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Blood Spare of Secret : The story of Creeds  作者: 千導翼
第六章 ユーフォリア前編~暗殺教育学校~

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卒業試験

 ―――生体番号0001、コーネリアス・クリード。私からの正式な依頼としてこれを受理せよ。漆暗青葉、バンバ・キルラエル以外の生徒、OBOG、教師、全てを鏖殺。漆暗青葉、バンバ・キルラエルは殺せるなら殺せ。これがお前の卒業試験だ。


 暗殺教育学校に来て3年。今日は卒業試験の日。全生徒が卒業したOB、OGや教師陣の監視の元、暗殺教育学校が保有する敷地、約10㎡が範囲。2年次、1年次は観戦を可とする。


 ルール1:生徒を原則として殺してはならない。


 ルール2:範囲から出てはならない。


 ルール3:チームでの行動は原則禁止。必ず1人で指定時間までを耐えきること。


 ルール4:それぞれに課された任務を必ず執行すること。


 ルール5:範囲から出た場合、任務の不履行や失敗の場合は失格となる。


 特別措置:暗殺教育学校3年次の中でコーネリアス・クリード、バンバ・キルラエル、漆暗青葉はSSランクとして設定し、3つの任務と他の生徒よりも20分ほど遅れて卒業試験を受ける。コーネリアス・クリードは南側、バンバ・キルラエルは西側、漆暗青葉は東側の敷地外に待機、時間になったら敷地内に侵入して試験開始となる。


 試験は1日。本来であれば1週間であるが、例年に比べ3年次は少ないため1日だけとなっている。


 現時刻は06:00 a.m.


 それぞれの生徒が配置に就く。クリードは南、バンバは西北西、青葉は東北東の敷地外に待機している。


 「卒業試験当日。もしも同級生を殺そうとした場合、プロの暗殺者の先輩方であるOB、OGの子たちと僕ら教師陣が敵に回ることになる。いいかい? だから、殺しちゃいけないよ。心配いらないと思うけど。」


 林明の言葉を胸に生徒たちは覚悟を決める。その中でその様子を監視している教師陣の中でただ一人、ダリウス・フェイクラットは違う覚悟を決めていた。


 「卒業試験...開始!!」


 その言葉が敷地内に響き渡った瞬間、生徒たち一人一人に任務内容が開示される。


 「...了解。」


 任務内容を見たクリードは気配を完全に消して、敷地内に1分と経たずに潜入する。


 「(まずは試験を監視できるモニター室にいるダリウス・フェイクラットを除いた教師陣を殺す。)」


 クリードが動き出したと考えているダリウスは頬杖をつきながら目を開ける。


 「ん? クリード君が南の敷地外にいなくない?」


 「え? この映っているのは...ダミー...?」


 「(流石は林明と富士浪花。想定より気づくのが早い。) 花、林明。」


 ダリウスの声に林明と花は振り向く。2人の顔を目に焼き付けるように見てダリウスは見たことも無い穏やかな笑顔で告げる。


 「じゃあな。」


 「「は...?」」


 じゃあなという言葉を今言われた意味がいまいちわからない2人は一瞬フリーズした。その一瞬で、林明の首が飛ぶ。


 「!!」


 花は即座に抜刀して林明を切った何かに対応しようとするが、既に遅く抜刀した時にはもう花の首も飛んでいた。


 「なっ...!?」


 それに反応した他の教師陣も反応したころには死んでいた。


 「いつ...斬られた...!?」


 「ダリウス...あんた...。」


 林明と花は生首のままでそれだけを言い残した。


 「よくやったクリード。」


 「本当に良かったのか? 見たことも無い顔を2人を殺す直前に向けていたぞ。」


 「これでいい。私の目的を達成するためにはこの2人は必ず障害になる。続けろ。」


 「わかった。」


 モニター室で何があったかも知らないOBOG達は何があったかわからずモニター室に急行しようと動き出した瞬間にはもう殺された。


 卒業試験開始僅か10分、ダリウス・フェイクラットを除いた全教師陣、監視のために呼ばれた全OBOG、殺害完了。


 次にクリードがターゲットにしたのは、全生徒をカメラで索敵したグラスハッド・トリガーだ。


 「全生徒の居場所を確認した。後は、僕の任務を彼らに見つからないように実行すればいいだけだ。索敵って便利だねぇほんと。」


 「...!」


 そんなことを言ってる隙にクリードは走り出して、グラスハッドを狙うが勘で違和感を覚えたのか振り向いたが、違和感を覚えただけだった。襲い掛かる影にはクリードには気づくはずもなく、喉元を刺された。


