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恋架け橋で約束を  作者: 桜坂ゆかり
第六章 七月六日
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海へ

 おばあさんと三人、楽しく食事をとったあと、お皿洗いが終わってから孝宏君が言った。

「これから、海へ行かない? 一昨日、室内プールで、あまり泳げなかったでしょ」

 そういえば、たしかに。

「賛成~! じゃあ、準備してこようね」

 すると、そばにいるおばあさんが嬉しそうに笑う。

「ばあちゃん、何だよ」

 困ったような表情の孝宏君。

「仲が良くて、あたしも嬉しいんだよ。あと何年かしたら、孫の顔が見られそうね」

「な、何言って……」

 孝宏君の顔は真っ赤だ。

 私の顔色も同じだと思う。

 でも……おばあさんに認めてもらえて、嬉しいな。

「じゃ、じゃあ、僕らは準備があるから」

「はいはい、気をつけていっておいで」

 おばあさんはにこにこしたままだ。

 羞恥心を押し殺して、私は孝宏君の後から階段を上って、部屋へと向かった。




 向こうで着替える手間を省くため、あらかじめ水着を服の下に着ておいた。

 そして、準備を終えると、すぐに私は廊下へ出る。

 そこには、すでに準備を終えたらしい孝宏君が待ってくれていた。

「お待たせ」

「いえいえ、それじゃ、行こうか」

 私たちは階下に降り、おばあさんに挨拶をしてから家を出た。




 電車から降りて、駅を出たところで、孝宏君が言った。

「もうすぐだよ。徒歩で十五分程度だったはず」

「案内よろしくね」

 私は孝宏君の後ろについていった。




 やがて―――。

 道の向こうに、海がその姿を私たちの前に現した。

 それまでもすごくわくわくしていたんだけど、私の気分はそこからさらに上昇していく。

「海だ~!」

 思わず声をあげちゃった。

「さぁ、行こう!」

 孝宏君も嬉しそうに言うと、突然駆け出した。

「あ、ずる~い。置いてかないで~」

 すると、急に立ち止まる孝宏君。

「やっぱり一緒に行こう」

 そう言って手を出してくれたので、私はその手をしっかり握る。

 やっぱり優しい……。

 私たちは手を繋ぎながら、浜辺を目指して歩き出した。




 浜辺に到着した私たちの周りには、すでに人がけっこういた。

 しかし、海も浜辺も面積が広いおかげで、プールのときのような窮屈さはない。

 私たちはすぐに水着姿になった。


 孝宏君の水着は、プールのときと同じもののようだ。

 私は、プールのときはビキニだったので、今回はワンピース水着のほうにしてみた。

「その水着もすごく似合ってるね。独り占めにしたいくらい、可愛いよ」

 私の心臓は跳ね上がった。

「孝宏君が、独り占めしてくれていいよ」

 そう言って、すごく恥ずかしいけど、そっと孝宏君に寄り添ってみた。

 ドキドキが止まらない。

「ありがとう」って言って、そっと身体に手を回してくれる孝宏君。

 同じ気持ちでいてくれているのが伝わってきて、嬉しい。




 それから私たちは準備運動を済ませると、波打ち際へと向かって歩き出した。

 照りつける夏の日差しが、浜辺の砂を熱し続けているおかげで、裸足の足裏が熱い。

 それを我慢しつつ歩いて、孝宏君と共に波打ち際にやってくると、波で濡れた砂は冷たくて心地よく感じられた。

「きゃっ、冷たい!」

「もうちょっと先まで行ってみようよ」

 孝宏君はそう言うと、私の手を引いたまま、腰まで水に浸かるあたりまで、ざぶざぶと海に入っていく。

「気持ちいい~!」

 またつい声をあげてしまった。

「ほんとだね」

 孝宏君も気持ち良さそうだ。

 冷たい水の中でも、孝宏君の手のぬくもりは、かすかに残ったままのように感じられる。

 それだけで幸せな気分になれた。

「手、つないだままでお願いね」

 孝宏君と少しの時間でも、離れていたくなくて。

「もちろん!」

 孝宏君は握る手に、少しだけ力をこめてくれた。




 それからしばらく、泳いだり、水を掛け合ったりして遊んだ後、私たちは浜辺へ戻って休憩することにした。

「ジュース買ってくるね。何がいい?」

 孝宏君がこちらを向いて聞く。

「一緒に行きたい」

「でも、疲れてない?」

「大丈夫。離れ離れになりたくない」

 孝宏君はちょっと恥ずかしそうに、「それは僕も一緒」と言ってくれた。

「じゃあ、一緒に行こう」

 そう言って立ち上がると、手を差し出してくれる孝宏君。

 私はその手を夢中で握った。




 ジュースを買ってきて、二人座って飲んだ後は、のんびりおしゃべりをした。

 いつしか太陽は雲に隠れていたので、少し涼しくなった気がする。

「じゃあ、また海に入ってみる?」

 孝宏君の言葉に、すぐに私は賛成し、二人で海へと再び向かった。




「いつの間にか、もう四時を回ってるんだね」

 水に入ってしばらく遊んでいたら、孝宏君が遠くを見て言った。

 視線の先には、街灯のようなものに取り付けられた時計がある。

 孝宏君の言う通り、時計は四時五分を指していた。


「じゃあ、そろそろ帰り支度をしよっか」

 心なしか、寂しげな様子で言う孝宏君。

 私も寂しい……。

 もっとここで遊んでいたいのに。

 でも、雪乃さんとの花火の約束や、夕飯のことを思い出し、我慢することに。

「そうだね。また連れてきてね」

「うん、もちろん」

 そして私たちは、少し離れた場所にあるシャワーを浴び、簡易更衣室にて着替えてから、海を後にした。


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