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Blood Spare of Secret : The story of Creeds  作者: 千導翼
第六章 ユーフォリア前編~暗殺教育学校~

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特別任務 前夜

 暗殺教育学校生2年次に進級した彼ら成績上位者Sクラスの生徒は林明、花、ダリウスの三名に呼ばれて夜の教室に集まっていた。


 「君ら12名に集まってもらったのは実務よりも上の特別任務を受けてもらうからだ。」


 「特別任務?」


 林明の言葉に青葉が首を傾げると当然の疑問だと言わんばかりに頷いて説明する。


 「特別任務は成績上位者と僕ら講師陣と協力して行われる大型任務だ。これまでの実務も任務ではあるものの僕らはあくまで助けとしていたが、今回は違う。失敗の許されない重要な任務だ。今回の任務は大きく三つ。要人の護衛任務、襲撃者の抹殺任務、情報伝達と遊撃を主とする潜伏任務だ。護衛任務は事前に要人と会う事になる。抹殺任務は敵が雇った殺し屋や暗殺者をその名の通り迎え撃って殺すこと。潜伏はこれから敵の中に紛れ込み、その情報を護衛任務や抹殺任務にあたっている仲間に情報を伝達し、機を見て戦闘に参加するといったものだ。一番難易度が高く、バレしまえば死ぬ覚悟をしてくれ。そして、失敗の代償は大きい。暗殺はバレずに実行することが第一だ。失敗はバレてしまう事。その場合、目撃者の抹殺。皆殺しをするしかなくなる。」


 「!? 皆殺し...。」


 「そうならない為に...今回の任務に君らは絶対必要不可欠だ。護衛任務には僕、抹殺任務にはダリウス、潜伏任務には花がそれぞれリーダーとして対応する。要人を命懸けで守る覚悟ができたら護衛任務に、敵を静かに殺すことができるなら抹殺任務に、失敗したら死ぬ責任を請け負う覚悟があるなら潜伏任務に、護衛任務の定員は2人、抹殺任務の定員は8人、潜伏任務の定員は2人だ。」


 流石に全員ある程度動揺したが、2人動揺することなく手を挙げる。


 「コーネリアス・クリード。潜伏任務に就きます。」


 「バンバ・キルラエル。抹殺任務に就きます。」


 「わかった。ではバンバはダリウスの元に、クリードは花の元に行ってくれ。」


 即決した2人を見て、青葉は葛藤する。


 「(俺の実力なら...抹殺任務をすべきだ...。だが...俺は...バンバやクリード...他の奴らほど...躊躇せずに人を殺せない...! 護衛任務に就くべきだ...。だが...抹殺任務は言ってしまえば敵と戦うのが主だ。俺が行かずに誰かが死んでしまったら...。)」


 それを察したクローヴンが青葉の肩にポンと手を置いてからニヤリと笑って挙手する。


 「クローヴン・ドーン。抹殺任務に就きます。」


 それを見て、カーツェも頷いて挙手する。


 「カーツェ・べーチェ。抹殺任務に就きます。」


 「血鎖狩人ブラッティソル3人。戦力として申し分ないね。2人ともダリウスの元に。」


 その光景を見た。青葉はクローヴンが自分を見て頷くのを見て挙手する。


 「漆暗青葉。護衛任務に就きます。」


 「...わかった。では僕の元に来てね。他の子は? 勝手に決めていいのかい?」


 林明の言葉に静かに銀狼が手を挙げる。


 「...吾月銀狼あがつぎんろう...。潜伏任務に...就きます。」


 声を震わせて覚悟を決めた顔を林明に向ける銀狼に深く頷いて


 「では、花の元に行って。これで潜伏班は定員に達した。後は護衛班と抹殺班だよ。」


 そう言われて即座に神流が手を挙げる。


 「艶宮神流あでみやかんな。護衛任務に就きます。」


 「なっ!」


 先を越されたというようにフェブルが声を出すと、少し笑っちゃいながらも林明は頷く。


 「わかった。では僕の元に集まってね。じゃあ、まぁ残っちゃったってことで、フェブル・クリス、グラスハッド・トリガー、凍燐リンジエ冰燎リャオビン、レゴン・スパルトスには抹殺班についてもらうからダリウスの元に行ってくれ。」


 そうして3班に分かれると、別の部屋に移動した。林明は主な日程を提示した。


 「来週には要人と接触することになっている。それまでに護衛をするために、君らには守る力を鍛えてもらう。人間サイズの人形を襲ってくる僕から実際に守ってもらう。今日はもう遅いから明日からになるだろうが、よろしく頼む。」


