表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
うずめちゃんの神様days!  作者: 青星明良
第3巻 三大女神 地球最大の対決!?
49/67

11 猿田彦と佐田彦

「なるほど。あの大きな爆発はウカちゃんがやったのですね」


「はい。瓦礫がれきの下に埋まっていた増田敬太郎さんや神使の狛犬ちゃんたちは何とか救い出し、高天原病院に運んだのですが……」


「サルタヒコが連れ去られてしまった、というわけですか」


「わたしがついていながら、申し訳ありません……」


「トヨちゃんはぜんぜん悪くないんだから、気にしなくていいのですよ。……悪いのは、わたしの不出来な弟の不出来な不良娘なんですからね」


 アマテラス様は怒気のふくんだ声でそう言うと、氷のうを頭に当てた。すると、ぷしゅう~と湯気が出て、袋の中の氷は全てお湯になった。太陽神のアマテラス様は本気で怒ると、体からものすごい高熱を発するのだ。


 ウカちゃんによる高天原警察署爆破事件から一時間後。

 わたしたちはアマテラス様の御殿ごてんで事件のあらましを報告していた(といっても、トヨちゃん一人がほとんどしてくれたけれど)。


 御殿の大広間には、アマテラス様、トヨちゃん、わたし、タヂカラオ、オモイカネたち神様が集まっていた。半蔵たち神使は、わたしの命令で、高天原病院に入院した増田敬太郎さんとアメノイワトに付き添っている。


「……ウカちゃんは卑怯よ。わたしをやっつけたいのなら、正々堂々とわたしにぶつかってくればいいじゃない。なんで、猿田くんを人質にするのよ」


 アマテラス様がめいの暴挙に怒る一方で、わたしもイライラしながらそう呟いた。


「それは……サルタヒコをエサにして、自分にとって有利な場所にうずめをおびきよせようという魂胆なのだろう。デパートは、商売繁盛の神として稲荷神社をまつっているところが多いからな」


 冷静にウカちゃんの作戦を分析したのは、アマテラス様の秘書をつとめる知恵の神オモイカネだ。


 そういえば、猿田くんから教わったことがあったよ。わたしたち神様は自分が祀られている土地で大きな力を発揮することができる……って。


「……あと、サルタヒコはウカ様やミヤっちと共に祀られている稲荷大神五柱の一人だからな。主祭神であるウカ様としては、仲間の神を手元に置いておきたいのかも知れない」


「そっか、猿田くんは稲荷大神五柱の一人…………え!? さ、猿田くんがウカちゃんの仲間の神様ですってぇ~!?」


 わたしは驚きのあまり、オモイカネの肩を揺すって「いきなり何ワケワカメなことを言ってんのよ、オモイカネ!!」と怒鳴っていた。


「や、やめんか、馬鹿者! つばを飛ばすな!」


「だって! 猿田くんはわたしと一緒に祀られている神様なんでしょ!? なんでそんな浮気をするのよぉー! わ……わたしというものがありながら……。許せなーい!!」


「く、首を絞めるな! 首を……ぎえぇぇぇぇ!!」


 オモイカネがわたしに締め落とされる直前、タヂカラオが自慢の怪力でわたしをオモイカネから引っ剥がし、「落ち着けよぉ、うずめぇ~」と言った。


「説明求ム! 説明求ム! わたしが納得のいく説明求ム!」


「げほっ、ごほっ……。し、神聖なるアマテラス様の御殿で騒ぐな。深呼吸して心を落ち着かせろ」


「……すーはー、すーはー……」


 わたしが深呼吸をして少し落ち着いたのを確認すると、オモイカネはコホンと咳払いをして説明を始めた。


「われわれ神は、様々な利益りやくを人間たちから求められる。それはサルタヒコも例外ではない。あいつは導きの神だが、田んぼの神として信仰する者たちもいる。それで、人間たちは穀物神のウカ様と結びつけたのだろう。サルタヒコが伏見稲荷神社で佐田彦さたひこという名前で祀られているのは、そういった事情があるのだ」