 「ぐっ...!!」


 目を見開いて、試験が始まって10分しか経っていないのにも関わらずクリードがいる事、喉元を刺されてもう助からない悟った事、何より容赦なく躊躇いなく殺しに来た事に驚いていた。


 「...。」


 クリードはあっさりと刺したナイフを抜いて離れる。しかし、返り血を浴びてしまったことしか気にしておらず、グラスハッドが苦しんでいることに一瞬気づかなかった。


 「クリード...お前...!!」


 刺された喉元から噴き出る血を手で何とかせき止めながら上手く出せない声を出して睨みつける。


 「すまない。一撃で殺す気だったのだが、殺せなかったようだ。意外とこれでは死なないんだな。」


 クリードは至極普通の事のように喋りながら抜いたナイフを逆手に持つ。


 「...クリード...! なん...。」


 グラスハッドのこめかみを刺し貫いた。その後ナイフを抜いた後、目を抉り出して、目に内蔵されたチップを剥がす。それでグラスハッドの見ていたカメラの映像を視認して全生徒の位置を見た。


 「次は同じように索敵できるやつを殺す。浴びた返り血を洗うついでに。」


 グラスハッドの遺体に目もくれずクリードは次のターゲットの位置に気配を消して走り出した。


 「...?」


 少し離れた場所にいた銀狼は視界が増えたのを感じた。そこから水面を覗くと同じように見ると、クリードに付着した返り血からグラスハッドの遺体を見た。


 「グラスハッドが...殺された...。クリードに...!」


 そうして目を見開いて驚いていると、多くの水面からクリードの正体を視認すると、すぐ近くに迫ってきていることに気付く。


 「!!」


 銀狼は多量の人形を出して自分の周りを囲ませる。


 「(何が目的かわからないけど、グラスハッドの索敵で僕の位置を確認した。僕を最優先で排除しに来た理由。それは僕の多面鏡間の移動と視認する魔法を警戒して、それに僕の索敵が無くなれば、他の皆を殺すことも...。死ねない...。全員にこれを伝えないと...! 先生たちにも!)」


 そう考えていると、人形が減っている事に気付く。すぐさま人形に自分以外を攻撃させる。


 「(人形が減っているということは、クリードが近づいてきている証拠! 何で気づかない!? 何で気配を感じない!? 何で人形が減ったのにすぐに気づけない!?)」


 銀狼は高速で人形が減っているのにも関わらずそれにすぐに気づけないことを恐れながら、他の生徒に伝えることを優先するべきだと考え、何個かの人形にはそのまま攻撃を続行させながら、他は自分の防御を固めて走り出す。


 「(透き通った水か鏡さえあれば...! 何でこういう時に鏡を常備していない! 最初は水面による索敵で様子を見ながら任務をこなすつもりだった!! それが裏目に出た!)」


 そうやって銀狼は走っていると、クリードを視認することなく校内で鏡を見つけた。


 「(よし! ここから遠くの鏡に移動すれば!!)」


 そうして鏡に入ると、教師陣が死亡しているモニター室へ移動した。


 「先...生...?」


 その光景に唖然としていると、後ろから鏡が割れた音がした。割ったのはクリードだ。


 「クリード...! 何で...校内からモニター室までかなり離れているはず...!」


 銀狼が後ずさりながら言うと、視界にクリードの持っているスナイパーライフルを見つける。


 「ここから...狙撃...!」


 「そうだ。ここからお前の人形を殺していた。返り血でお前にグラスハッドの遺体を見せて、焦らせて普段の気の抜けた冷静さを欠かせた。ずっと思考を巡らせすぎて、逃げる事と他の奴らに伝えなければいけないと思うくらいに...。」


