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圧力

「一々理由なんか覚えていませんよ!彼の父親か彼か知りませんが、どうしたって言うんですか」


「一馬君のお父さんは、近々で三回、あなたに会いに来ている。一馬君が受けた虐めの補償のためにだ。示談ですまなければ、裁判をすると言われた。そうですよね」


 川野は焦りから顔色が黒くなり、表情が歪み始めた。


「じゃあ、その橋本って男を連れてきなさいよ。その人が何か証言したんですか?どうせ来られないでしょ」


「なぜ橋本さんが来られないと思うのですか?」


「それは……そんな事より、その橋本って男が犯人なんでしょ。子供達をつけ狙って、事故を起こしたんだ。状況からそうとしか思えない」


「『そんな事』、で済まさないでもらいたいな」


 大野は、相手が何気なく言ったひと言を決して逃さない。


「橋本さんが子供達を跳ねた証拠は、何もないんですよ」


「とにかく今日はお帰りください。私はね、この後も仕事なんだ!あまり邪魔するようなら、こちらにも考えがある!」


 二人はコートを出て覆面パトカーに戻った。


「大野さん。橋本さんを襲ったのは川野でしょうか。あるいは、奴の意を汲んだ人間か」


「川野が出馬予定の3区は、長い間与党が選挙区で当選できていない地域なんだ。表向きクリーンな川野で取り返したい、ということだろう。わざわざ川野が手を染めるとは思えんな」


 コートの駐車場からBMWが勢いよく飛び出してきた。小林が覆面パトカーをスタートさせる。


「後をつけてみよう」


 川野の車は紀尾井町のとあるレストランの前で止まった。傍らにセンチュリーが止まっている。


「ここは、国会も近いですね。もしかして大倉代議士と面会でしょうか」


「おそらくな。だとしたら、我々に圧力を入れるよう頼みに来たんだろう」


 案の定だった。翌朝課長が、与党選挙対策委員長から連絡があったことを明かした。川野候補は無実であり、過度な尋問は人権侵害であると警告を入れてきた。


「どうすれば良いんですか?」


 小林に不安の陰が浮かんだ。


「どうもしないよ。俺たちは俺たちの仕事をするだけだ」


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