打ち砕く繋がりの鎖
神託の力とは、神に授けられる力。いつこの世界にこのような力が出始めたかは定かではないが、かつてこの地にあった魔法の大国にいた1人の男の強さを見た者たちが口々に呟いたという。
―――神の力だ。
と。大国は男の力を知りたがった。男は喜んで契約を結んだ。条件に
―――俺を戦場に駆り出せ。
と満面の笑みで国の王たちに叫んだ。流石に拒もうとしたが、研究を優先させた1人の王がそれを許可した。男はその力で猛威を振るった。男の体内には魔力が流れている魔導士の適性があった。だが、それ以上に魔力の消費もなく、魔素すら使っていない、そのでたらめな力が研究者たちの知識欲を刺激した。
―――はっはっはっはっ!!!!
男の笑い声はその国と敵対していた各国が恐怖した。男の名はすぐに世界中に轟いた。帝国最強の男、ヴェルウォルク・バーグマン。彼の力は一時的に神託の力と呼ばれていた。しかし、後にこの力には正式に名がつくこととなる。人には五感というものがある。目で見る視覚、耳で聞く聴覚、鼻で嗅ぐ嗅覚、舌で味わう味覚、体で触れる触覚。それらの他に人には第六感なるものがあると言われてきた。しかし、この第六感は心に影響する者の為、否定する者も少なくはない。なぜなら、他と違い共感性がなく、理屈で説明できないからだ。まだ、最近研究が進んでいる脳による力である超能力の方が、人の第六感の覚醒と言われれば納得がいくと言われるほど。ずっと否定され続けてきた。その中1人の研究者が声を上げた。
―――心とは...魂である。魂が心動かすこと魂覚。彼の力の正体は、魂に刻まれた心の形そのものだ。
一瞬誰もがピンとこなかった。しかし、戦っている時のバーグマンの姿を見た時、確信した。戦いではなく殺しを楽しんでいる。彼という人間の奥底にある殺戮への快楽。それが、力として表に出てきているのだと。そうして正式に彼の力は神託の力ではなくヴェルウォルク・バーグマンという男の魂に刻まれた心の形がそのまま力として表れている魂覚と呼ばれ、神託の力という言葉は薄れていった。本来のこの神託の力とは魂覚なのである。
依頼人から神託の力もとい魂覚の話を聞いて依頼を受ける。
〝遥か昔から蘇った亡国ルスティアナ最強の男、ヴェルウォルク・バーグマンの殺害〟
朝日が昇る頃、巨大な音と共に町が消し飛ぶ。その中央には心底楽しそうな笑い声をあげる男が立っている。瓦礫の中動けない少女を見つけると男は優しそうな穏やかな満面の笑みを浮かべて助け出すように首を掴んで持ち上げる。
「お前は...何んと鳴く?」
恐怖で声が出せない少女は首を絞められていく。そんな中で流れるように少女を男から引きはがす。
「誰だ?」
男は楽しそうな顔で少女を抱える青髪の青年を見る。
「お前の記憶の片隅にも居ない雑魚だよ。」
彼は男を見下して吐き捨てるように答えた。
「お前が...ヴェルウォルク・バーグマンだったんだな...。」
「? 私は君と会ったことないが?」
「俺の名は漆暗青葉。まぁ名前だってあんたは知らないだろうが、何で人を殺す?」
一応というように青葉はバーグマンに訊く。
「何故か? 楽しいからさ。自身の力を再確認するためだ。」
「それだけか?」
「それだけだとも。だがしかし、今も昔も変わらんのだな。本当の強者は中々現れん。だがまぁ...現れた事に感謝を...。お前は...何んと鳴く?」
バーグマンが挑発するように訊くと、青葉は鎖鎌を取り出しながら言う。
「俺、今日が初めてなんだ。」
「んん?」
「初めて...人を殺す。お前にこれまでのツケを払わせてやる。」
「ツケだと?」
「お前のおかげでかなり苦労した。大事なもんも奪われた。亡国ルスティアナ最強の男。その肩書が如何に無意味で小さいのかを教えてやるよ。来いよ快楽殺人鬼。どんな死に方がいい? 選ばせてやるよ。」
「...ふっふっふ...若造が...。」
青筋を立てながら笑っているバーグマンは青葉に向かってその場で掌底を繰り出す。
