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恋架け橋で約束を  作者: 桜坂ゆかり
第七章 七月七日
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待ち伏せ

 そんなに時間がかからずに、校門前に到着した。

 でも、校門の真ん前のような目立つところで待つのは恥ずかしいので、数十メートル先の電柱に寄りかかる。

 五時きっかりに孝宏君が出てきてくれるとは限らないので、ひょっとすると長く待つことになるかもしれなかったけど、私はそれでも平気だった。

 家でじっとしているほうがつらいから。


 空には、ますます黒い雲が増えた気がする。

 せっかくの七夕なのになぁ……。

 七夕……。

 途端に私はまた、不吉な予感に襲われる。

 何なの、もう……。

 私は別のことを考えることにした。




 校門から出てくる学生さんは多かったけれど、孝宏君は見当たらなかった。

 まだ五時にもなってないから当然かな……。

 たまに、校門から出てきた見知らぬ学生さんが、私のほうを見てくることもあった。

 不審がられてるのかな……。

 恥ずかしかったけど、我慢して待ち続けた。




 すると、見知った二人の姿が校門から現れた。

 智君と崎山君だ。

「あれ? 佐那ちゃん、どうしたの? ああー! 孝宏を待ってるんでしょ」

 智君が笑顔で言う。

 すぐバレちゃった。

「え、あ、はい……」 

「やはりお二人は仲睦まじき、おしどりアベックでございますね。今さらジローではありますが、おめでとうございます」

 今度は崎山君が言う。

 そしていつもの直角お辞儀。

「あ、ありがとう」


「しかし、そっかぁ……。最初から、孝宏が好きだったんだよなぁ。俺に言ってくれれば、あんな邪魔はしなかったのに」

 智君は複雑そうな表情で言った。

「それはどうでしょう。御木本君は、きっと邪魔したはずですよ」

「相変わらず失礼だな、崎山は」

 笑いながら智君が言う。

「とりあえず、おめでとう! 孝宏は大事な親友だし、佐那ちゃんを取られてもしょうがないかもなぁ」

「ありがとう」

 智君と孝宏君の仲がすごく良さそうで、私は嬉しくなった。

 いいなぁ、こういう関係。

 記憶を失くす前の私にも、そんな親友がいたのかな。


「ところで、神楽坂君をお待ちということですが、彼は今日、部活の寄り合いがあると言っていましたよ。まだまだ時間がかかるかと」

 崎山君が教えてくれた。

「はい、聞いています。でも、待ちきれなくて……。いてもたってもいられず、ここまで来ちゃったんです」

「うわ……この一途さ……けなげさ……。くっそ~! つくづく、孝宏がうらやましいな! 仲良くね!」

「神楽坂君にゾッコンなんですね、微笑ましいですよ」

 崎山君はいつもの「営業スマイル」を崩さず言った。

「お二人とも、ありがとう」


「とりあえず、孝宏が来るまで、向こうの角にある自販機の前で座って待とうよ。立ってたら疲れるよ。あそこなら孝宏は絶対通るし、ここからもそう遠くないし」

「それは名案ですね。自動販売マシン前にレッツラゴーとしましょうか」

「お二人さえよければ、お願いします」

 私はぺこりとお辞儀をした。

「それじゃ行こう」

 智君が言う。

 そして、私たちは三人で自販機のあるところまで歩いていった。




 自販機のそばで、三人でおしゃべりをしていると、意外にもすぐに孝宏君が通りかかった。

「あれ? 佐那ちゃん! 智と崎山も。三人でどうしたの?」

「どうしたのって、お前を待ってたんだよ」

 智君が答える。

「そうでございますよ、インパラのように首を長くして待っていたんですよ」

 崎山君も言う。

 インパラって、首が長かったっけ。

「おかえりなさい」

 私はなるべく喜びを抑えるように努力して言った。

 こんなところまで出てきて、孝宏君を待っていたこと……本人に知られちゃって、ちょっと恥ずかしい。

 あ、でも……どうせ恥ずかしがるのなら、昨夜の添い寝のほうが……思い出すと……。

 駄目駄目!

 私は何を考えてるんだろう。

「どうしたの?」

 黙り込む私の顔を見つめて、孝宏君が心配そうに聞いてくれた。

「ううん、何でも。じゃあ、帰ろっか」

 私は、孝宏君のそばに移動した。


「それじゃ、俺と崎山はこのへんで。二人でラブラブ下校デートを楽しんでこいよ!」

 智君はそう言うと、崎山君と共に歩き出した。

「ちょ、何言ってるんだ」

 孝宏君は真っ赤になっている。

「では、アベックのお二方、また明日。バイナラ!」

 崎山君は直角お辞儀のあと、智君の後を追った。


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