼み方を変える...。ニルファの事を...好きにしてくれ...。」
「は...?」
「ニルファの事を生かすも、殺すも...青葉...お前の自由だ...。放っておいてくれてもいい...。これなら...縛られないよな...? 青葉...俺は......。」
「......フェブル...? フェブル。フェブル! フェブル!! フェブル!!!!」
フェブルは言い切る前にこと切れた。その光景を見ていた司は下唇を噛んで戻ってきたクリードを睨みつける。それに反応して青葉はクリードを見据える。
「(流石に青葉の攻撃を直撃したのが痛かった。司にすら気づかれてしまうとは...。集中しなければ...。)」
「...。」
青葉は無言で司の前に守るように立った。
「何で殺した? 皆を...。」
「依頼されたからだ。依頼人の名は言えないが。暗殺教育学校の関係者全ての鏖殺。無駄な復讐を避けるために〝殺した対象の血の繋がりのある者も全て抹殺〟というものだ。」
「...は...?」
「暗殺教育学校の生徒の9割9分家族のいない孤独の人間。しかし、教師陣の富士浪花には娘の富士浪白雹と富士浪清雅と夫の富士浪誠二がいる。生徒にはフェブル・クリスの妹にニルファ・クリスがいる。これらも抹殺対象としろと依頼人から教師陣を抹殺した後に追加があった。お前とそこの明純司、そしてこの場にはまだ現れていないバンバ・キルラエルを殺した後、それらを殺す。それが俺の受けた依頼だ。だから殺した。」
「ニルファ・クリスも、富士浪花先生の家族も...抹殺対象か...。」
―――憎悪や殺意を抱いたとき...お前は今のお前でいられるのか?
―――理由があったら...俺は耐えられないとも思う。
青葉に修学旅行の時のバンバとの会話が過る。友人たちを殺され、恩師を殺された。その事実に青葉は何とか耐えようとしていた。憎悪や殺意だけで殺すなんてことは絶対しない。これは青葉の信念だ。だが、そこに理由が加わってしまった。
―――無意味に残したところで、そこから憎しみの連鎖が始まる。だったら始まる前に鏖殺して後処理を楽に終わらせる。
クリードに言われた言葉が過る。
「そうだ。フェブル・クリスの妹と富士浪花の家族も抹殺対象だ。」
その瞬間に青葉は覚悟を決める。
―――実行する原動力は俺がこいつに抱いた憎悪や殺意...。それを実行するに至った理由はこいつを放っておけば、ニルファさんも花先生の家族も殺されるという事実。憎悪や殺意を正当化するほどの理由。俺は甘かったこいつは人間なんだと、同じように生きてるものなんだろうと。だが、そんな甘い考えがこんな惨状を生んだのかもしれない。コーネリアス・クリードは...俺の抹殺対象だ。
「そうか。じゃあ...死ねよ。」
その瞬間、クリードの体が宙に浮いた。いや、また校外に吹っ飛ばされたのだ。
「せ...先輩...。」
「司。逃げろ。お前の気配とバンバの気配はわかる。わかりやすくあいつが消してくれてるおかげでな。お前を護れるかどうかの自信はない。だから近くにいるより逃げた方がいい。できれば敷地外まで出てほしい。この敷地を全て使って俺はあいつを殺す。行け。」
「は、はい...!」
青葉は目を見開いて、クリードの気配を探るが、一切捉えられない。だから敢えて自傷して豊珠の位置を教える。それに乗ってクリードがやってきたところを鎖鎌で首を絞め殺す為に。しかし、それに簡単に乗らずクリードは様子見をしている。それを察したのか、青葉は高速で鎖鎌を回しだす。その速さで衝撃波が巻き起こりクリードは衝撃波によって吹っ飛ばされる。
「!」
それを感じ取った青葉はその方向に分銅を投げてクリードの胸に当てて肋骨にひびを入れる。そうして地面に落ちたクリードは受け身を取ってひびの入った肋骨を労わりながら立ち上がると、校内から落ちてきた青葉が目の前に立っている。
「(あの速度の分銅を防御しやがった。直撃してれば肋骨を粉砕できてたはずだ。)」
「(近づけない。変声して騙すことも今の青葉には効きそうにない。それにしても...) なぜ怒っている?」
「は? あぁそうか。それもわからないもんな。あ~あ。ほんと馬鹿見てえだ。お前を同じ人間だと思った俺が。お前は人間じゃない。ただの人形なんだな。」
「人間であるか、人形であるか。それは大事なことか? 俺たちは暗殺者だ。命じられたまま密かに対象の命を奪う。それだけだ。心など不要だ。」