「転落死。」
青葉が避ける前に遥か上空から落下して地面に叩きつけられた衝撃に襲われる。しかし、肉片にはならず血を流しているが再生していった。
「おぉ~硬いなぁ流石デカい口を叩いただけあ...。」
感心していると次の瞬間には青葉に顔面をめり込むほど分銅で殴り飛ばされていた。すぐに受け身を取って連続で殴り始める。
「殴殺。」
青葉が近づく前に無数ともいえる殴打の連続が青葉を襲うが、鎖鎌で対応しながら強く地面を蹴って一気に距離を詰めていく。
「轢殺。」
しかし、バーグマンが手を仰ぐと、最高速の電車に轢かれる衝撃が青葉を襲うが、バーグマンの首に鎖を引っかからせて引き寄せて、勢いよく顔面を殴って地面に叩きつけると、半径5mくらいのクレーターができてひびが入る。そうして間髪入れずに止めを刺そうとした青葉に反撃をして距離を取る。
「...(強いな。見立て通りかそれ以上...。転落死、殴殺、轢殺...どれも普通ならば即死だ。なのに耐えている。それどころか対応できている。魂覚まかせの戦いじゃ負けるなぁ...。では...) 魔法も込みでじかに叩くだけだ。」
バーグマンが思考している間に分銅を鎖で高速で回転させながら現状のフィールドを確認して一気に距離を詰める。
「爆拳爆掌。」
青葉にカウンターを合わせて拳が接触した瞬間に大爆発が起き、一帯が吹き飛ぶ。しかし、その大爆発は一度じゃ収まりはしない。クレーターを中心にまるで誘爆するかのように連続で大規模な爆発が起こる。青葉の攻撃を捌くたびにバーグマンの拳が爆発を起こし、周りを吹き飛ばすが青葉は怯むことなく殺しにかかる。
「地形変えすぎなんだよボケェ!」
青葉がバーグマンを遥か上空へと投げ飛ばす。それによる音速の衝撃波で周りへの被害も甚大だが、バーグマンは笑いながら月に激突する。
「転落死。」
声の出せない宇宙でそう唱えると、バーグマンは地球に向かって落ちていく。そうして青葉の姿を視認した後に大量のミサイルを生み出す。
「ミサイル!?」
「爆殺。」
ミサイルが青葉とその一帯に降り注ぐ。
「吹き飛んだか...。」
土煙の中から再生して無傷で出てくる青葉を見て、バーグマンは確信した。
「(再生が遅い箇所があった。早く再生した個所に核があるな...。そこを叩かなければ死なんのか...。いやはや...化け物だな。)」
「(複雑だが、町が消し飛んでるおかげで気兼ねなく戦える。殺戮への快楽。それによる魂覚の力がこいつの根源...。普通だったら全部即死するような攻撃なんだろうな...。だが、肉体強度は普通の人間...にしては頑丈だが...回復してる感じはない。爆発する拳...あれが魔法だとするなら、こいつは完全に攻撃特化の魔法を扱うか...それと傷口が広がっていないように見える...。ダメージが悪化しない魔法を持って長期戦ができるようにしているか...かな。)」
バーグマンは空を叩くように何度も振動させる。
「死屍累々《ムルタカダヴェルム》。」
その瞬間、バーグマンが殺してきた遺体が動き出し青葉を見る。
「行け! 死体の群れ共!!」
一斉に襲い掛かる遺体の軍勢の攻撃を避けながら、青葉は反撃しようとするが、数が多すぎて対応しきれない。
「(さっき殺した人達の遺体だけじゃない...白骨化した遺体もある。まさか...ここら一帯で奴が今までで殺した人たちが全て襲い掛かって来てるのか。)」
そう分析している間に近づいてきていたバーグマンが青葉を捉え豊珠に向かって掌底を直撃させる。
「即死。」
青葉の豊珠が粉砕される。その場で動かなくなった青葉を蹴り飛ばし、バーグマンはつまらなそうな顔で生き残りを殺しに行く。
「...!」
