特別任務 前編
カジノ付きのクルーズ船。護衛対象のデラウェル・スクリームは偽名を使い、元の人間がわからないくらいに人妻の変装をしてその夫の変装を林明、その2人の子供の変装を青葉と神流が行い、現在は客室に待機している。抹殺任務をする迎撃班のうちレストランエリア周辺には凍燐、カジノエリア周辺にはクローヴン、プールエリア周辺には冰燎、フロント周辺にはカーツェ、ショーラウンジ周辺にはバンバとダリウスが配置についている。狙撃班のフェブル、レゴン、グラスハッドは小型ボートに乗って遠方から船の甲板、バルコニー、客室などが見える位置についている。そうして、客が入り乱れ始めると殺し屋たちと共に潜伏班のクリード、銀狼、花も動き始め、クルーズ船は出発する。
「3時間で目的の場所へは着きます。それまでは我々3人が絶対貴女をお守りします。神流。」
「はい。」
「君は絶対にデラウェルさんにのみ集中してください。私と青葉君は周りに気を配るので。そしてこれからはお互いの名前を私はクラウス。デラウェルさんはゾーイ。神流はベラ、青葉はオリバーと変えて呼ぶことにする。神流と青葉は私とゾーイをお父さん、お母さんと呼称してくれ。」
「...はい...!!」
林明の真面目な声音に深く頷くと青葉も同じように頷く。現在、護衛班は客室で待機中。
現在迎撃班は、潜んでいる殺し屋の情報を潜伏班から受け取りながら周りに気を配りつつ普通の客として楽しんでいる。
「あぁ! 美味しい...!」
「カジノに来て何するってんだよ...。」
「(いつまで泳いでたらいいんだろ...。)」
「(どの人の怪しく見えてしまう...。)」
「(ミュージカルなんて初めて見たな。)」
「(意外にもここはあまり来ないのか。)」
その様子を小型ボートから眺めている狙撃班は遠い目をしていた。
「重要な特別任務だけど...形だけの遊びすらないもんなぁ...。」
「ほんとほんと...つまんねぇよ。」
「潜伏班からの情報からいろいろなエリアのカメラを見てるけど...流石プロの殺し屋たちだからかな? 全然わからないや。」
カメラから中の情報を見ているグラスハッドの画面を覗いてみると確かに一見普通の客ばっかりだ。
その頃、潜伏班の花は敵の中心人物に寄り添いながら動きを止めていた。その中で鏡から見える情報を銀狼が他の全員に伝えてクリードは巧みな話術と演技力で船内に溶け込んでいる殺し屋たちと連携するような会話や合図を送って仲間に誰が殺し屋かを知らせる。
「(花先生...まさかあんなお色気ができたなんて初めて知ったなぁ~。...ってそんなこと言ってる場合じゃないか...。ここからが勝負だもんね。潜伏で殺し屋たちが一気に動き出して数が減ったら一番厄介だと思われる殺し屋を裏切って抹殺班や護衛班に協力する。)」
「どうしたぁ?」
一緒に行動している男に話しかけられ即座に対応する。
「いや、殺害対象の事をあまり知らないからね。少し思い出してたんだよ。」
「なるほどな。デラウェル・スクリーム。妙齢の女だ。有名なのはローザオルナータでの全ての財政を管理している女傑だってことだな。つい先月に財政の流れの違和感に気付き、その中心人物の男を問いただした所、上手くはぐらかされた後に拉致された。だがそこから抜け出し、何と1人で今も追手も撒いた運のいい女だ。今回はその中心人物の男の部下の奴からの依頼。報酬は山分けだがだとしたってどでかい仕事だぜ? たった一人の女を殺すだけで1人最低でも5億は下らない!! 絶対に俺は生き残ってその金を受け取る。だがそのためには前提として女が死んでなきゃならねえ...! まぁ頑張ろうぜ? えっと...金虎? だっけか?」
「そうだ。(銀狼だからって金虎って...安直すぎないかなぁ~?)」
