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第二部 サキュバスでなくなった私と推しの恋 三話 火花散らすティータイム ①

カイル兄さんとスーパーで再会してから一週間くらいした頃、私と和希さんはカイル兄さんに招待されて、彼の住むマンションにいた。一応の手土産に和希さんの作ったクッキーを持って。


「やあ、よく来てくれたね。美鈴… そちらは初めましてかな?」


出迎えてくれたカイル兄さんはシンプルなベージュのスラックスに白いシャツなんだけど、それだけでも十分に華やかに見える。和希さんはそれを見越したわけじゃないんだろうけど、今日も黒を基調にした個性的な格好だ。


「どうも。昴流和希といいます。美鈴の彼氏です」


「お噂は聞いているよ。なかなか華やかに活躍しているそうじゃないか」


カイル兄さんも和希さんも笑顔だけど、火花散って見える。当たり前なのかもしれない。だって、カイル兄さんは私を取り戻したくて、和希さんは奪われたくないんだから。


「まあ、そこそこね。そちらこそ俳優でもどうか?って言われているらしいじゃないですか」


「あっはは! そんなところにまで伝わっているとはねえ。順調に外堀を埋められているみたいでいやだなあ。逃げられないじゃないか」


二人ともどこか一線を引いた感じがして、怖い。

仲良くするのは無理がありそう。けれど、今日はそこを問題にしてきたんじゃないんだよね。今日はカイル兄さんに私の気持ちを伝えるのと、もう一つ言いたいことがあるから来たんだ。


決意して顔を上げた途端、耳元でシャラリとかすかな音がする。今朝、和希さんは渡しそびれていたんだとプレゼントしてくれたピアスだ。藤の花をモチーフにしたピアスで、花言葉は決して離れないで。


私と和希さんの気持ちを表しているんだと思うと、嬉しくて勇気をくれた。和希さんからの素敵なお守りだ。


「さあ、玄関先というのも狭苦しいし、リビングへどうぞ。具合よくスコーンが焼ける頃だから、座って待っておいで」


案内された先に待っていたのは3DKの立派なマンションで、思わず見渡してしまう。カイル兄さんの雰囲気にぴったりの白を基調にしたコーディネートがされている。そんな中で液晶テレビだけ黒いのがひどく目立つくらいだ。


「無駄に広いな…! モデルってそんな儲かるっけ?」


「すごいね。家族で住めるくらい広い…!」


「あははっ、まあ将来を見越したんだよ。さあ、昨日から仕込んでおいたんだ。楽しんでおくれ。美鈴」


そう言いながらテーブルの上に立派なティースタンドを二つ並べて置いた。一番下の段にはきゅうりの小さなサンドイッチ、真ん中は焼き立てスコーンとラズベリーのジャムにクロテッドクリーム、一番上はイチゴタルトとチーズケーキが奇麗に盛り付けられていた。


「俺はこれだけあればいいからね。夢魔族の純血種は沢山の食べ物を必要としないんだ。二人で残さず食べてくれて構わないよ」


そう言いながら自分の前にスコーンとラズベリージャムを置いた。ガラスのティーポットとカップを三人分用意したら、本格的なアフタヌーンティーの始まりだ。


「ありがとう。カイル兄さん」


どこまでマナーを知っているんだろう。和希さんは一番下のサンドイッチから取り分けてくれた。促されて食べてみる。上質のバターを使ってあって、きゅうりの青臭さもきれいに取り除いてあって、素直においしいと思えた。


「美味しいよ。カイル兄さん」


「それはなにより。君の為に努力するには楽しかったよ。知っているだろう?」


「知ってる。いつもお姫様みたいに大事にしてくれた」


思い出すのは初めて出会った頃のこと。私の家に来た時のカイル兄さんは今思うと小さいんだけれど、4歳の私にはとっても背が高くて素敵な王子様のように見えた。…憧れを抱いた瞬間だった。


「そうだよ。君のための俺でいるのは楽しかったよ。食事の作法やアフタヌーンティーのマナーを教えたのも俺だった」


いつも完璧で素敵なカイル兄さんの来る日を待つのは楽しかった。けれど… どこかでプレッシャーを感じてもいた。私がメイクを覚えようと思ったのも、カイル兄さんに恥ずかしい思いをさせないためだったし。


美しい人は自分をそうと思わないんだろう。いつも自然体でいられるカイル兄さん。自然体でも大人から特別扱いされている夢魔族の純血種。そんなすごい人がどうして私みたいな混ざりものを選んだのかが分からない。けれど…


「ところで… その藤の花は昴流くんが?」


きっと追求したくてたまらなかったんだろう。唇に笑みを浮かべたまま、少しだけ睨むような仕草で和希さんを見つめて問いかける。それは初めて見る顔で怖さと緊張で胸がドキドキしてしまう。


「花言葉が決して離れない… しつこい男は嫌われてしまうよ。昴流くん」


「まあ、そうですけどね。俺は選ばれた側なんで多くは語りませんよ。日向さん」


そう言いながらも私の肩に腕を回して抱き寄せてくれる。和希さんにも私の緊張が伝わったのかもしれない。それでも言わないといけない。大事にしてくれていたカイル兄さん、今でも尊敬している人… でも、異性としてじゃないから。


「夢魔族は数を減らしている。そんな中で君こそふさわしいと待っていたんだけれどね。その為に俺は20年待っていたんだよ。美鈴」


「…ごめんなさい。カイル兄さんの気持ち、私には分からない。だって、私には今でも大事なお兄さんだし、人間になってでも一緒に生きていたいと思ったのは和希さんだし」


「美鈴… 俺は君を大事にしてきたのにね」


そう言うと、少し切なそうな様子で深くため息をつく。切ないと言うより、深すぎる怒りを堪えているみたいだ。それはそうかもしれない。だって、初めて私は反抗しているんだもの。ずっと言いなりだったのに。

お待たせしました( ^^) _旦~~ 本当に申し訳ございません。

大スランプに陥っていました。けど、どうにか立ち直れてよかったです。

楽しんでくだされば幸い。感想くださればもっと幸いです。

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