しかし、豊珠は再生していく。粉砕された豊珠は体内で再構築されて行き、完全に元に戻る。血鎖狩人と異能力者の持つ豊珠は彼らの命と言っても過言ではないものだが、ただ破壊するだけでは命を絶つことはできない。豊珠自体の再生を防ぐためにすることは、豊珠を塵1つ残さず消滅させるか、別の豊珠を使って豊珠の再生を阻害するか、豊珠の力を外に出すか3択。だが、豊珠は分子よりも更に細かく霧散する為塵1つ残さず消滅は現実的ではなく、豊珠の再生を阻害するためにはまた別の豊珠を探さなければならずこれもまた現実的ではない、豊珠の力を外に出すのも豊珠の力に干渉するほどの何かが無ければどうしようもない。どれも現実的ではない。しかし、コーネリアス・クリードはカーツェ・べーチェ、クローヴン・ドーン、浅永巴の豊珠を破壊して命を絶てたのは彼の体内に流れる血毒によるものだが、これはまた別の機会に。豊珠が再生した青葉はぬるりと起き上がってバーグマンを見据える。
「何...? (核の様なものを壊せば殺せると踏んだが...違ったようだ...。)」
バーグマンをそう考えながら青葉を見ると細かな気配の違いに気づき、魔力を体中に纏い構えを取る。
「(生きてる...。どころか...力が湧いてくる。なんだこれ...?)」
青葉の瞳孔には鎖の紋章の様なものが浮かび上がり、目元から涙のように鎖の紋様が浮かび上がる。無意識下による血鎖狩人のNo.1格による神器解放。
「(後で、バンバに訊けばいいだけの話か...。)」
「(核の様なものを破壊しても死にはせんか。だが...戦闘不能にはなるだろう。いくら再生できるといっても無制限かつ無尽蔵とは思えん...。それにしても...殺せぬ相手と戦ってもつまらんなぁ...。)」
そんな事を考えていると、青葉が分銅を回し始めると周りの空気が変わる。
「(何だ? 重い...? 何がだ? 空気感か? 雰囲気か? ...何だ? 威圧されているのか? この私が? 姿も気配も先ほどとは確かに違う...これは...今から来る攻撃への恐れか...? まさか...この私が...死を恐れているというのか...死を感じているというのか? ありえん...。あの2人と戦って倒された時すら...私は己の死を恐れることも感じることもなかったはずだ。)」
「!!」
青葉が分銅を投げると瞬間移動したような速度で、隕石に直撃したような衝撃がバーグマンを襲った。消し飛ばした町の壁に激突して勢いが止まった。バーグマンは地面を殴る。
「死屍累々《ムルタカダヴェルム》。(どうやら...四の五の言う暇は無くなったらしい。)」
青葉は大量の遺体の軍勢を一瞬で殲滅して、一瞬で距離を詰めてバーグマンを仕留めに行くが、何とか避けて距離を取るが、速度で圧倒的に負けているのか一瞬で距離を詰められ力負けしそうになっている。
「(素晴らしい。瞬間移動と見間違うほどの速度、並の者なら一撃で葬り去れるほどの圧倒的なパワー、攻撃の規模を無意識に選択できる技術、相当な威力出なければ攻撃が通らない硬さと異常な速度による再生力...血鎖狩人...その力を最大限にまで引き出した力か...。) やはり四の五の言ってられないらしい。」
「何を楽しんでやがる...。」
「いや? 楽しんでいるのではない...殺しに来ているんだよ。」
そうして力負けしていたはずのバーグマンは何とか青葉を引きはがして距離を取りながら外から心臓を叩く。
「ぐほぁっ....!」
「ああっ...!?」
心臓を潰す勢いで叩いたからか大量に吐血して死にかけるバーグマンに一瞬だけ動きを止めた。その一瞬がバーグマンに切り札を使わせる隙を生んだ。
「死闘。一死。九死。万死。戦死。」
「?」
青葉が怪訝な表情で首を傾げると、吐血していたはずのバーグマンは語り出す。
「九死、避けられぬ死の危機。一死、一命を無くす。万死、命救われる見込み無し。戦死、戦いにおける死。死闘、命をかけた戦い。この5つの契約をお前と俺の間に勝手に結ばせてもらった。お前も俺もこの戦いでどちらかが必ず死ぬ。逃げることはできない。生き残れるのは1人だけだ。そして、賭けられたった一つとなった俺とお前の命を勝ち得るまで終わることはない。」