 「「はい。」」


 そうして、その日は林明と別れると青葉と神流は一緒に寮まで歩き始める。


 「...私が抹殺任務や潜伏任務に行かなかった理由はね...。」


 突然喋り出した神流に驚きながらも青葉は隣で歩くように歩幅を狭め歩く速度を落とす。


 「抹殺任務は...対象を絞るまだしも...複数には向いてないんだ...。一番向ているのは...潜伏なんだよ。でも...失敗したら...罪のない人も殺さないといけなくなるし...多分...失敗したら死ぬって言われたのが...怖くて...逃げた...。暗殺者が怖いなんて言ってたら駄目なのに...。」


 「そんなことはないだろ。暗殺者でも人間なんだ。怖いときはあるさ。それで言えば俺なんて、暗殺を教育するここに通ってるのに...未だ誰も殺せてない...。俺の方が暗殺者として駄目な半端者さ。神流は何でここに来たんだ?」


 青葉が寄り添うように励ましてくれて神流は目を見開いて驚くが、その後に訊かれたことに苦虫を嚙み潰したような顔をする。


 「答えたくないならいい。でも、聞いたからには俺は言っとく。俺は...守れなかった妹の分まで生きる為...失わない力、守る力を持ちたいからだ。血鎖狩人ブラッティソルの力だけじゃない。」


 真っ直ぐに言う青葉に心を打たれた神流は答える。


 「私のはね? 青葉ほど...いい理由じゃないんだ...。私ね? ここに来る前は...体を売ってたんだよ...。いっぱい体を触られてさ...嫌だったけど...生まれた時からそんな環境だった。でもね? そこにいる私の友達が逃がしてくれたの...。ここにいたら希望なんてないよ。今なら外に出るチャンスだよって...私はそれで唯一逃げ切ったの...。その子は逃げられなかった...。私はその子を助けたいのと...あの...女をただの性の対象としか見ていないあの連中に....復讐するのが...目的...。」


 正直に答えた神流に言葉を失いながらも青葉は申し訳なさそうな顔で言う。


 「ごめん。嫌な事を俺は訊いたんだな...。」


 「いいよ。なんか不思議と...楽になった...。全然詳細とか話してないのに...凄く...楽になった...。」


 そうしていつの間にか寮に着く。神流は寮に走りながら振り向いて手を振る。


 「青葉! またね!!」


 「ああ。また明日!」


 その時の神流はいつものように色気を振りまいて艶やかな印象はなく、ただの1人の可愛らしい女性のようだった。


 同時刻 抹殺班で別部屋に移動したバンバ、クローヴン、カーツェ、フェブル、グラスハッド、凍燐、冰燎、レゴンはダリウスから細かい作戦と当日の状況の詳細を聞かされ、それまですることは暗殺技術の向上とどんな相手にも戦える実戦経験を重ねる事を提示された。そして、抹殺班から更に2班に分かれることになった。


 「狙撃班としてレゴン、グラスハッド、フェブル。迎撃班としてバンバ、クローヴン、カーツェ、凍燐、冰燎。異を唱える者は。」


 「「「...。」」」


 「ないな。では、明日から俺が要人を狙う殺し屋として襲い掛かる。狙撃班は俺を狙撃し、迎撃班は俺を殺しに来い。ある程度言ったら狙撃班と迎撃班の計8人でチームを組ませて実戦訓練を行う。質問はあるか?」


 「ありません。」


 バンバの返答に他も頷くと、ダリウスは解散とだけ言って部屋を出て行った。8人もそれぞれ部屋を出る。


 「じゃあまた明日な!」


 フェブルがそう言って寮とは違う方向に走り出した。それを追うように凍燐と冰燎が行く。


 「彼女らはフェブルにぞっこんだねぇ。」


 「凍燐はまだしも冰燎は姉について行ってるだけだと思うぞ。」


 「わかってるさ。じゃあカーツェさん...。」


 「明日も学校は来れるから特別任務の為の訓練よろしくね。」


 カーツェを口説こうとしたグラスハッドは無視され、固まってしまったが気を取り直して残ったメンバーを見ると、レゴン、バンバ、クローヴンで見事男だけ。


 「はぁ...そんなに僕って男としての魅力...ないかなぁ~?」


 「いや...あると思うけど...。」


 「だよねぇ! 僕ってここの男の中だと...1...2番目にはイケメンだと思うんだよ。」


 「え? 1番じゃねえの?」


 グラスハッドが訊かれたくなかったところをクローヴンは的確に訊いてくる。左目の瞼を震わせながらも正直に答える。


 「1番は...青葉だ...。」


 「「「ああ~。」」」


 先ほど魅力があるとフォローしたレゴンですら納得したように声を上げると、グラスハッドは悔しそうに言う。


 「あの人の好さ! 青髪で片目が隠れた怪しそうなビジュアル! シンプルな顔の良さ!! 圧倒的な強さ!!! 勝てる訳がない!! 僕が唯一勝ってる要素は! 声...のみ...。」