そうして、それぞれが動いている中クルーズ船が出発して30分ほど経過した時、動かなかった状況が動き出す。客室で待機していた青葉が僅かな音に目を開ける。潜伏班にも狙撃班でカメラを覗いているグラスハッドからも情報の無い人物が客室の扉の前で止まったからだ。
「オリバー?」
青葉と林明はアイコンタクトを取って、神流は怖がるようにデラウェルに寄り添って守れる体勢に入る。林明に扉に近づきながら青葉は背後の窓を警戒しつつ扉をジッと見ている。扉を開けると明るそうな客室乗務員が立っていた。
「ルームサービスです!」
「すまない。今は子供が体調を崩してしまってね。自分達で取りに行くから結構だよ。」
「そうですかぁ~。では...!」
客室乗務員が背を向けて扉が閉まる瞬間に腰についていた鍵をずらして銃口が見えたのを神流は見逃さなかった。同時に青葉は零れ落ちるように入ってきたガス弾を見逃さなかった。青葉は即座に窓を開けたと同時に林明はガス弾を蹴り飛ばして外に捨てる。神流はデラウェルに撃たれた銃弾を防ぐ。それに気づいた客室乗務員になりすました男は扉を貫いて銃を連射するが林明は銃弾を全て掴んで銃口を捻じ曲げた後に男の腹部に掌底を打って窓から外に投げ捨てた。
「...通信機がとりつけられていた。ゾーイこの客室から離れた方がいい敵が動き出したぞ。オリバー、ベラ。この後さっきのような動きで頼む。」
「「うん。」」
護衛班はデラウェルを連れて周りを警戒しながら客室を出る。
同時刻、林明の読み通り客室乗務員になりすました男がつけていた通信機で多数の殺し屋にデラウェルの大まかな位置がバレた。敵の中心人物とそれに寄り添っていた花も動き出す。それをクリードと銀狼は的確に報告しつつ、飽くまで殺し屋陣営として行動する。報告を受けた狙撃班は銃を構えて迎撃班は立ち上がって動き始める。殺し屋陣営も薄々デラウェルを護衛している奴以外にも敵がいると考え始めたのか周りを警戒し始める。
レストランエリアでは凍燐が食事を終えて立ち上がった瞬間にブレーカーが落ちてレストランエリアが真っ暗になった。その中で驚く客とは違って全く動揺することなくこのエリアから出ようとする複数人の足音を聞いた凍燐は勢いよく走り出して、容赦なく殺し屋の首を飛ばす。
「何だ? てめぇ...。」
どすの効いた声で脅かす男に怯むことなく。凍燐は冷たく言い放つ。
「いいから...死んで。」
そうして男の首が飛んだが、真っ暗闇で動揺している客は気づかなかった。客に聞こえたのはブレーカーの復旧には10分ほどかかるかもしれません。というアナウンスのみ。凍燐は窓を開けながら、殺した男の遺体を海へ投げ入れる。他のレストランエリアから出ようとしている殺し屋も暗闇の中で容赦なく叩ききって、流れ作業のように窓から海へ投げ込む。上の席からクロスボウで撃ってくる殺し屋の矢を掴んで投げ返して当てた後に、痛みで怯んだ隙に突き刺して海へ投げ込む。
カジノエリアでも同様にブレーカーが落とされ暗闇になった瞬間にクローヴンは殺し屋よりも早く動き出して一撃で殺しながら、自身に気付いた殺し屋の仲間が銃口を向けた瞬間に死体を盾にして近づいていき更に首を飛ばす。
「(カジノエリアの床は暗い赤。血が多少飛び散ってもすぐには気づかねえ。)」
プロの殺し屋がクローヴンに成す術なくいとも容易く殺されていく。そのあまりにも簡単に殺せてしまう殺し屋達に違和感を持ちながらもクローヴンはブレーカーが復旧するまでの10分間誰一人としてカジノエリアから殺し屋を出さないように殺し続けた。
プールエリアでは冰燎が甲板近くで動く影や船内に海から潜入してくる音が聞こえ、水着を着替え直して船内や船上に侵入できないように殺し屋を突き落し、侵入されたら棒で殴殺して海へ吹っ飛ばす。その最中に狙撃される。