「俺の...? まさか...。」
「そう。この契約がなされた時点で俺とお前の中には命はない。だから逃げられないのだ。同時にこの状況下では俺の力のもう1つの側面が色濃く発動する。」
「もう1つの側面だと?」
「俺は死の窮地に追い込まれれば追い込まれるほど、力が増幅していく。つまり、この契約の条件下において俺は死の窮地から絶対に脱することはできず、力が増幅し続けるという事だ。」
「...!!」
青葉は即座に殺しにかかるが自分の動きについてこれなかったバーグマンが難なく受け止める。
「暢気に私の話など聞いているからだ...。力の増幅は秒単位で行われる。長引けば長引くほど...私はお前を越えていくぞ。」
紋様の力で圧倒していた青葉は力が増幅され続けるバーグマンの攻撃に対応できなくなっていく。
「(さっきから使ってた魂覚の力もかなり威力があがっている。たった一つの命を勝ち得るまで終わらない...? 長引けば長引くほど、あいつは俺を越えていく...。でも...不思議だなぁ...クリードと相対して本気で殺し合った時より...怒りも無ければ恐怖も無い...。...そうだ、こいつは物語の中と言えど、一度倒された人間だ。いろんな人を殺してるのを見て、俺も大事な人達を奪われたが、それは無力だった時の俺だ。俺はもう...あの学校で生活している時に、既にこいつを乗り越えている。だから、所詮...過去の人間だって思ってるのかもしれねえ。どちらかが必ず死ぬ...こいつはその状況に持ってこなければいけないほど追い詰められてる...。) 一度死んだ野郎が...蘇ってまで自分の快楽の為に生きてる...滑稽だな。それ以外が空っぽすぎて虚しいな。」
「何だと...?」
「(どうやらこの煽りは効くらしいな。) そんな滑稽で空虚なお前を...しっかりと終らせてやるよヴェルウォルク・バーグマン。」
「終わらせてやるだと? 何だ? 負け惜しみか!」
力が増幅したバーグマンを視認できる青葉は紋様...神器解放の力を今、完全にものにする。それを察したバーグマンはかつて戦った2人の人間と青葉を重ね合わせる。
「負け惜しみ? 追い詰められたのはどっちだよ?」
青葉が斬りかかってくるとバーグマンは後退していきながら轢き殺される衝撃を与えようとするが、その全てを避けて向かってくる青葉に驚愕しながらも応戦する。
「溺死!」
青葉を水中に閉じ込めて酸素を一気に奪う。しかし、青葉は水中で鎖鎌を振り回して水中の檻を破壊すると、そのまま鎖をバーグマンに巻き付けて絞め殺そうとするがバーグマンは即座に手を振り下ろす。
「圧殺。」
青葉は上下からとてつもない重さに圧迫されるが、それでも倒れることなく立ったまま絞め続ける。しかし、即死させられない為バーグマンの力は増幅していき、逆に引っ張られて反撃を受ける。
「(馬鹿な...核を攻撃した手応えはあった。しかし...破壊できない...。核の硬さが尋常じゃないほどに上がっている...。ここまで増幅し続けて...先ほどまで追いついていたと勘違いしていた...。実際元々の奴の力は遥かに超えただろう...。しかし...今の力をものにした奴に追いつくには...まだまだ足りん...。最低でも1時間は欲しい。...だが...そこまで私が耐えられる可能性も...ない...! 勝負に出るしかない...! 初めてだ...この技を敵に使うのは...あの小娘共にすら、この技を使う事はなかった!)」
吹っ飛ばした青葉が来る前に自身を空に転落させる。そうして起き上がった青葉が自身に気づくコンマ何秒の内に青葉に向かって、いや、地球に向かって手をかざす。
「我...死を与え、終わりを呼び、命を奪う者なり...限りなき命たちよ我を畏怖せよ。我が真名はヴェルウォルク・バーグマン! ルスティアナの戦神...。今宵奪うは...星の命...! 星の命を奪うのは、また星の命...! 召還・同一惑星...!!」
