第97話 遠路はるばる
このままではセレス達は銀狼族を救えない可能性がある、と言う未来を視てしまったベルフォリスだったが、以前のベルフォリスとは違って、すぐにいつもの顔色を取り戻した。
「こんな寂れた書架でウジウジしていても仕方が無い。僕が視た未来を変えられるのは僕らだけなんだ!」
そう言って、目の前のテーブルの上に並べたカードをかき集めた。
「で、どうするのじゃ?儂らだけで先にルキソミュフィアに乗り込もうと言っておったが、天空図書館行きのメンバーと違って、儂らには迅速に行動出来る足が無いのじゃぞ?」
これからルキソミュフィアに行くと言っても、ルキソミュフィアは気軽な気持ちで出かけられる距離感では無く、この蒼壁の大陸の南の端にあるメルヴィ・メルヴィレッジからは北の果てに位置するルキソミュフィアなので、それはそれは遠路はるばる地道に移動しなければならなかった。
「忘れてませんか?この書架には奥の手がある事を。」
どうやって北の果ての国に行こうかと思考していたレオルステイルに、ベルフォリスがニコニコしながら話しかけた。
「奥の手?・・・・・・・・・・あ!」
「そうですよ、レオルさんも散々使ったアレです!」
散々使ったアレ・・・ソラ・ルデ・ビアスが作った、遠方へも一瞬で行ける扉の事を、ついぞベルフォリスに言われるまですっかりと忘れていたレオルステイルだった。
「確かにアレなら一瞬・・・とまで行かぬとも、何枚かの扉をくぐれば何とか行けそうな気もするの。」
うんうんと、頷きながらレオルステイルは、今まで目にした扉の枚数と行き先を頭の中で符合させようとしていたが、
「いや待つのじゃ、儂は今までルキソミュフィアに行ったことが無いのでな、あの扉の中でルキソミュフィアに繋がっていそうなモノが分からんのじゃ・・・。」
と、途端に不安そうな面持ちになった。
「あーー、実は僕もなんですよね、ルキソミュフィアの話は散々聞かされていたモノの、実際にかの国に行った事が無いんすよね・・・・。」
残念そうにため息をつきながらベルフォリスは、がっくりと肩を落とした。
とは言っても、現時点で既に急を要する状況になっている事は確かなので、地道に自分たちの力だけでルキソミュフィアを目指したとしても3日程度は確実にかかる距離を、数時間~1日以内で到着しようとするなら、何枚の扉をくぐるのかは分からないけど、一か八かの勝負に賭けてみようと2人の意思は固まった。
「もう、打つ手は無い。もしかすると何か他の手もあるかも知れんが、今目の前にある可能性だけを信じて向かってみるとしようかの!」
「ですね~。僕も腹をくくりました。」
レオルステイルとベルフォリスは、座っていた椅子から立ち上がると、書架の出入り口に厳重な戸締りと結界の魔法を施した。そして、2階に上がり、書棚の奥にある扉が並んだいつもの間に着いた。
「この青いのが赤い月に行くやつで?」
「この、オレンジ色の扉は、ソルフゲイルの北部ルキソミュフィアからは南西部に当たる、水竜族の住まう『ナタカテ・メソティラウム』に繋がっているのじゃ。儂は昔行って、ちょっと面倒臭かった記憶がある。」
ベルフォリスは、まだ行った事の無い国の名を聞いて少し心が躍るような感覚を感じたが、今はそんな状況ではないと心を現実に引き戻すため、首をブンブンと横に振った。
「近そうで遠いな~。レオルさん、その時この出入り口の扉意義の扉は見ませんでしたか?」
ルキソミュフィアと微妙に近いかも知れないと、近くの壁に貼ってある蒼壁の大陸の地図を見ながらレオルステイルに問いかけた。
「うーーーむ、今から結構昔の事じゃからの~。あ!ああ~、多分無かったの、この行って帰って来るだけの扉しか無かったと思う。」
レオルステイルの回答に、ベルフォリスは意気消沈するっも無く別の扉を指差したが、
「その扉はイカンぞ。ソルフゲイルに繋がっている筈じゃ。いきなり敵国に押し入るのはかなり不利じゃぞ?」
まさかの、書架の中に敵国に行ける扉がある事実を知ったベルフォリスは、今かなり自分が戦慄している事に驚いた。
「このソルフゲイルはの、トトアトエ・テルニアに攻め込んでくる前までは割と交流があった国なのじゃよ。かつては友好的な国じゃったのだが・・・何がどうなってあんなに好戦的な国になってしまったのか、どこかの機会でソルフゲイルの民に問いかけてみたいぞよ。」
と言ってレオルステイルは、その扉を悲しそうに見つめた。
となると、結局残されたのは赤い月に行くと言う青い扉になる訳だが・・・・。
「レオルさん、とりあえず赤い月に行って、それから考えよう。天空図書館メンバーも赤い月から更に移動して図書館に行った?のだろうし。」
「じゃな。赤い月にはまた別の扉の間もあっての、そこからまた各地に行けるようになっていた筈じゃ。」
レオルステイルの言葉を聞くと、ベルフォリスは赤い月行きの扉を開いた。
そして、2人は扉の奥の空間に吸い込まれて行った。




