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恋架け橋で約束を  作者: 桜坂ゆかり
第六章 七月六日
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花火、そして帰りゆく雪乃さん

 私たちが家に着いたとき、まだ雪乃さんは帰ってきていないようだった。

 キッチンではおばあさんがてきぱきと、夕飯の準備をしている。

 私たちは荷物を部屋に置いてから、おばあさんのところへ向かった。


「じゃあ、私も手伝いますね」

「おやおや、ありがとうね。孝宏はリビングで待ってなさい。もうすぐ完成だから」

「は~い」

 孝宏君はそう言うと、リビングのほうへ歩いていく。




 それから十五分も経たないうちに、夕飯が完成した。

「佐那ちゃんが手伝ってくれて助かったよ」

 そのとき、玄関から「ただいま~」という声がした。

「あら、雪乃だね。いいタイミング」

「ほんとですね」

 おばあさんと私は笑い合った。


 そして、テーブルにお皿を並べ、四人で楽しく夕食をとったのだった。




「じゃあ、花火といきますか!」

 夕食の後片付けが終わると、雪乃さんが言った。

 他の三人はすぐ、水の入ったバケツなどの準備をする。

 そして、全員で裏庭へと向かった。


「そういえば、三日前にも花火をしましたね」

 私は、おばあさんのほうを向いて言った。

「そうだね。あのときはまだ、二人はお付き合いしてなかったんだよねぇ」

「たしかに」

 おばあさんの言葉に頷く孝宏君。

 ほんとに……気持ちを伝えてよかった……。


「あーあ、あたしも混ざりたかったなぁ~。また今度、みんなで花火しない?」

 雪乃さんは、残念そう。

「雪乃姉ちゃん、もうすぐ夏休みだから、たっぷりできるでしょ」

「それもそっか」

 白い歯を見せる雪乃さん。




 最後に残っていた線香花火に火をつけて、みんなで楽しんでいると、急に切ない気持ちが湧き上がってきた。

 そう……明日は七月七日……。

 本来は楽しいはずの、七夕の日付なのに……私にとっては全く違う印象だ。

 漠然とした不安……。


「こないだ佐那ちゃんが言ってたけど……線香花火って、どことなく切ないね」

 孝宏君が言った。

 線香花火に照らされた横顔が、びっくりするくらい綺麗で、かつ凛々しく感じられる。

 思わず見とれるほど。

 



 やがて最後の線香花火も終わってしまったので、私たちは後片付けを始めた。

 私の心には、不安と心配が残ったままだったけど……。




「楽しかったよ~。みんな、またね!」

 玄関で元気良く言う雪乃さんに、私たちは見送りつつ「気をつけてね」「またね」と声をかけた。

「佐那ちゃん、早く記憶が戻るといいね」

 私を見て雪乃さんが言ってくれた。

「ありがとう。気をつけてね」

「うんうん、それじゃ、まったね~」

 そう言って手を振ると、雪乃さんは出ていった。


 ますます寂しさが増す私。

 その表情に気づいてくれたのか、孝宏君が言った。

「またすぐに会えるよ。さぁ、それじゃ、また僕の部屋へ行こう」

 私のこと、いつもよく見てくれているんだなぁと思って、ちょっと感動してしまう。

 今のは、きっと絶対、私が寂しい気持ちでいると察して、元気付けてくれたんだろう。

 私はおばあさんに軽く挨拶をしてから、孝宏君の後ろに続いて階段を上った。


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