その瞬間、バーグマンの背後に地球と全く同じ体積、密度、質量を持っているが、本物の地球より頑丈な偽物の地球が現れる。
「星諸共! 死に晒せ!! (たった一つしか召還できぬとは.....力の増幅がまだ足りなかったか...! だが! 一対一でここまで私を追いつめたのは貴様が初めてだ!!) 漆暗青葉!!」
地球に落ちてくる偽物の地球にクレーターが開くほどの威力で跳んで真っ直ぐ向かって行く。
「(これで殺す...! 絶対に!!)」
紋様がより濃くなっていく。そんな事を感じる訳もなく青葉は鎖鎌の分銅を振り回し、鎌を力強く掴む。
「紫苑ノ殺刃!!」
分銅を投げて偽物の地球の核を粉砕し、星の爆発を鎖を回した衝撃波で消し飛ばす。
「なっ...!? (星を...壊す.....だと...!? 血鎖狩人...ここまで...!)」
勝ったと無意識に確信していたバーグマンは完全に油断していた。その油断が反応を遅らせ、鎌で両断される。
「...見事...だ...はっはっは...。」
両断したバーグマンの遺体を背負って着地すると、青葉の紋様は消えて疲労と激痛が一気に襲ってくる。だが、青葉はゆっくりと遺体を袋に詰めて、依頼人の元に持っていく。
「依頼完了だ...。」
「態々遺体を持ってくるとは...。律儀だなぁ...。だが...ありがとう...君のおかげで...私達の家族だけは...助かったよ。報酬を...。」
「...その前に一ついいか?」
「? あ~休みたいのか? 別に...。」
「そうじゃない。こいつの遺体を埋葬して、墓を建ててやりたい...。」
青葉の言葉に依頼人は目を見開いて後ずさる。
「え...? まさかその為に...。そんなものは必要ない。こんなろくでなしの為に墓など...。」
「俺の為だ...。どんな悪人の命でも...命は命だ...。俺が殺した命だ...俺は...それを背負って...これから生きていく...。だから...それを実感する為にも...俺の手で弔わせてくれ...。」
「わかった。元々墓地が置いてあった場所がある。そこを教えるからそこに埋葬して墓を建てると良い。だが、報酬はもう払っておく。今日は私の家で寝なさい。それで体が全快したら。墓でも何でも建てると良い。」
「ありがとう。」
素直に感謝しながら青葉はその場に倒れるように眠った。
「ん?」
朝、青葉は依頼人の子供に起こされた。話を聞くところまだ3歳くらいなようで親の言葉に取り敢えず嫌と言っている。一度眠っただけで全快して動けるようになっている。しかし、たった一日というわけではなく眠ってから3週間くらい起きなかったようだ。依頼人から報酬を受け取った後、体に異常がないかを確認してもらい、バーグマンの遺体を背負って依頼人家族から手を振って別れを告げた後、教えられた墓地に赴き、しっかりと埋め立てた後、武骨な岩を持ってきてある程度形が整うまで根気強く磨いて墓を建てる。
「...。」
合掌して弔った後、静かに立ち上がってその場を後にする。選択してもらって綺麗になった服を着ながら殺した時の返り血とその臭いを思い出しながらユーフォリアへと歩みを進める。
「...。俺も...ユーフォリアから出るかな...。」
そう独り言を呟いて、漆暗青葉はユーフォリアでかつての仲間たちの墓に挨拶をした後、同じような依頼を追っているバンバに挨拶する。
「俺もここを出ることにした。」
「そうか。」
「もしお前が協力が必要な時は、手紙とか何でもいいから呼べよ。」
「通信機を渡してくれるわけじゃないのか。」
「言うだけ言ったけど、お前が俺に協力を求めるとは思えねえもん。またなバンバ。」
「ああ。またな青葉。」
そうして軽く話した後にユーフォリアを出て一度だけ振り向いて漆暗一家との2年間、双葉との8年間、暗殺教育学校での3年間を思い出しながら一礼して歩き出す。
次話「腐った楽園」