「!」
銃弾を掠めるだけで済んだが、客に気付かれる前に銃弾を拾って海に投げ入れたが迂闊に動けなくなった冰燎はグラスハッドに連絡する。それを受けたグラスハッドは冰燎を狙撃した殺し屋達の位置を特定し、レゴンがその方向を狙撃する。
「よしオッケー!」
「冰燎! 動いていいぞ!」
グラスハッドの言葉を信じて狙撃を警戒しつつ、動けなかった間に侵入してきた殺し屋の掃除を再開する。
フロントでは想定より多くの殺し屋が徘徊しており、その殺し屋達の一部がカーツェが護衛している奴らの仲間であることを察したようで客が行き交う中で大量の殺し屋を相手にしなければならない事に頭を抱えながらもカーツェは鎖鎌を隠しながら持って狙ってきている殺し屋を迎え撃つ。すれ違いざまに毒針で刺そうとしてきた女を即座に気絶させて、倒れないように壁に寄りかからせながら迫ってきた男の目を潰して息の根を止める
。そうして殺し屋以外の人がいなくなると、躊躇なく動き出し、鎖鎌を首に巻き付けてねじ切ったり、分銅で肋骨を破壊し鎌で心臓を切り取ったり、同時に血が飛び散る前にさっさと海に捨てる。そうして確実にフロントで自分を襲い来る殺し屋も逃げる殺し屋も容赦なく殺していく。
ショーラウンジではバンバがショーの主演のように襲い来る殺し屋を客には殺したと分からないように殺す。ダリウスは潜伏班の情報からクルーズ船全体に仕掛けられた爆弾を1人で探している。
「(こいつから鍵を取らねえとここから出られねえ...!! なのに...何でこいつは俺達を恐れるどころか平然としてやがる...!?)」
まるでショーのように殺し屋を相手にして客を盛り上げながら殺していくバンバの姿に何人かの殺し屋は自分たちが獲物になっている事を悟った。それを客がリアルなショーだと思って楽しんでいることも。しかし、殺し屋達はまるで映画の名前のないキャラクターのようにあっさりと倒されていった。
しかし、プロの殺し屋とてランクのような強さの序列がある。例えば完全に客に潜んで迎撃班も外から見ている狙撃班も気づかない者や、完全に身を隠して暗がりから護衛班にじわじわと近づいている者、変装して船員になりすます者。プロの殺し屋の中でも二流三流と言われる者達があっさりと抹殺班に殺されていく中で、一流の者達は無駄なく護衛班との距離を縮めて行った。なぜその情報がクリードや銀狼、花から送られてこないか、それは彼らが仲間を誰1人信じていないからだ。現在、移動中の護衛班にプロの殺し屋の中でも一流の者達が狙ってきていた。それに気づいた3人はデラウェルを守りながら周りへの警戒を強める。
「クラウス?」
デラウェルが林明にそう言うと、林明は青葉と神流にアイコンタクトをして2人にデラウェルを囲わせた瞬間、暗がりの中から顔や体型が全く分からない黒い外套を着た人間が出てきた。
「どなたでしょうか?」
あくまでも当然の疑問のように訊く。外套を着た人間はフードの中で笑っているような声で答える。
「ただの...知り合いですよ。」
その瞬間にデラウェルの目の前に移動してきていた。青葉と神流は一歩反応が遅れながらも殺される前にデラウェルをギリギリで守れた。
「あれ...外しましたね...。どうやら護衛してる方は優秀なようで。」
「「「(速い...!?)」」」
3人は全く同じように驚きながら林明は攻撃を仕掛けるが、全く見えなく速度でさっきと同じ位置に移動していた。
「(なんだ? どうやって動いてる...? 転移か? それともクローヴンよりも高速で動いているのか...? 何もわからないが...ただ1つ、声からして恐らく女だ。だから何だというわけでもないが...。)」
女の高速移動を今度は林明は止めてデラウェルと青葉、神流にアイコンタクトをした。それを察した3人はその場から退避する。
