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内情

大野は課長に声をかけ、会議室で臨時の捜査会議を開いた。まず黒田が報告する。


「チームは全国大会でベスト16に入る成績です。川野氏の評判についても悪くありません。若い頃に海外へサッカー留学したというバックボーンが効いているのか、今も子供を入会させたいという声は多いそうです」


「川野氏は他に慈善事業として、児童養護施設や老健施設の運営にも携わっています。一方で、マスコミや政財界との繋がりを積極的に求めてきた過去も見られます。与党の大倉代議士との写真がSNSでアップされています」


 片山が、件の画像をスマートフォンで見せた。また、大倉代議士のSNSにも度々川野が登場している。


「児童養護施設、老人福祉、クラブ運営で健全な精神…出来すぎている感はあるな」


 大野は内ポケットから取り出したチームのパンフレットを見ている。


「それと、気になる情報も複数ありました」


 黒田が続けた。


「チーム内では、虐めが恒常的に行われている事が確認されています。実際、それで辞めた子の保護者から話を伺いました」


「いじめ?」


 課長が眉をひそめる。


「実力によってクラス分けがされているそうなのですが、なかなか上達しない子が、上のクラスの子供たちから揶揄われたり、物を隠されたりという事が頻発しているそうです」


 片山が続ける形で手を挙げた。


「その状況を改善するように川野氏に何度も訴えたそうですが、全く取り合わなかったと。また、勝利至上主義で、相手チームの選手を負傷させてでも勝ちに行け、と。半ば洗脳の様な形で求めているそうです」


「大野さん、どうやら原因は」


 課長の言葉に大野が頷く。


「何が『健全な精神』だ」


 大野が指でパンフレットを弾いた。


 翌日、大野は虐めの証言をしてくれた保護者を訪ねるべく、片山に情報を聞いた。


「それなら、私も行きます。黒ちゃん、良いよね」


「俺と小林君で行くから良いよ」


「大野さん、普通の人は大野さんを見たら緊張しちゃいますよ」


 片山がいたずらっぽく笑うと、黒田と小林は笑いをこらえていた。


 予め片山が連絡した上で、三人で証言者の自宅に向かった。鈴江博人君という中学二年生の母親だ。

 

 自宅マンションのインターホンを鳴らし、三人は部屋へ入った。お茶とカステラが並べられた。



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