 「すっくな。」


 「すっくな言うな!! くぅ~...!!」


 「...。」


 バンバが無言で背中にポンと手を置く。


 「無言で励ますの止めてくれない!?」


 「別にいいだろ。お前だって女を口説きたいからってこんな学校居る訳じゃねえだろ?」


 「ま、まぁそうだけど...。」


 「何でこんな学校に来たんだ? レゴンはまぁ何となく察しはつくが...。」


 「え、えぇ...? まぁ...俺はあの時生き残っちまったからな...どうやって生きていくかわからねえから。取り敢えず最悪な場合でも生きられるように強くなるみたいな理由。」


 さりげなくいじられたことに困惑したレゴンは流れるように理由を話した。それに対してグラスハッドは少し興味を持って質問する。


 「まぁそうだろうね。何か見つかったかい?」


 「いや...なんかまだ何とも言えねえや...。」


 「そっか。僕もそんなところだ。」


 「え? グラスも?」


 「うん。僕もなんか...これ!! って目的ないんだよ。始まりは凄く変でさ。ある日...家族が女の人に殺されててね。まぁそいつら僕の事を虐待してたから嫌いだったし、そのせいか僕...その女の人が凄く眩しく映ったんだ。凄く美人だったからさ...。でも...その女の人...目の前で殺されちゃうんだ。」


 「マジかよ...。」


 「その復讐か?」


 「まぁそんなとこだけど...正直顔も見えなかったし...姿もわからなかったし...何より女の人と会って間もなかったから憎しみが凄いあるとかはないんだ。ただ...僕をあの家から助け出してくれた恩と多分だけど僅かな恋心から女の人の遺言を聞いちゃったんだ。」


 「遺言...。」


 「あの男だけは...あの男だけは許さない...! あいつだけは...この手で...! って言っててさ...。それに対してその手を取って言っちゃったんだ。 俺があなたの復讐を果たして見せますって。そしたらあの女の人、口ではすぐに断って、謝りながらも僕の事を心配してくれたんけど...その女の人、凄く気が強そうで凛としてたのに、子供みたいに泣いてて、悔しそうな顔してたんだ。自分の死が近づいてるのが分かってからなのかもしれないけど...。だから...僕はほぼ衝動的に出た言葉だけれど...あの女の人の復讐を叶えなきゃってなって、色々転々としてこの暗殺教育学校に入学したんだ。家族はもういなかったからね。それが...理由かな...。だからレゴンと同じだよ。これ!! って理由は...僕にもないんだ...。」


