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事故の原因

交通捜査課 会議室


 大野は課長に持論を訴えた。 


「チームの内情か…」


「課長、サッカーチームに子どもを通わせている保護者から話を聞いてきたいと思うのですが」


 片山が手を挙げた。


「今回の害者は、前3件とは学校が違います。これが我々の目を逸らす為のカモフラージュでなければ、状況的にはチームを疑う方が自然です」


 大野の言葉に課長も納得した。


 翌日から黒田と片山は、周辺の学校やチームを知る保護者に話を聞いて回った。


 大野と小林は、チーム主宰者の川野の事務所として登記されている住所を訪ねた。三階建ての自社ビルで、一階にはアルファードとBMWが駐車されている。


「羽振りが良さそうですね」


 小林が皮肉っぽく話す。


「自社ビルに輸入車にミニバンか」


 大野は先日会った主宰者を思い出していた。自己顕示欲が強く、成功者を主張する身なりであったことを思わせた。組対に居た頃の経験で、雰囲気や格好から趣向を見抜く事は、大野にとっては難しくなかった。


 小林がインターホンを鳴らす。


[どうぞ、お入りください]


 電気式の鍵が外れる音がして、大野と小林は中へ入った。秘書らしき女性が応接室へ案内した。


 応接室には、川野の写真が額縁に入れられ、ところ狭しと飾られていた。サッカーのユニフォームを着ているものや、何らかの奉仕活動に携わったと思われるもの。大野はそれらを眺めていた。


 ドアが開く音がして、川野が入ってきた。イタリアの高級ブランドのスーツだ。大野はすぐに見抜いた。


「刑事さん、その後捜査の進展はありましたか?子供を預かる側として、重大な問題なんです。4件も…どうするんですか」


「鋭意、捜査を進めております。今日はぜひ、協力をいただきたくお話を伺いに来たのですが」


 大野が言うと、一瞬川野の顔が歪んだ。


「川野さん、あなたが使っているサッカーのコートは、日替わりで他チームも使っている。しかし、被害に遭っているのはあなたのチームの中学生だけです。何かお心あたりはありませんか」


 小林の質問に対して、川野は目を合わせず煙草に火をつけた。


「それではまるで、うちのチームか子供達に何か原因があると疑われている様ですね。不愉快です」


 煙草を持つ手が僅かに震えている。


「いやいや、御気分を害したら申し訳ない。我々、こういう仕事なんですよ。ただね川野さん、事件というものは、あらゆる可能性から当たる。これは鉄則なんです」


「存じ上げておりますよ。でも、私はもちろん、チームとしても何か問題があるとは考えていません」


 川野は苛ついた様子で煙草の火を消した。


「刑事さん、私たちは健全な精神を育み、他者への労りを大切にすることが第一です。ただ試合に勝てば良い、そんな考えを持たないように指導しています」


「これらのお写真は、お若い頃のご活躍ですか?」


 飾られている写真の話題に大野が切り替えた。川野が苦笑いをした。


「ずっとサッカーを続けてきましてね。20代の前半は、海外を放浪していましたよ。膝を壊して結局辞めましたが、プロが目標でしてね」


「それで、チームを主宰されたのですか」


 小林が聞く。


「私はね、社会に貢献したいと思っているんですよ。ですから、児童養護施設や老健施設を経営しています。チームの子どもたちも皆マナーを守り、本当に良い子ばかりです。警察の皆さんがしっかりしていただきませんと」


 大野と小林は署に戻り、川野の報告書の作成に取り掛かった。小林がパソコンを開く。大野が小林にコーヒーを持ってきた。


「なんか、胡散臭い奴でしたね」


「その感覚、大切にしておくと良いぞ」

 

 黒田と片山も戻ってきた。


「大野さん、色々分かりました。大野さんの話も聞かせてください」


「よし、じゃあ会議室に集まろう」


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