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第二部 サキュバスでなくなった私と推しの恋 三話 火花散らすティータイム ②

長いのでページを分けました。

「昴流くんと俺、何が違うのか分からないよ。俺の方が君をよく知っているし、ずっと長く一緒にいたんだよ。どうして、昴流くんがいいのかな? 確かに魔族のような魅惑的な雰囲気をしているけれどね」


初めて私をまっすぐに見詰めたカイル兄さんの目は金色に光っていて、夢魔族の純血種が使う魅惑の魔法を使っているのが分かった。…これじゃ逆らえない…!


「あー、見てられないから言わせてもらうとさ。あんた、愛し方を間違えたんだよ。美鈴は可愛いけど、それだけのお人形さんじゃない。けど、あんたの愛し方はまるで愛玩動物かお人形さんをそうするようで息苦しかったんじゃない?」


私の目を大きな手で塞いで、和希さんが用意していたように滑らかな口調で語った。


「和希さん…!?」


「見てれば分かるって。さっきからお人形さんかペットをそうするように大事にしてる。それくらい美鈴は分かりやすかったんでしょ」


思わず見上げた私の額に触れるだけのキスが落とされる。その仕草は優しくて繊細だ。和希さんはそれだけで私を癒してくれる。ありのままでいていいんだって思わせてくれて……


「大丈夫? 男の俺でもゾクゾクするような目をするじゃん。あれが本物の魔族の威圧ってやつ?」


「あれは魅惑の魔法。純血種の夢魔族しか使えない魔法なの。私もお母さんから聞いてただけだけど…」


「へ~ぇ、じゃあ、日向さんにとって美鈴は立派に魅了したい女だったってことか」


そんなことを話しながら頬を手で包む仕草は優しい。…カイル兄さんも優しかった。和希さんとは違う優しさで。


「けど、実際に見たのは初めて?」


その言葉にうなずくと、和希さんは初めてカイル兄さんをまっすぐに見詰めて、


「美鈴とは支えあって生きていければ、それでいいと俺は思ってる。どちらかが一方的にかわいがるような愛し方は間違ってる。それだけは言い切れる」


魔族にも負けない眼差しで見据えて言い切る。今なら、きっと…


「カイル兄さんのこと、大好きだったよ。どんどん成長していって、知らないうちにファッション誌の表紙を飾るようになったりして… それでも変わらないでいてくれて嬉しかった。でも、同じくらい息苦しかったよ」


和希さんの腕からそっと抜け出して、まっすぐに見詰めて言い切る。人生初の反抗かもしれない。きっと後悔する日が来るかもしれない。和希さんと生きていくって決めた。それで後悔したことなんて、一度もないから。


「どうして? 俺はありのままの君を愛する自信があるのに?」


そう言い切ったカイル兄さんはまるで取り残されたように寂しそうで、ひどく胸が痛んだ。それでも迷うわけにいかない。ここで迷ったら、私は一生後悔するから。


「カイル兄さんはいつも完璧だったの。いつ会っても完璧でいてくれた。それがカイル兄さんの愛情だったのかもしれない。けれど、私には息苦しかったよ。私はどう頑張っても完璧じゃいられないから」


「完璧でなくても、ありのまま可愛らしくしていてくれたらよかったのにね。いつのまに、そんなに素敵なレディになったんだい? 美鈴」


「きっと和希さんのおかげだよ。和希さんは完璧を目指しているわけじゃなくて、でも、いつも私のことを幸せにしようって努力してくれてる。私も同じくらい努力していきたいと思えるの。カイル兄さんにも、きっと現れるから」


そこで初めて私はカイル兄さんに向かって笑みを浮かべることができた。すると、そこで敗北を認めるように両手を上げると、


「俺にできないことはなかったからね。君の欠点を全て埋めてしまえば、愛してくれると思ったのになあ。恋愛というのもなかなかに趣深いものだね」


スッキリした顔で笑った。私の為だけの王子様みたいなのじゃなく、素顔のカイル兄さんがそこにいて。


「決めたよ。俺は昴流くんより先に俳優として頂点に立とうじゃないか。そうしたら、その時こそ君を貰いに行くよ。実家の財産を継いだことだし、モデルとして働いて、あとはのんびり生きていければそれでよかったけどね」


「へ~ぇ、いいんじゃないですか? 俺も負ける気はしないですけど、いきなりなんで?」


「俺は20年待ったんだよ。なのに、たった数日で横からかっさらわれるなんてね。ささやかな復讐というわけさ。これくらいはいいだろう」


物騒なことを言いながらもカイル兄さんが嫣然と笑う。和希さんは呆れ交じりに笑うだけで、もう何も言わなかった。


「藤の花の花言葉… 俺にも当てはまるかもしれないね」


「はいはい。奪い返されないように努力しますよ。日向さん」


二人は少し和やかだけれど、火花を散らしているようで。私はどうしたらいいのか分からなくて、少し冷めてしまったスコーンを食べ始めていた。

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