「何者だ?」
「名前を教える義理はない。それに...貴方と戦っている暇もない。」
高速で動き回る女に林明は何とか反応しながらデラウェルへの追跡を止める。
「(目で追えないレベルの高速、音速と言ってもいい。まるでクローヴンやバンバと戦っているようだ...。クローヴンとバンバの共通点は速度による機動力と、双剣という軽量の武器を扱っているところ。まさか...。この女...!)」
何かに気付いた林明は即座に女から攻撃を引き出すように隙を晒して戦っていると、一瞬だけキラリと外套の中から金属光沢のような光が見えた。それも只の金属ではなく刀身の様な。
「(確定とまではいかないが...速度による機動力、短い刀身からと思われる光沢の光...恐らくだが...双剣の血鎖狩人だ...!)」
林明はそう考えて、自身の影から鋼鉄のガントレットを取り出して、女の双剣の攻撃を受け止めて、ポケットの影から拳銃を取り出してゼロ距離で引き金を引くが、また高速で距離を取られる。ならばと林明は自分の影に入るように女の影から出てきて攻撃を仕掛ける。
「影を自由自在に行き来する魔法か?」
「まぁそんなところだね。」
林明はそう言いながら、比較的明かりの弱い通路の影に身を潜める。
「(影で移動できるからいつでも逃げられた3人に合流できる。でもそうしないということは...俺の速度を警戒しているのか...。)」
女が警戒しているところに天井の僅かな影から姿を現した林明は刀を振り下ろすが、女に受け止められる。
「警戒すべきは...周りじゃないかな?」
林明がそう言うと、周りの影から無数ともいえる武器が現れる。女は林明を押し返して高速で飛んでくる武器を避けながら影に潜んで自分に追いついてくる林明を攻撃するが、影に潜まれて攻撃が当たらない。
「クソっ!」
女が悪態をついた瞬間に林明は棒で殴打するが、女は倒れることなく外套から短剣を突き出してくるが、影に潜んで避ける。
その頃、花と中心人物の男は甲板で周りを見渡していると、1人の男が紫色と青い目と青紫の髪、黒いハット帽と黒の服に身を包んだ男が現れる。
「ちょいと時間が掛かりすぎじゃないのか?」
「...!?」
その男の存在を知らなかった花は悟られないように驚愕した。それを察したのか男は少しニヤリと笑って中心人物の男に言う。
「そろそろ派手に暴れていいんじゃないか?」
「それをしたら面倒な事になりますわ。」
即座に反対する花に男はにやけながら反論する。
「面倒な事か? 船内にいる殺し屋ごとまとめて皆殺しにすれば面倒でも何でもない。行方不明という扱いにすればいいだけの話だ。それに、お前の意見じゃなく...今回の依頼をしたカルヴァ―ドが答えるべきだ。」
「...皆殺しというのは、私が信頼を置いた他の女性2人も殺すのか?」
「嫌か?」
「そうではない。女性は...生きてもらわないと困るのだ。大切な報酬与えるためにね...。それに彼女たち殺し屋の中でも優秀な協力者だ。殺してもらうのは止めてもらいたい。でもそれができるのなら...船内の人間は皆殺しにしてもらっていい。」
「言ったな? カルヴァ―ド。お前の上司に何を言われても俺は責任を取らないぞ。」
「もちろん。だが花音は殺さないでくれ。」
「いいだろう。」
男は消えるように姿を消した。花はカルヴァ―ドと行動を共にしながら連絡の信号でクリードと銀狼に伝えた。それを知った銀狼とクリードは抹殺班と護衛班全員に情報を伝える。
ショーラウンジで殺し屋を全て一掃したバンバはショーの終わりまで完璧にこなして暗くなった時に殺し屋を全て海に捨ててショーラウンジを出た。