 遠い目をしながら話すグラスハッドにレゴンとクローヴンは言葉を失ったがバンバがグラスハッドの背中を叩いて。


 「あるじゃないか。立派な理由が。」


 「立派かい? これ。」


 「俺なんて強くなるって約束を友人と約束したからだぞ? お前やレゴンの理由より余程しょっぱい。」


 「そうかなぁ~?」


 そんな会話をしていると寮に着いて4人はそこで別れた。


 同時刻 潜伏班で別部屋に分かれたクリードと銀狼は花の説明を聞いて準備を整えて分かっている敵のアジトに潜入する。


 「明日の早朝にここを発つわ。銀狼、クリード。充分に準備をしておいて偽名は私が作っておくから。」


 「「はい。」」


 花が解散と言った瞬間に部屋を出て行ったクリードと花を見た後、頭を抱える銀狼は呼吸を整えて落ち着く。


 「ふぅ~...いつも通り...いつも通り...。何で名乗り上げちゃったんだろ? らしくないなぁ~。」


 ある程度落ち着いた銀狼は部屋を出て寮に行くと、ちょうど神流と別れた青葉と鉢合わせる。


 「よっす。」


 「ああ。これからすぐに行くのか?」


 「いや、早朝だってさ~。青葉は? 寮に入る感じじゃないけど...。」


 「これからフェブルの妹さんに会いに行くんだよ。病院から許可を取って月1で近くまで来るらしいから。」


 「遅くない?」


 「それフェブルに言ったけど、夜ぐらいしか暇がないからって病院側に無理言ってるらしい。俺今日初めて会うからさ。」


 「ふぅ~ん。...僕も行っていいかな?」


 「わからないけど...ついてくるだけついてくるか? 歩いて行けるらしいけど。」


 「じゃあ行くぅ~。」


 そんな会話をして、フェブルと約束していた集合場所に青葉が向かうとなぜか凍燐と冰燎も居た。


 「多くねぇ?」


 「俺帰ろうか?」


 フェブルがそう突っ込むと青葉も同じことを思ったのか帰るか訊く。


 「いいよ別に。医者がいるけど宿部屋の中だし...多分...大丈夫...。」


 「どんどん自身無くなってるよ?」


 「そもそも何で凍燐と冰燎居んの?」


 「私は凍燐についてきた。」


 「私は別に妹さん見たかったから。盗み聞きした。」


 「えぇ.....。で? 銀狼は?」


 「明日の早朝に発つからその前に会っとこうかなと思って邪魔なら帰るよ。」


 「いいよ。すぐ近くだし、行こう!」


 そうして5人でフェブルの妹であるニルファ・クリスがベッドにもなるであろう椅子に繋がれていた。


 「よっ! ニルファ! 元気にしてたか?」


 「してたよ...。」


 ニルファは声を出しづらそうにしながらもしっかりと答えて、眼球の動きだけで青葉、銀狼、凍燐、冰燎を見る。


 「兄が...お世話に...なってます...。私...ニルファ...クリス...です...。」


 「結構喋れるようになったなぁ! 偉いぞニルファ!」


 いつもより声を張って元気にしてるフェブルと素直に褒められて上手く笑えないけど確かに笑おうとしているニルファの2人を見て、さっきほどの空気感を4人は出すことができなかった。凍燐は冰燎を一瞥して無言で抱きしめる。


 「え? 凍燐?」


 「...。」


 青葉は無言でニルファに近づいていく。


 「お世話になってるなんてとんでもない。逆に僕らも助けられてますよ。いつも元気な彼に...彼凄く優秀なんです。僕もかなり追い詰められたりしたんですよ?」


 「そうだぜ! だからまだかかるかもしんねぇけど...! 待っててくれよな! ニルファ! 絶対...絶対兄ちゃんが助けてやるからな!!」


 「僕も協力する。」


 青葉が言う前に銀狼がいつもよりしっかりとした声でニルファの手を握る。


 「だから...苦しいだろうけど...辛いだろうけど...生きるの...諦めないでね...。」


 「...はい...。」


 そのやり取りを見て、凍燐はニルファの元に近寄って優しく声をかける。


 「ニルファさん...私も...かなりお兄さんにはお世話になってね。いっぱい楽しい事とか教えてもらって毎日楽しいの...。だからさ...もし治ったら...一緒に遊ぼ。」


 「ありがとうございます。」


 「フェブルは...どんな存在...?」


 突然の冰燎の質問に困惑したようだったがニルファは確かな声で答えた。


 「唯一の肉親であり...私の一番大切な人です。」


 「嬉しいぜ! ニルファ!」


 本当に嬉しそうにして抱き着こうとしたがフェブルは寸でで止めて満面の笑顔を見せた。そうしてあっという間に時間が進むと、別れの時間になった。銀狼、凍燐、冰燎が出たタイミングでニルファは言った。


 「お兄ちゃん...。」


 「ん?」


 「辛かったら...いつでも止めて...いいからね...。」


 「......。大丈夫! 全然順調だから!!」


 そうしてフェブルと青葉が出ると、一緒に寮に帰り、銀狼、凍燐、冰燎が部屋に入った段階で青葉は訊く。


 「暗殺者になってることは...話してないんだよな?」


 「...うん。」


 「一生秘密にする気か?」


 「...うん...そう...したいな。」


 「...。」


 「わかってる...。無理な話なことは...でも...今更後戻りはできねえし...。暗殺者になって殺すのは...すげえきついし...辛いけど...それでも俺は...妹に...ニルファに...生きててほしいんだよ...。」


 「暗殺者になってでも...金を稼ぐ理由はなんだ? 何がお前が殺しの道に突き動かしたんだ?」


 青葉はかつての自分と同じような立場にいるフェブルがなぜ今の自分と同じことになっているかが気になった。


 「俺とニルファは...毒親って奴かな...に育てられてたんだ。そん時にニルファの体を売りに出すために薬を飲まされてる現場を見ちまったんだ。」


 「...何?」


 「その時俺は...ニルファを助けるために...両親を...。」


 「だから...。」


 「そうだ。ここに来る前に人殺しなんだ...。だから...俺がどれだけ手を汚しても...まだ汚れてないあいつだけには...生きててほしいんだ...!! 変なこと話しちまったな...。また明日な!」


