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恋架け橋で約束を  作者: 桜坂ゆかり
第七章 七月七日
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孝宏君との時間

「待っててくれたんだね、ありがとう」

 二人の姿が見えなくなると、孝宏君が言った。

「いえいえ。家で待ってたんだけど、待ちきれなくて校門前まで行ってみたの。すると、智君と崎山君がちょうど出てこられて、お二人とここで孝宏君を待ってたんだよ」

「お待たせしてごめんね。それじゃ、帰ろっか」

 そして、私たちはゆっくりと家へ向かった。




 おばあさんに「ただいま」の挨拶をした後、私たちは二階へと上がる。

「じゃあ、着替えとか、色々準備をするから、少しだけ待っててね。それから、またおしゃべりでもしようよ。恋架け橋の伝説は、たしか『七夕の夜』だったから、まだまだ時間があるからね」

「うん、分かった」




 やがて、孝宏君が私を呼びに来てくれたので、私はすぐに孝宏君の部屋へと入った。

「きゃっ」

 入るや否や、いきなりギュッとハグされちゃった。

「ずーっと我慢してたから、つい……ごめんね」

「ううん、私もずっと待ってたよ」

 私も孝宏君の身体に手を回した。

「とりあえず、座ろっか」

 孝宏君がそう言うので、私は身体を離して座ろうとした。

 そのとき―――。


「今だっ!」

 元気な掛け声と共に、突然、昨夜みたいにお姫様抱っこされて、さらにびっくり。

 でも声が出ないのは、びっくりしたからというより、むしろ嬉しすぎて……かな。

 そのまま孝宏君は、ベッドまで移動して、私を降ろしてくれた。

 そして自らもベッドに。

 昨日の添い寝と似た状況になった。

「もう~、孝宏君ってば」

 笑って言う私に、孝宏君も笑顔で言葉を返してくれる。

「だって、昨日、海で言ってくれたでしょ。『独り占めにしていい』って」

「うん、たしかに言ったよ。嘘じゃないから」

「だから、こうして独り占め」

 そう言って、寝転んだ状態で抱き寄せてくれた。

 孝宏君の胸に顔が当たる。

 ぬくもりが愛しくて、私のほうからも孝宏君の身体に手を触れて、引き寄せた。




 それから、しばらくの間、そうして触れ合っていた。

 すごくドキドキするのに、落ち着くという……不思議な感覚。

 私は、孝宏君のそばにいられる幸せを噛み締めていた。




 やがて、少し身体を離して、孝宏君が言う。

「ちょっとずつ、暗くなってきているね」

 窓から外を見ると、たしかにそうみたい。

 元々、曇っていてそれほど明るくなかったんだけど、さっきよりさらに暗くなったように思う。

「それじゃ、恋架け橋へ行こっか」

 元気良く言う孝宏君。

 だけど……私の心に酷く引っかかっていることがあって、素直に笑顔を見せられなかった。

 

「七月七日、夢は終わる。恋架け橋で……」


 昨日のあの声を再び思い出して……。


「あの……えっと……。今日はやめておかない? 何だか……嫌な予感がして……」

「え? 気分でも悪いの?」

 孝宏君は心配そうだ。

「ううん、そういうわけじゃないんだけど。理由は分からないけど……今日はもう家にいたくて」

「そっか……。気乗りがしないのなら、仕方ないよね」

 心からしょげ返っている様子の孝宏君。

 慌てて私が言う。

「気乗りがしないっていうわけじゃないの! ロマンチックな伝説だと思うし。だけど……雨も降りそうだから……」

「じゃあ、あそこをサッと通るだけならいいでしょ。そのとき、伝説どおりに僕が誓いの言葉を言うから。佐那ちゃんは何も言わずに、そのまま通ってくれてもいいし。ね、それなら、いいでしょ? 七夕は一年に一度しかないから……」

 嫌な予感はぬぐえなかったけど、そういう風に言われては、私としても断ることはできなかった。

「うん、それなら……。でも、すぐ帰ろうね」

「もちろん。それじゃ、急ごう! この空の色は、いつ一雨来てもおかしくないから」

 私たちは大急ぎで支度を済ませ、階下に降りた。




「これからちょっとまた佐那ちゃんと出かけてくるよ」

 孝宏君がリビングのおばあさんに向かって言う。

「気をつけてね。遅くならないように。ああ、天気予報によると、雨が降るかもしれないらしいよ。傘を忘れずにね」

「うん、了解! なるべく早く帰るようにするから、ご飯はいつもどおりの時間によろしく。それじゃ、いってきます」

 私も続いて「いってきます」と言う。

「はい、気をつけてね。いってらっしゃい」

 おばあさんは優しい笑顔で言ってくれる。

 そして、私たちは家を出て、一目散に恋架け橋を目指した。


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