「まぁお前にとっては、暗殺者って言うのは都合のいい道具なんだろうな。何の感情も無しに淡々と機械的に命を奪うだけの道具。だが、俺にとっては違うんだよ。心ある生き物なんだよ。心があるから、命を奪うと言うことの重みを理解できて背負えるんだよ。心があるから、死なせるべきか生かせるべきかを選べるんだよ。お前にはそれがない。どこまでも空っぽだよ。頼まれればなんだって実行する。意思ってものがねえ。まぁそりゃそうだよな。ただの道具だもんな?」
「道具であることはダメなことなのか? 自分の意思などあるから、争いが起きるんじゃないか?」
「確かにな。だが、自分の意思があれば、その争いを止めることだってできる。負の面ばっか見てんなよ殺戮人形。いやすまん。意志のねえ道具なんだから負の面を見るもくそもねえか。」
クリードを終始見下した態度で接する青葉は冷めた目で言う。
「一体何の意図があってこんな口論をする気になったのか知らねえが...。道具なら黙って使い古されて壊れてろ。」
「(怒らせたのは失敗だったか。逆に動きが洗練されている。)」
青葉は一瞬で距離を詰めて喉元に斬りかかるが、後ろに宙返りして避けられる。が、着地する前に蹴り落として、地面に叩きつけた瞬間に腹を蹴って浮かせた後、頭を潰そうとするが、鎖の繋がったナイフで足をからめとられ、投げ飛ばされ、銃で撃たれるが全ての弾丸を破壊して足に繋がった鎖でクリードを引き寄せるが、その速度を利用してクリードは自傷して血を青葉の目にかける。
「っ!! (なんだこれ...!? 血に...どんな毒かわからねえがなんか混じってやがる。瞼が焼けるように熱い酸性の毒か。だが、じわじわと侵食してくる感じもある。なんだこの毒?)」
そう思考しながら目を閉じた状態でクリードの位置を感じ取り、気配を消す前に鎖で捕まえ、目を潰そうとするが、ギリギリで避けられ足払いで体勢を崩されるが、かかった血を全て拭き取り再生させると、豊珠目掛けてナイフを突き立てようとする、クリードが見えた。
「?」
元々豊珠があった場所にナイフを突き立てたが、それより早く青葉は豊珠の位置を体内で移動させて避け、再生で短剣を抜けなくすると、クリードのこめかみを刺そうとする。クリードは短剣を離してギリギリで避ける。
「...。」
青葉は刺さった短剣を抜き取り、刀身を握りつぶす。
「(豊珠を体内で移動させた? そんな事は聞いた事がないが、あの時自傷して豊珠の位置を態々教えた時に再生と同時に強引に移動させたと考えればありえなくもない。)」
「(豊珠を狙わせて動きを止めるまでは良かったが、止めを刺せなかった。ミスったな。)」
青葉とクリードは互いを見据えながら構えを取る。
「「(だが今度は殺す。)」」
青葉とクリードが殺し合いを再開しようとした瞬間、上からバンバが2人の間に割って入る。
「止めろ。もう終わりだ。戦いを続行する必要はない。クリードは自分に与えられた任務を迅速且つ静かに遂行した。俺と青葉は間に合わなかった。それだけだ。」
「バンバ...!!」
「青葉、言った筈だ。クリードは単なる機械だ。情がなくただ遂行するだけのな。争っても彼らは帰ってこない。抑えろ。」
「どけよバンバ。そいつはこのままだとフェブルの妹も花先生の家族も殺す。だからそうなる前にここで殺すんだよ。」
「暗殺教育学校の関係者全ての殺し、そいつらの肉親を殺して無駄な復讐の連鎖を止める為にか?」
「まぁ大体な。前半のは元から、後半のそいつが言ったんだよ追加でってな。」
「それを信じてるのか?」
「あ?」
「依頼人を隠しておいて依頼内容を全て暴露する必要性はない。青葉の性格を知っていれば、お前に戦わせるだけの怒りを増幅させて動きが単調なったところを殺す作戦だったと考えた方がまだ合点がいく。」
「何?」
「復讐の連鎖を未然に防ぐとは言え、暗殺教育学校の直接的関係者じゃないニルファや花先生の家族を手にかけるのはリスクが高いだろう。そんなことを態々する必要はない。それに、ニルファ・クリスは動けない状態だ。すぐに殺しに行かずともいつでも殺せるはずだ。花先生の家族は何よりシャインティアウーブにいる。あの国の目を掻い潜って彼女の家族を殺すのはまぁ難しいだろう。現実的じゃない。だから青葉。」
青葉の肩にバンバがクリードを見据えながら手を置く。
「お前に殺しをする理由はない。」
「...。」
「さてクリード。お前はどうする? 俺としてはこのままお前を逃がすことを考えている。お前が戦うというのなら、青葉と俺がお前を本気で殺しにかかる。流石に骨が折れるだろう?」
その時、クリードの耳にダリウスからの連絡が入った。それを聞いたクリードは背を向けて立ち去った。