 「くっ...!!」


 「鏡は全て割った。お前が入ったのは敢えて残しておいた鏡だ。ここに来させる為に。」


 「それで...殺す為に...。」


 銀狼は声を震わせて、足を滑らせてしりもちをつきながら後ずさってクリードから距離を取る。


 「いや、銀狼。お前の場合は1つやってくれれば殺さなくていい。」


 「へ?」


 クリードからの予想外の言葉に銀狼は間の抜けた声をあげる。そんな銀狼に目線を合わせてクリードは言う。


 「マーキングしておいた生徒全員を呪殺しろ。」


 「...!?」


 銀狼は答えるより先に首を振る。


 「で...できないよ...。マーキングなんて...。」


 「だからこの紙を渡す。Sランクの生徒とよくそこに絡んでいた生徒意外はほとんど俺がマーキングしている。お前が呪殺すれば...ざっと2000人くらいは削れるだろう。もう俺は既に教師陣、OBOGを含めればもうすでに3000人は殺している。それに協力すれば...助けてやる。」


 無機質に淡々と言いながら紙を渡してくるクリードに恐怖しながら銀狼は葛藤する。


 「(言う通りにすれば...生きられるかもしれない...。保証はないけど...。でも断れば、絶対に殺される。この距離から生きられる術は...無い...。)」


 そんな銀狼の耳元で囁く。


 「辛かったろう? 自分の命の糧となった兄、父、母の死ねという怨み言が...。」


 「!!!」


 「あの時死ぬはずだったお前を助けた兄が、巻き込まれた父と母が、幻聴とはいえ死ねと言ってくる声が聞こえてくるのが...辛かったんだろう? いつも気の抜けたような態度や言動することでそれらの幻聴から逃げたかったろう?」


 「っ...。」


 「だが、与えてもらった命を無駄にはできない...。だから...死にたくもないだろう? たかだか2000人程度の命と自分の命...自分の方が大事だろう?」


 クリードが喉元に刃を当てる。銀狼は涙を流しながら構えを取って印を結ぶ。呪殺を遂行する。


 「!!」


 寸前で銀郎の喉元が斬られた。大量の血飛沫が舞う中でクリードが淡々と言う。


 「まぁそう言う選択を取ったところでどの道殺してはいた。銀狼。まさか俺を呪殺しようとするとはな。」


 「お父さん...お母さん...お兄ちゃん...私...どこで...間違...。」


 かろうじて聞きとれるか聞きとれないかの掠れた声を上げながら銀狼は息絶えた。それを見て、クリードはダリウスから預かっていた魔道具で、銀狼が呪殺しようとした際に一瞬出た魔法陣を描く。そして印を結び、魔道具に込められた魔力でマーキングした生徒全員を呪殺する。


 「見よう見まねでできるものだな。まぁ、これがあったからか。俺には魔力は無いものな。Sランク帯の生徒もそれに関わっていた生徒もそう多くはない。もうあとは数えるほどしかいないだろう。OBOGや教師陣の遺体の状態は全て違う。生徒もほとんどは銀狼の呪殺だ。すぐに俺だとは気づけない。次は厄介な再生能力を持っている血鎖狩人ブラッティソルのクローヴン・ドーンとカーツェ・べーチェを最優先に殺す。」


 状況の異様さに気付いたレゴンは、スナイパーライフルを向けてスコープからクリードに狙いを定める。


 「よくも...よくも...!!」


 その殺気に気付いたのか、クリードはレゴンが構えている方向を見る。


 「(...気づいたのか!?)」


 そう考えている間にクリードは姿を消した。レゴンはスコープを覗いたまま視界を動かすが見当たらない。即座にスナイパーライフルを納めて、その場から逃げる。


 「(グラスも、銀狼も...! 殺しやがった! OBOGの先輩方の遺体、先生達の遺体。どれも酷い状況だが、あんな躊躇いなく殺してたクリードに決まってる。バンバと青葉は無事か? それか2人は共犯...。いや、そんなわけねえ! 後...5分! 銀狼が逃げて稼いだ時間を無駄にしねえ!! 耐えきれば...バンバと青葉が敷地に入ってくる!! 何で撃てなかった...! 何で引き金を引けなかった。気づかれても即座に撃てばよかったんだ...!! 何で撃てなかった...! ほとんど話してなかったのに...それなのに躊躇ったのか...!)」


