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恋架け橋で約束を  作者: 桜坂ゆかり
第三章 七月三日
16/45

帰り道

 帰り道、孝宏君が色々な目印を私に教えてくれた。

 私が一人でそれをたどって、あの秘密の場所へ行くことなんてないんだけど、なんだかこういう目印すらも、私たち二人だけの秘密みたいで楽しかった。




 しばらく歩いていると、突然、私はクモの巣に身体を引っ掛けちゃったみたいだった。

「きゃっ、クモの巣っ!」

 肩から上に、かすかにくすぐられているような不快感を感じる。

「大丈夫?」

 駆け寄ってくれる孝宏君。

 その時―――。


 何気なく視線を左に移したところ、左肩の上に大きなクモが乗っていることに気づいた!

 足が長く、身体の色は、黄色と黒の縞模様だ。

「きゃーーー!!!」

 思わず声を上げる。

 私は、虫が大の苦手なのだ。

 昨日から、虫を見るたびに、この上ない不快感を感じていたことから、気づいた事実だった。

 落ち着いた様子で、クモを払い落としてくれる孝宏君。

 はぁ……よかった。

「ありがとう、孝宏君!」


 そのときハッと我に返ると、私は無意識のうちに、孝宏君にぎゅっと抱きついていたみたいだった。


「も、もう大丈夫だよ」

 優しく言ってくれる孝宏君の声は、心なしか小さく感じられた。

 私は、急いで孝宏君から身体を離す。

「ごめんね……。虫がすごく苦手で、つい気がついたら……」

 恥ずかしさと申し訳なさで、孝宏君の顔をまともに見れなかった。

 顔がものすごく熱い。

 孝宏君も少し照れているような様子だった。

 でも、嫌がられているような様子ではないようなので、思わずホッとする私。

「ううん、気にしないでね。それじゃ、気を取り直して帰ろっか。また何かあったらすぐに教えてね」

 孝宏君は私にそう言うと、再び道案内を再開してくれた。




 それから先は特に何事もなく、スムーズに進むことができた。

「やっと神社が見えてきたね」

 孝宏君の言葉を受け、私は前方に目を凝らす。

 なるほど、たしかに、寒蝉神社の鳥居がかすかに見える。

「遠くまで連れ出してごめんね。お疲れ様」

「いえいえ、とんでもないです。すごく楽しかったです! 帰り道、目印まで教えてもらえたことも、とっても嬉しいです。また、連れてってくださいね」

「喜んでもらえて、よかったよ」

 孝宏君の笑顔がまぶしかった。




「たくさん歩いて疲れたよね? モールでおやつでも食べながら、一休みしないかな?」

 街中まちなかに出ると、孝宏君が言った。

「賛成です!」

 そんなに、どっと疲れたわけじゃなかったけど、おやつは欲しい。

 合計すると、多分三時間以上は歩いている計算になるはずだけど、不思議とそれほど疲れはなかった。

 元々、私が体力あるほうなのか、はたまた、大好きな孝宏君と一緒にいるってことで疲れを感じなかったのか。

 ともかく、私たちはまっすぐ、ショッピングモールへと向かうことにした。




 モールにあるオープンカフェの椅子に着くと、アイスクリームを買いにいってくれた孝宏君。

「お待たせ」

「ありがとう!」

 帰ってきた孝宏君からアイスを受け取って、一緒に食べる。

 生き返る気分だ。

 爽やかなバニラの風味が口いっぱいに広がった。


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