「へ? サタヒコ? サルタヒコじゃなくって?」


「うむ。ウカ様が『サぁータヒコ、サぁータヒコ』と呼ぶものだから、いつの間にか人間たちにもそれがうつって、稲荷神社ではあいつのことをサタヒコと呼ぶようになった。そして、まるで別の神のような扱いを受けるようになったのだ」


 そ、そんな理由で……。もっと深い理由があるのかと思っていたよ……。


「何か納得がいくようないかないような理由だけど、ウカちゃんが『サぁータヒコはチーム稲荷大神の一員』と言っていたのはそういうことだったのね。

 ……でも、そういうことなら、ウカちゃんに挑まれた勝負、ますます逃げるわけにはいかないよ。わたしが逃げたら、猿田くんがウカちゃんの子守役Bになっちゃう。そうしたら、きっと子守役Aのミヤっちと……」


 わたしは嫌な想像をしてしまい、唇をギュッと噛んだ。


 ミヤっちはわたしそっくりだもん。猿田くんがいくら「うずめ、うずめ」とわたし一筋に見えても、不安になっちゃうよ。わたしと瓜二つで、わたりよりもおしとやかそうな女の子がそばにいたら、猿田くんだって……。


「うずめ。もう少し、伴侶のことを信じたらどうです? 記憶を失う前のあなたなら、これぐらいのことでサルタヒコの心を疑ったりはしなかったと思いますよ?」


 わたしがうつむいて黙りこんでいると、アマテラス様が小さな子を諭すような穏やかな声でそう言った。


「あ、アマテラス様……」


「二千年間も黄泉の国にいて心変わりしなかった彼が、他の女神にうつつをぬかすはずがないでしょう? ……あなたのことが好きすぎてストーカーをこじらせてしまうぐらいなのですからね」


 ウフフとアマテラス様が笑い、わたしもつられて微笑んだ。少しだけ、心のモヤモヤしたものが取れたような気がする。


「ありがとうございます、アマテラス様。猿田くんを信じて……でも全力で、猿田くんを取り戻してきます」


「その意気です。辛いことも悲しいことも笑いの花々に変えるのが女神アメノウズメなのですから、ネガティブ思考は似合いませんよ」


 アマテラス様はウィンクをしながら、ぐっ! とサムズアップした。


「……しかし、稲荷神社の神々にとって有利な場所で戦うのだから、無計画で勝負を挑むのは危険すぎる。こちらも、策を講じるとしよう」


 知恵の神オモイカネが何か思いついたらしく、腕組みをしながらそう言った。


「オレにも策があるぜ。ウカ様たちをデパートごと爆破するんだ」


「そんなことをしたら人間たちも吹っ飛ぶではないか。脳みそ筋肉は黙っていろ」


 高天原警察署を爆破したウカちゃんと同レベルのアホ発言をしたタヂカラオを一蹴して、オモイカネは作戦をアマテラス様に言上した。


「ウカ様が今回のような暴挙に走ったのは、父親のスサノオ様がうずめを三人目の妻にすると言い出したのが事の発端です。ならば、スサノオ様にこれ以上妻をめとることをあきらめさせれば、事は丸く収まるでしょう」


「あのわがままなスサノオが簡単にあきらめますかね?」


「スサノオ様を説得できる神が一人だけいます。彼に頼みましょう。その神というのは……ごにょごにょ」


「あ~、なるへそ。彼ならきっと……」


 何やらひそひそ話をするアマテラス様とオモイカネ。……あの暴れん坊のスサノオ様を説得なんかできる神様がいるの? ええ~、誰か気になる~!


「アマテラス様。スサノオ様を説得できる神様って誰ですか?」


「人間界でも有名な神だからうずめも知っていると思いますが……それは彼が登場した時のお楽しみです☆」


 悪戯っぽく笑ってそう言うアマテラス様。

 いやいや、秘密にする意味が分からない。そういう「事件の真犯人はCMの後で判明します!」みたいな演出はいらないから。こんなところで遊び心を発揮されても……。


「ただ、その神はかなり多忙であちこち飛び回っているので、連絡してもすぐにうずめの街に駆けつけられないかも知れません。何とか日曜日の午後には間に合うようにこちらも努力しますが、それまでの間にチーム稲荷大神にやられないようにがんばってください」