 そんな考えをしていると、レゴンは両脚を撃ち抜かれた。


 「ぐはっ...ぐっ...ごっ...!!!!」


 体勢を崩したレゴンは坂道を転がり落ちていく。


 「くっ...そ...!!!」


 倒れたままレゴンが後ろを見ると拳銃を持っていたクリードが近づいてきていた。


 「(拳銃...!? クリードは拳銃何て...今まで...! そもそもスナイパーライフルの狙撃だって見た事はねえ! ずっと短剣を使った暗殺の仕方だった。ずっと手加減してたのか...!? 俺達を欺く為に...!!) 何でだよ...?」


 「?」


 「何で殺すんだよ...! 同時期に任務を請け負って、敵対することになったから殺されるのはわかる...! だが俺たちは...! 仲間だったはずだ...!」


 「ああ。仲間だったんだろう。今はただの抹殺対象だ。」


 「なっ...!?」


 レゴンはそのままクリードに心臓を肋骨ごと刺し貫かれて絶命する。


 「敵対するから納得がいく...か。殺す殺されることに納得が必要なのか? 暗殺者に死を恐れる権利はない。それ以上に殺しているんだからな。」


 クリードはそう言いながらレゴンが絶命した事を確認して立ち去ろうとすると、とてつもない殺気を北の方向から感じた。


 「!」


 クリードの喉元に躊躇いなく斬りかかったのはクローヴンだった。


 「暗殺者に死を恐れる権利はない...か。他人の命を殺すことに何の抵抗を持たないお前に言う資格はない!!」


 クローヴンの短剣を受け止めたクリードをそのまま力任せて押し飛ばす。そのまま、学校の窓ガラスを突き破って教室の壁に激突したクリードは平然と立ち上がる。


 「命を奪うことに抵抗を持っていたら暗殺者なぞできないのでは?」


 クリードがそう訊くと、クローヴンは割れた窓ガラスから教室に入ってきて答える。


 「一つ一つの命の重さを背負うんだよ。憎まれる覚悟も呪われる覚悟も背負って...だから俺たちは全て終わった後弔うんだよ。勝手にな。お前だけはそれを一回もしなかった。お前が呼吸をするように奪う命は、俺達にとってはこの世の何よりも重たい命なんだよ。暗殺者は...対象を殺すか殺すべきじゃないかを見極め、殺す場合は...殺した相手に呪われる事や殺した相手の大事な人たちに憎まれる事を覚悟して剣を取るんだよ...!! むやみやたらに殺さないんだよ...! お前の取った剣には俺達への憎しみも殺すべき理由も何もない。空っぽで軽いんだよ...! 殺す殺さない納得が必要か? いるに決まってるだろ...! 納得しなきゃ...自分を納得させなきゃ...! 殺しなんてできる訳ないんだよ!!」


 その言葉と共に殺気を感じたクリードは即座にクローヴンの攻撃を受け止めて今度は吹っ飛ばされないように受け流す。


 「暗殺者がする命の主張ほど...浅く軽いものはない。」


 「お前は何を聞いてたんだ? 命の主張じゃない、覚悟の話だ!!」


 クリードはクローヴンの攻撃を捌きながら、敢えて気配を消さず攻撃を当てることに専念した。


 「今までは手を抜いてたのか...!?」


 クローヴンは驚きながらも傷口を再生させ続けていた。クリードはそれを見逃さなかった。


 「ぇ...?」


 「血鎖狩人ブラッティソル異能力者スペアネルには豊珠と呼ばれる箇所がある。そこから再生などを行っているが、それがある箇所からより近い部位から再生していく。クローヴン、お前の再生は右胸から早かった。つまりこの近くに豊珠があった。それを一発で当てたというだけだ。豊珠を壊されればいくら化け物と言えど、再生どころか生命維持もできなくなる。」


 クリードがさらに短剣を押し込んでかき混ぜると豊珠に入ったひびが大きくなり破壊されようとしている。クローヴンはその激痛に耐えながら何とか攻撃をしようとするが、力が入らず短剣を落としてしまう。