「バンバ...。お前は...憎くないのか? あいつが...。」
「憎くないことはない。だが、俺はあいつをここで殺すべきじゃないと考えた。同時にお前に殺させるべきじゃないと考えた。理由は、勘だ。」
「司...見つけたか?」
「いや? 唯一止めるまで遺体を見ていない。死んでたのか?」
「いや、俺がクリードと戦う前は生きてた。どこに逃げたかわからねえが...敷地外だと思う。」
「それじゃあ急ぐか。」
バンバが歩き出すと、青葉は悔しそうな顔で立ち尽くしている。
「花先生の家族はシャインティアウーブにいるから殺しに行くのはリスクが高いだろうが、ニルファ・クリスはそうはいかない。しばらく俺とお前で護衛する。手を貸してくれ。」
「...バンバ...。護衛は...。」
「できるさ。1人で護るんじゃないんだからな。」
バンバについて行くように青葉は歩き出し、何とか生き残っていた司を見つける。その後、コーネリアス・クリード、ダリウス・フェイクラットはユーフォリアから姿を消し、後に大蛇と幻夢という通り魔の様な噂が全国に広がっていった。暗殺教育学校は閉鎖となり、そこにいた生徒には弔ってくれる人たちはいない。最初は青葉だけが一つ一つ墓石を立てて名前を彫っていた。それにバンバと司も協力して、3人で5000もの命を弔った。青葉が気分も落ち着いて元の状態を取り戻してきた時に青葉は1人でニルファに兄フェブルの死を伝えに行った。
「...お兄ちゃんが...最近...お友達が来てくれるだけで...来てくれないな...って...思ってたんです...。そっか...もう...会えないんですね。」
「すいませんでした。」
青葉は深々と頭を下げる。ニルファは目を見開いて驚いている。
「フェブルは...貴女に生きていて欲しいと、幸せになってほしいと思ってました。貴女を延命させて苦しませてることもわかってました。それでも、彼は貴女に生きていて欲しかったらしいです。すいません。確定的な言えなくて...。最近...お友達のバンバ・キルラエルって言うんですけど、そいつが来てくれるのは...フェブルを殺した奴が貴女を殺しに来るかもしれないからです。だから、その護衛として彼とこれからは俺がつきます。」
「顔を上げてください青葉さん。私...兄に生きててほしかったんです。私の事なんて気にせず...ただ生きててほしかった幸せになってほしかったんです。まさか兄妹で同じこと考えてるなんて驚きました。でも...兄は亡くなって...兄が生きててほしい、幸せになってほしいって思われてたんだったら...。頑張って生きないとですね。」
青葉が顔を上げると涙を堪えた笑顔を向ける。
「悲しいし...ショックですけれど...ただじゃ死ねなくなりました...! 兄の分まで...幸せになって見せます...!!!」
察した青葉が少し席を外すと、病室から泣きじゃくる声が聞こえた。
―――好きにしろ。
青葉は関係者に頼み込み、フェブルの払っていた金を自分が払うようにした。それを知ったバンバも影ながらサポートするように半分の払うような契約にした。青葉が仕事に行くときはバンバが護り、バンバが仕事に行くときは青葉が護った。司は2人に鍛えられながら、仕事を受けたり一緒に護衛をするようになった。
「ありがとうございます。奇跡的に病状が回復してるって先生から聞きました。なんだか...皮肉ですね...。」
「え?」
「お兄ちゃんが亡くなってからこんなに病状が回復するなんて...。」
その言葉を聞いて青葉は何も言えなかった。同じような気持ちになったことがあるからだ。妹を失った時、その後に血鎖狩人の力が覚醒した。事が起こった後に力を手に入れた青葉にとって、ニルファ・クリスの気持ちに共感した。そうして、ニルファ・クリスの容体は回復していき、奇跡的な生還を果たすまでに至った。退院の日、青葉、バンバ、司はニルファ・クリスに呼ばれ同じ日に病室に揃った。
「気持ちの問題って大きいんですね。これから自由に生きられると思うと...楽しみです。...青葉さん。バンバさん。司さん。」
「「「?」」」
「退院したら。もう護衛は必要ないです。」
「え...。」
「3人を私で縛りたくないです。退院したら...自由になってください。」
ニルファの満面の笑みを見て、反論しようとしていた青葉は何も言えなくなる。そうして、ニルファ・クリスは退院して、普通に働くようになった。家を借り、怒られながらも普通に働いて笑顔を振りまいて楽しそうに生きている。
「本人はあぁ言っていたが...たまに様子を見に来ておこう。」