「(客と依頼した殺し屋諸共一掃する為か、ジャック・ア・ベーゼが動き出した。抹殺班は殺し屋の殲滅、潜伏班は客を避難させつつ行動を遊撃に変えて抹殺班と連携して殺し屋を殲滅せよ。護衛班はデラウェルを引き続き護衛し、容赦なく狙ってくる殺し屋は躊躇いなく殺害せよ。か。ダリウス先生は今は船内の爆弾で自由には動けない。花先生も中心人物の男と共に行動していていつ本格的に動くかわからない。その前の連絡で護衛班と林明先生が襲撃によって今別行動をとっている。護衛班に合流する方がいいか。)」
バンバがそう考えながら移動した瞬間、船内全体にとてつもない殺気を感じた。
「(拳銃を構えた時の音...。)」
バンバは即座にショーラウンジの人達にも撃たれた銃弾をワイヤーや爆弾を使って防ぐ。
「逃げろ!!!」
目の前で起きた事にどよめきながら客が逃げていく。
「(普通の殺し屋の規模じゃない。だが、血鎖狩人や異能力者のそれとも違う...。船内全域に感じた今の殺気、他の奴らも防いだのか。)」
バンバが犠牲なしの報告をすると、次々と迎撃班も犠牲なしの報告が聞こえた。
「おお~。まさか全員防ぎきるとは...どうやらデラウェルとかいう女を護衛している連中は相当手練れなようだ。」
複数の分身が1人の男に集約されていく。
「ジャック・ア・ベーゼか。」
「俺の事を知っているのか坊主...。」
「坊主と言ったということはジャック・ア・ベーゼ本体...という事でいいのか?」
「好きに解釈しろ。まぁお前の察しの通り、他の5人とも今俺は相対している。別に情報はお前たちのみに伝達されていないという事だ。さぁ...全員まとめてかかってこい。どれが俺の本体か...当てて見せろ。」
挑発するように笑うジャックに冷めた顔でバンバは対応しながらジャックと相対している他の迎撃班と小型ボートで覗いている狙撃班に言う。
「客を守りながらジャックと戦う。狙撃班は他の殺し屋の掃討を頼む。」
バンバの指示に全員納得したのか返事をして構えを取る。
「客を守りながらどこまで戦えるのか見ものだな。」
「逆に余裕で負けて自分が見世物になる心配でもしたらどうだ?」
ジャックはバンバの言い分を鼻で笑って分身しながらハットを手で押さえて拳銃を構える。
その頃、操舵室で爆弾を解除したダリウスは爆弾のあると思われる位置を正確に当てている船員を警戒しながら、爆弾を解除していった。船内全域に漂う殺気と現在の抹殺班の動き、まだ殺されていない二流三流の殺し屋達の動き、潜伏班の動き、護衛班の動きの凡その予測をしながら、最後と思われる爆弾を処理すると、ずっと自分から離れる事の無かった船員に目を向ける。
「何のつもりだ?」
「はい?」
「君、ただの船員じゃないだろう? 君の歩き方や態度、そして私を見る目...どれをとっても普通の船員とは違う何かを持っている。先ほどの客のどよめきも聞こえていたはずだ。実際何人かの船員が動いているにも関わらず、その連絡を取ったものの手早く終わらせ俺の事を優先させた。まずそもそも、俺の爆弾仕掛けられているかもしれないという突飛な発言を最初から信じたのか、爆弾の場所をまるで知っているかのように全て当ててた。爆弾の場所を知っていたのか? それとも仕掛けたのは君なのか...。答えたらどうだ?」
船員は3歩ほど下がってニヤリと笑う。
「あれ~? おかしいなぁ...。まぁ全然疑わないから違和感あったんだけど...わかってたんなら何でこんな逃げ場のないところまで来てくれたんですかぁ?」
軽快な口調で喋り出した船員もとい女は鎖鎌を取り出して笑っている。
「何故ここまで来たかって? それは単純だ。このさい客も全てこの船内で異常が起きていることはわかっている。だったら思い切って動けるという事だ。」
その瞬間女の背後に紫色の鱗を持つ大蛇が現る。
「はぁ!?」