 「クローヴン。お前の敗因はいつもの戦いをしなかったことだ。俺の気配が消えて不意打ちでの一撃死を警戒して勝負を急いだんだろうが、そもそもお前やカーツェは豊珠を突き止めなければ不意打ちはリスクがある。だから、豊珠の位置が分からない限り、普通に戦わざる終えないんだ。いつもの戦い方をしていれば、まだ勝機をあっただろう。」


 「クリード...!!」


 パリンッという音と共にクローヴンの豊珠が割れ、そのまま絶命した。自身に寄りかかるクローヴンをどけて豊珠を抉り出すと、握りつぶして破壊した。クリードは服についた臭いを取る為に廊下に出る。


 「(なんか嫌な予感してたんだよなぁ...あのファーラとかいう女の人と、フレアとかいう男の人...あの人達会ったばっかだけど...一緒に居て楽だったなぁ...。) 学校...逃げてりゃ...良か...。」


 水道水で返り血を洗っていると、廊下の奥の方でカーツェで立っていた。


 「(予感...嫌な予感...。死んだら駄目だ...! ブリザが待ってる...! でも...クリードに...躊躇いなく人を殺すクリードに...勝つビジョンが見えない...!)」


 カーツェの内心など知る由もなくクリードは短剣を持って、ゆっくりと歩いていく。


 「(さっきの発言。傷をつけられ過ぎたら豊珠の場所が特定される。無傷で...! 殺してみせる!!)」


 そう決断した時には既に、カーツェの胴と下が真っ二つに分かれていた。即座に再生して、反撃をするが面白いくらい当たらない。


 「クソっ!! (駄目だ...。殺されるビジョンしか見えない...!)」


 鎖鎌のリーチや変則的な動きでクリードを攻撃するが、全て読まれているかのように当たらない。


 「クッソぉ!!」


 カーツェは敢えて近づいて分銅を直で当てて吹っ飛ばす。しかし、空中で体勢を立て直して壁に着地してダメージを最小限に抑えた。


 「(近づけないな。クローヴンのように怒りに任せて勝負を急ぐことも無い。だが焦っている。いや怖がっている。想定よりあっさりとクローヴンが殺されたことで俺を怖がっているのか。)」


 クリードがカーツェに向かって走り出そうとした瞬間に、ちょうどよく隠れていた神流が飛び出してクリードに抱き着く。


 「カーツェ!!」


 神流が叫ぶと、カーツェは高速で鎖を回して分銅を投げる。それを見たクリードは神流を逆に組み伏せて、頭蓋ごと刺し貫いて殺すが強烈な眩暈に襲われる。


 「(神流の毒か。抱き着いてきた時にさしたのか。この劇毒を...!)」


 「!!」


 クリードが思考した一瞬のうちに分銅が直撃する。壁を貫いて吹っ飛んだクリードを見た後、カーツェは神流に駆け寄る。


 「神流! 神流!!」


 「ごめんなさい...満月みつき...さん...。」


 「...満月みつき...ですって...? 神流...神流...!! くっ...!」


 カーツェは神流の遺体をそっと置く。


 「...満月...。神流が...知ってる名前...過去の人...。...バンバ...! 伝えないと...!」


 全て察して動き出そうとした瞬間にクリードが背後まで迫って来ていた。カーツェは振り向きながら目を見開く。


 「そんな...直撃だったのに...。(ごめんブリザ。ごめんね...。)」


 胴と下を真っ二つにされた時に豊珠が僅かに見えていた腹部をクリードは的確に刺した。


 ―――ありがとう。絶対に着て待ってるからね!