 「あ、ああ。」


 フェブルの過去を聞いて似てるが境遇の違う彼ら兄妹に青葉はひどく感情移入した。


 同時刻 フェブルとニルファのやり取りを見て銀狼は過去の自分を懐古してた。


 「お兄ちゃん...か...。似てるなニルファちゃん...過去の僕に...。」


 そう言いながら銀狼は泣き始めた。その声が聞こえていたのか部屋の前を通りがかったバンバがノックする。


 「どうした?」


 その声に反応して銀狼は扉を開けるが、泣き顔を見られる事に気付くのが遅れて動揺するが、全く何も思っていないバンバを見て少し安心して部屋の中に招き入れる。


 「僕の過去...ちょっとだけでいいから...聞いてくれると...嬉しいな...って...。」


 「わかった。」


 即答に驚きながらも銀狼は話し始める。


 「僕ね? 昔...重い病気を患ってたんだ...。それを治す為にいろんな事をしてね...僕の家族...。傀儡魔法を使えるお母さんと、呪術を使えるお父さんとかでね、でも...上手くいかなくて...僕...もうあと数時間で死ぬってなった時...大好きなお兄ちゃんがいたんだけど...お兄ちゃんが...禁忌の魔導書を手に入れて来てさ。私の病気を治そうとしてくれたんだ...。でも流石に禁忌となると何が起こるかわからないから、お兄ちゃんまで失うかもしれないと思ってお母さんとお父さんは止めてたんだ。でもお兄ちゃん全然言うこと聞かなくて...何かあの時のお兄ちゃんは凄く怖くてさ...禁忌の魔導書を決して手放さなかったから...多分意識を乗っ取られてたんだと思う。」


 「...それで...?」


 「お母さんとお父さんの反対を押し切ってお兄ちゃんは禁忌の魔導書に書いてある魔法を実践したんだ。その瞬間に辺りがフラッシュみたいに部屋が真っ白になるくらいに光ってさ...。その時なんか体が軽くなってたんだ。でも、目の前にはお母さんもお父さんもお兄ちゃんも皆いなくて...気づいたら...僕一瞬何が起こったのか分からなくてお兄ちゃんが使った禁忌の魔導書のページをめくったの。そこで分かったのは、お兄ちゃんが使った魔法は他人に命を譲渡する魔法。」


 「命を譲渡だと...?」


 バンバが驚いていると銀狼は泣きそうな顔で続けた。


 「命を譲渡する魔法は死人しか使えないこと。譲渡した命は本来の寿命より大幅に減ってしまう事。本来ならば命の短い元の人格とはどこか違う何かが生まれてしまう魔法だったんだよ...。でも...その瞬間に死んだ僕が3人分の命を渡されたから、魂もすぐ近くにあったから偶々成功してしまった。しかもお兄ちゃんとお父さんとお母さんの魔法も...譲渡した命と共に僕の中に入ったんだ。」


 「...まさかお前のその力は...。」


 「鏡のはお兄ちゃんの、呪殺はお父さんの、人形はお母さんのなんだ。私が...生きたいって何度も言ったばかりに...お兄ちゃんは禁忌にまで手を出してそのせいで...皆僕の命に成っちゃたんだ。いつもそれを忘れたくて、何かを求めてしまうと、また大切な人達が死んでしまうと思って楽な喋り方で消極的に立ち回ってたんだ。でも今日フェブルの妹さんに会って...お母さんやお父さん、お兄ちゃんの気持ちが凄くわかった。」


 「...。」


 「助けてやりたいって思っちゃうよあれは...。らしくないことしたなぁ~って思ってたけど...フェブルの妹さんに会う運命だったんだろうね。凄い後悔してたけど...今はなんかやるしかないって気持ちになってきた。...ありがとうバンバ。話聞いてくれて...。」


 「いや...感謝されるほどの事はしてない。じゃあお前の次は特別任務の時だな。生きてまた会える事を望む。」


 「...うん。」


 バンバが部屋から出て行くと銀狼は呼吸を整える。


 「お母さん、お父さん、お兄ちゃん...今まで3人ともいなくなっちゃったの凄い辛くて...苦しくて、命を絶とうと思ったこともあったけど...もうそんなことしないよ...。力を貸してください...!」


 そうして銀狼は明日の早朝に発つ準備を始めた。


 翌朝、銀狼とクリードを連れて花は敵のアジトに向かい、抹殺班と護衛班はそれぞれの訓練を始めた。それから2週間後。潜伏班から受け取った情報を元に、護衛班は要人であるデラウェル・スクリームと合流し、抹殺班及び迎撃班と狙撃班はそれぞれの配置につく。カジノ付きのクルーズ船での特別任務が始まる。

次話「特別任務 前編」

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