「さて...久しぶりに大立ち回りを演じよう。」
ダリウスはそう言いながら何もないところから鞭を取り出す。
「ちょっと2対1とか最悪なんですけど。」
「挑む相手を間違えたな。小娘。」
女に大蛇とダリウスが襲い掛かる。
その頃、中心人物の男であるカルヴァ―ドと花が共に行動をしていると、カルヴァ―ドと花が元々待機していた場所に戻ってきた。
「?」
花が不審に思っていると、カルヴァ―ドは椅子に座って足を組んで花を見ている。
「どうしましたの?」
「いや...君が...欲しくなったんだよ。」
「!!」
不意打ちで花が大量の樹木に捕らえられた。
「な...何を...!」
カルヴァ―ドは花の事を下卑た目で見ながら杖を取り出す。
「君も...あの方の女になって...僕の伴侶になってくれ...。」
「...!! 断る。私には...たった1人の夫がいるの...!」
花に目掛けて機械仕掛けの刀が飛んできて樹木を切り裂いて花の手元に戻ってくる。
「いいよ? 人妻でも...大歓迎さ...。子供を産んでいる母体なら...なお、いい。」
「気持ち悪い事言わないでもらえない?」
花はそう言いながら息遣いが乱れ始まる。
「...?」
「花音...君が僕に触れていたりする間...ずっと君に媚薬を入れ続けたんだ。...体が火照ってしょうがないだろ。」
そう言いながらカルヴァ―ドは近づくが、花は機械仕掛けの刀を薙ぎ払って距離を取らせる。
「...ん? 解放してあげるのに...。」
「今までいろんな奴と出会ったけど...あなたが一番...生理的に受け付けないわ。カルヴァ―ド・レオニクス。」
媚薬に浸食されている体でも花は機械仕掛けの刀を構えて、下卑た笑顔を向けるカルヴァ―ドと対峙する。
その頃、護衛班は林明と合流しないまま機関室で隠れていると、奥の方で音がして青葉は神流にデラウェルの事を任せてその方向にゆっくりと歩いている。
「(何もない...。)」
「誰かいた?」
「いや...誰も...何も...ない...。大丈夫ですか? デラウェルさん...。」
「うん。大丈夫よ。」
青葉と神流は船内全域に漂う殺気と客のどよめく声を知りながらもデラウェルの護衛に集中している。そんな中で、この機関室の中でとてつもない殺気を感じた。
「「!?」」
青葉と神流がその方向に目を向けると船長がいた。デラウェルはそれに少し安心するが、青葉と神流は警戒し続けていた。なぜなら、操舵室でも船長室以外で船長は目撃されたという情報はない。何より機関室で殺気を感じる前、全く気配すら感じなかったからだ。
「え~...ここで何をしているんですかデラウェルさん...。」
その瞬間に少し安心しかけていたデラウェルさんの顔が青ざめる。それはそうだ。なぜなら、この船にはデラウェル・スクリームではなく、ゾーイ・テイラーという客として乗っているからだ。船長と言えど、デラウェル・スクリームが乗っているとは思っていないはずなのだ。青葉と神流の警戒が一気に強まる。
「どうしました? 青葉さん。神流さん。」
「誰だ...。船長じゃないな...本人はどうした...!?」
青葉の質問に船長? はニヤリと笑って答える。
「私は船長本人ですよ。ただし...中身が違いますが。大当たりだよ暗殺教育学校の諸君! 私は...いや俺は...憑き人だぁ...!!」
そう言って狂気的に笑って、腰からショットガンを取り出して撃ってくる。青葉は即座に前に出て撃たれた散弾の一部を受けながらも弾く。
「デラウェルさんを連れて逃げろ! 神流!!」
「うん! 行きましょう!」
「...はい...!!」
弾き返した散弾を相殺している船長? もとい憑き人は光の無い目で狂気的な笑顔を浮かべながら青葉に向かって引き金を引く。
次話「特別任務 後編」