 「また1人に...させ..。」


 絶命したカーツェを見届けて念入りに豊珠を取って破壊した。


 「残りは冰燎、凍燐、フェブル、巴、司か。青葉とバンバがあと2分で敷地に入ってくる。クローヴンとカーツェは少し面倒だったが、まぁついでに神流とレゴンをやれたのは良かった。あと5人は...見つけ次第やるか。」


 そうして立ち去ろうとすると、背後から物陰から現れた冰燎が棒でクリードを殴り飛ばした。


 「(気づかなかった。カーツェの攻撃を直撃したのが効いてるのか。)」


 そうして思考していると、着地寸前を狙って凍燐が斬りかかってくる。


 「(やはりこの姉妹は2人で攻めてくるのか。)」


 クリードは拳銃で攻撃を防いで殴り飛ばされた勢いを殺しながら凍燐を蹴った。背後から走ってくる冰燎と即座に受け身を取って睨みつけてくる凍燐を見て前後から対応できるように構える。


 「(連携はいいが、怒りで少し動きが単調になっている特に凍燐...。妹を先に殺した方が、姉の方も殺しやすくなりそうだ。)」


 2人は同時にクリードに攻撃を仕掛ける。2人の完璧に近い連携にクリードは気配を消して対応するのではなく見せつけるように冰燎を先に攻撃する。


 「2対1なのに...何で...!!」


 「怒りで動きが単調になっているからだ。」


 「喋るな。クズ野郎!!」


 まだ2人の連携は崩れていない、しかしクリードが与えて行った冰燎への攻撃が連携の精度を下げていった。


 「ぐっ...!!」


 そうして、冰燎が先に動けなくなる。


 「冰燎!! (何で棒術で一定の距離を取って戦っている冰燎だけを狙う...!?) クリードぉぉぉぉ!!!」


 冰燎を助けるためにより猛攻を加える凍燐の一瞬の隙を突いて蹴り飛ばす。


 「ぐっ...!!」


 「暗殺者が人質を取られたり、怒りで動きが単調になっているようでは、務まらないぞ。」


 拳銃に弾を込めて冰燎に向けるのを見た凍燐はすぐに受け身を取って走り出す。


 「やめろぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」


 「くっ...!! 凍燐!! 逃げろぉ!!」


 「もう遅いさ。」


 冰燎は頭を撃ち抜かれて倒れる。それを見て凍燐は叫びながら怒りに任せて向かって行く。


 「逃げられるわけがない。たとえ逃げたとしても追って殺す。」


 「うあああああああああああああ!!!!」


 次の瞬間には凍燐の2本の剣は折られ、胴を切り裂かれ血飛沫を上げる。凍燐は冰燎の遺体に手を伸ばしながら、親もおらず、育ててくれる人たちもおらず、リルダーに拾われた時から道具として育てられた毎日。この学校に来てから心を持ち、幸せだったことが走馬灯のように蘇った。


 「待っててね...お姉ちゃんも...すぐに...行く...。」


 凍燐の目から生気が無くなり、2人とも絶命した事を確認すると、背後から走っている音が聞こえた。


 「凍燐! 冰燎!」


 最後の抹殺対象である。フェブル・クリスだった。フェブルはクリードを見るなり、覚悟を決めたような表情で拳銃を手に取る。


 「(ごめんなニルファ...お兄ちゃん...もう会えないかもしれない...! でも...! ただじゃ死なねえ!! 青葉かバンバ...あの2人がもうすぐこの敷地に入ってくる時間だ。校内にクリードがいることを知らせるために! あの2人がここに早く来れるように...何とか時間を稼いで、留めて見せる!!)」


 フェブルはあるだけの銃弾を連射する。室内の壁、床、そして銃弾同士で跳弾する嵐がクリードに襲い掛かる。窓ガラスの割れる音、銃声の音が敷地内に響き渡る。


 「(迷うな! 生き残れることは考えるな!! 死ぬ気で!) 死ぬ気で戦えぇぇぇ!!」


 「(なんて銃弾の嵐だ。自身の視界も奪われて不利になる可能性が高いのにも関わらず、迷わず撃ってきている。しかも、跳弾が銃弾同士でも発生できるようになっているから、より軌道が読みづらい。)」


 しかし、跳弾の嵐にしだいに慣れていったクリードは僅かなを見極め、その方向に針に糸を通すように距離を縮めてフェブルの喉元を切った。だが、フェブルは血飛沫が舞うより早く喉元を押さえて片手で引き金を引き続けた。