「りょーかい、です」


「……では、大事な勝負の前なのでコヤネ(天児屋命あめのこやねのみこと)とフトダマ(布刀玉命ふとだまのみこと)に吉凶を占ってもらいましょう」


 コヤネとフトダマの占い? あの、いっつも占いの意見が対立している二人か……。


「いや、別に占いは……」


 わたしがやんわりと断ろうとした時、後ろから「吉です!」「凶です!」という二つの声が同時に聞こえてきた。


 振り向くと、コヤネとフトダマがいて、両者は「ぐぬぬぬ~」と睨み合っていた。


「なぜ吉なのだ、フトダマ! オレの占いでは凶と出たぞ!?」


「お前こそ、なぜいつもいつもわたしと真逆の占いの結果を出すんだ!? 今回は、わたしの娘がウカ様の悪だくみに利用されているから、うずめに娘を救ってもらいたくて吉にしたというのに!」


「それ、占いじゃなくてお前の願望だろ!? 占いに私情をはさむなよ!」


「お、お前だって、『アイドルグループAKR48のライブチケットが当たるか否か』なんていうくだらんことを占っているくせに!」


「あー! あー! 普通、みんなの前でそれを言っちゃう~!? オレがアイドルオタクだという秘密は、親友のお前にしか言っていなかったのにぃ~!!」


「ちょっと待って! ちょっと待って! 二人ともストーーーップ!!」


 フトダマがさらりと聞き捨てならないことを言ったような気がして、わたしは慌てて二人の間に割って入った。


「今さっき、なんて言った? わたしの娘がウカ様の悪だくみに利用されている!? ……も、もしかして、フトダマの娘って……」


「ミヤっちですよ」


 トヨちゃんがそう言うと、フトダマは「いかにも、わたしはオオミヤノメの父親だ」と肯定した。


「わたしの娘は、昔からサルタヒコに片想いをしていてな。あんな変人天狗のどこがいいのかさっぱり分からんが……」


「…………」


 普通そんなことをわたし(奥さん)の前で言う? 大事な話の途中だからツッコミは入れないけれどさぁ……。


「ウカ様は、『うずめを消しさえすれば、サぁータヒコはチーム稲荷大神の一員として、ずっとミヤっちのそばにいるはずじゃ』などとわたしの娘に吹きこんで、うずめ暗殺の片棒を担がせようとしているみたいなのだ。……わたしの娘は気弱で優しい性格だから、今のところは『そんなことはとてもできません』と言って怯えているが……」


 なるほどねぇ、猿田くんへの恋心を利用されちゃっているわけね……。


「分かったよ、フトダマ。ミヤっちの恋は叶えさせてあげられないけれど……恋のために犯罪に手を染めてしまうような悲劇だけは起こさせないから。わたし、暗殺なんて絶対にされないし!」


「迷惑をかけてしまってすまないが、娘のことをよろしく頼む……」


 そう言って、フトダマはわたしに頭を下げた。



 ……やっぱり、ミヤっちは猿田くんのことが好きだったんだ。

 ごめんね、ミヤっち。猿田くんは……猿田くんだけは渡せないの。







<雑談コーナー:うずめ×作者>


作者

「ちなみに、この小説では『猿田彦=佐田彦』説を採用したけれど、他にも『アメノウズメ(うずめ)=オオミヤノメ(ミヤっち)』説があったりします」


うずめ

「この物語では人間たちが『うずめ=ミヤっち』だと勘違いしているということになっているけれど……。本当にあったのね、その説……」


作者

「ちなみに、稲荷大神五柱の残りの神様たち――田中大神たなかのおおかみ四大神しのおおかみも諸説あってややこしいです。特に四大神は、『一柱の神様の名前』説や『四柱の神様が集まった名前』説、『四季の神様』説など、諸説紛々《しょせつふんぷん》です。……こんなにも説があるとキャラが固まらない!!」


うずめ

「あ~……。だから作中に登場させてないんだ」


作者

「いちおう後のエピソードで名前だけは登場させる予定だけれど、本人たちが今後のシリーズで出るかは未定ですな……」


うずめ

「それは心配しなくても大丈夫。続編があるかも未定だからね!」


作者

「…………(>_<)」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