「そうだね。」
「そう...だな...。」
そうしてしばらくは3人で仕事をこなした。そんな中、司がユーフォリアを出るという話になった。世界を見てみたいという理由で。
「そうか。だが、クリードはお前を狙ってる可能性もゼロじゃない。気を付けてどうにかなるような奴じゃないが...気をつけろ。」
「うん!」
「死ぬなよ司。」
「もちろん! 2人はどうすんの? まだユーフォリアに残る?」
「まぁ俺はそのつもりだ。」
「...俺は今のところはわからん。もしかしたら出るかもしれん。」
司の質問に青葉はすぐに答え、バンバはしばらく考えた後に答えた。そうして司は馬車に乗ってユーフォリアから旅立つ。去り際に少し寂しそうにしながら手を振って別れを告げる。
「またね!!」
「またな。」
「ああ! また会おう!!」
司の乗った馬車が見えなくなった後、バンバが提案する。
「そろそろ単独で依頼を受けようか。俺はもう受ける任務は決まっている。」
「奇遇だな。俺もそのつもりでいた。俺も決まってる。」
「俺は特別任務の際に逃がしたカルヴァ―ド・レオニクスに関する依頼だ。」
「俺は...軍服を着た男が暴れているから捕まえてくれって依頼だ。殺しも可のな。」
青葉の過去を聞いていたバンバは少し考えた後、訊くことにする。
「そうか。軍服の男か...過去の清算をしに行くのか?」
「わからねえ。でも生き方はもう固まった。ここで一応別れか?」
「そうなるな。じゃあ、お互いの武運を祈っておくか。」
「そうだな。」
青葉とバンバは別々の方向に歩き出した。
その頃、大蛇と幻夢として噂になっているダリウスとクリードはとある男と密談をしていた。
「今回の依頼をまとめる。テゼルの盗賊団の首領である橘美里と懐刀の橘恵勇と他団員全ての暗殺。それらと手を組んでいる何でも屋の人間の足止めだな?」
「ああ。その通り。だがもちろん美里さんの依頼をあんたらは先に受けてる。それはしっかりと分かっている。俺が行動する中での細かな合図で今回の依頼を執行してほしい。それまでは美里さんからの依頼である橘香織の護衛をしてもらって構わない。ラファス・ドゥイレル個人の依頼として受けてもらいたい。特に幻夢の方に...。」
「行けるか? 幻夢?」
「ああ。」
「ならばその依頼。受けようじゃないか。ただし、念を押すようだが...。」
「大丈夫大丈夫...。流石に幻夢に喧嘩売るようなことはしない。今の仲間を裏切ってもね。」
「よし。では報酬は依頼を完遂してから払ってもらう。高くつくことは覚悟の上だな?」
「もちろん。期待してるよ? 幻夢。」
そうして、ダリウスとクリードは2つの依頼を請け負った。1つは橘美里から請け負った橘香織なる女性の護衛。もう1つは時が来た場合のテゼルの盗賊団の壊滅と何でも屋の足止め。どちらの依頼もメインはコードネーム幻夢であるクリードが遂行する。
「大蛇。」
「ん?」
「いいのか? あの依頼を受けて...学校での暗殺の時も聞いたが...。」
「かつての仲間を討つ事に抵抗がないのか。ない。そんなものに縛られていては...大義は成しえない。どれだけ犠牲を出そうとも来るべき未来を私は守って見せるのだ。」
ダリウスはクリードの質問を先読みしたかのように強い眼差しを向けて答えた。
「その内容はやはり教えてくれないのか。」
「気になるか?」
「いやあまり気にはならない。俺は大蛇の道具だ。」
「そうだ。お前は来るべき未来を脅かす敵と戦う為の私の武器の一つだ。何でも屋に堕ちた彼女らと同じ。」
そこまで言ってダリウスは何も言わなかった。その後、クリードはダリウスと別れ、橘美里から聞いていた場所の扉を開ける。すると一般的に見て美しいであろう女性がそこにいた。
「...だ...誰...?」
「幻夢。君を守るものだ。」
これがコーネリアス・クリードと橘香織の出会いである。
その頃、バンバの方は女性の甘く甲高い嬌声が響き渡る地下施設にいた。全員疲れ切った声だ。この依頼内容は1つ女性たちを助けてほしい。男は皆殺しにしてくれて構わない。この施設に妻を奪われた夫から依頼だった。
「...誰だ...!?」
「!!」
地下施設に血飛沫が舞う。ここからバンバ・キルラエルは女性が人間として扱われていない施設を転々と巡り始める。
その頃、消し飛んだ町の中で軍服の男に片手で首を絞められている少女を助け出す。
「誰だ?」
「お前の記憶の片隅にも居ない雑魚だよ。」
青葉は男を見下して吐き捨てるように答えた。
次話「打ち砕く繋がりの鎖」