 「何...?」


 「ぐっ...ぐぉ...!!」


 喉元から出血でもう助からないと分かっていても、フェブルは撃ち続ける。しかし、死ぬより早く弾が切れてしまう。


 「(弾切れか...! くそっ!! まだ青葉も...バンバも来てねえってのに...! 畜生!!!)」


 クリードが即座に止めを刺しに行こうとすると、巴が守るように前に出た。


 「!? (後輩の2年...! 生きてたのか!)」


 フェブルがそう思っていると、司がフェブルを背負って巴に言う。


 「巴逃げるよ!!」


 「くっ...! 私は...ここで食い止めます! 司こそ早く行って!」


 「何言ってんの!? できる訳ないじゃん!!」


 「お願いします...!!」


 巴の覚悟を決めた顔に司は下唇を噛みしめて悔しそうにその場からフェブルを背負って逃げ去る。


 「(あの出血量じゃ普通ならば生き残れはしない。だが、万が一ということもある、この女を先に殺してから絶命したかを確認しなければ。)」


 クリードは容赦なく巴を蹴り飛ばす。


 「お前も血鎖狩人ブラッティソルだったな。ならば豊珠を壊さなければいけないか。」


 巴は双剣でクリードに斬りかかるが、逆にカウンターで首を斬られる。すぐに再生して反撃するが、それでも防がれまたカウンターで胴と下を真っ二つにされてしまう。


 「食い止める戦いをするから、いつものように動き回って戦えないわけか。そして、フィールドを広く使って戦う戦法だったり、対象を一撃で殺してきたからこういう真っ向からの対人戦は意外と経験が無いと言ったところか。」


 巴が再生して反撃をしようとすると、クリードは同じように真っ向から受け止めると見せかけて背後に周り、背中を刺した。


 「あ゛...!! ぐっ...!」


 「俺のことを警戒しすぎて、背中を守っていることがバレバレだったぞ。」


 巴の豊珠が破壊される。物のように倒れた巴から豊珠をえぐり取ろうとしたが、見つからなかった。クリードは離れられて見つけるのが面倒になる前にフェブルが絶命したかを確認しに移動を始めた。そうしてクリードの気配が無くなると、巴は何とか隠し通した豊珠でかろうじて動ける程度に再生させるが、そのせいで豊珠はエネルギーを使い果たし木端微塵に割れてしまった。巴は壁に寄りかかりながら司の元に移動を始める。


 「(...司。独りぼっちだった私に、家族も故郷も失った私と一緒に居てくれた...。司...あの時言ってくれた...。私も同じだよって...。私の心を...いつも支えてくれた...大事な...友達...だから...! 殺させない...!)」


 クリードが司の元に到着すると、今にも息絶えようとしているフェブルとそれを守るように司がいた。


 「巴は!?」


 「殺した。」


 「くっ...!!」


 「逃げろ...司...ちゃん...。」


 息絶えようとしているフェブルは喉元を押さえてそれでも立ち上がろうとした。司を守る為に。


 「大丈夫! 私だって強いんだからさ!!」


 恐れながらも司はフェブルの言葉を無視してクリードに向かって行った。それにカウンターを合わせるようにクリードは同じように背中を警戒している司を刺そうとする。


 「!?」


 しかし、数少ない力で床を壊した巴が庇う形で刺された。


 「と...巴...。」


 「司ちゃん...逃げて...。」


 巴はそう言い残して司に覆い被さるように絶命した。それを見たフェブルは喉元を押さえて巴の短剣を拾ってクリードに斬りかかった。


 「ぐっ...!」


 しかし、その動きだけで喉元から出血し、フェブルは動けなくなる。


 「(ニルファ...。お兄ちゃんの事...恨んでくれていい...! お前の病気を治す為に、散々延命で苦しめたくせに...先にこんなところでお前を1人にする糞兄貴の俺を憎んでくれていい。)」


 フェブルは内心で妹に謝罪しながら倒れる。もう体が動けずただ直に来る死を待つだけとなった。司は巴が死んだショックで動けずにいる。


 「(巴は確実に死んだだろう。フェブルに止めを刺して、その後は司...。)」


 そうしてクリードがフェブルに止めを刺そうとした次の瞬間、強い衝撃と共に空に投げ出されていた。


 「ん?」


 さっき自分がいた場所を見る。


 「...ぁ。」


 「...おっせぇな...。」


 漆暗青葉が立ち尽くしていた。

次話「墓石」

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