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うずめちゃんの神様days!  作者: 青星明良
第3巻 三大女神 地球最大の対決!?
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4 狐耳女神の襲撃!!

 その日の帰り道。わたしと猿田くんは、肩を並べて、夕暮れの中を歩いていた。


「わざわざ、部活が終わるまで待っていてくれなくてもよかったのに」


「愛する妻がストーカー被害に悩まされているのに、放っておけるものか」


 猿田くんは、力強く勇ましい声でそう言った。男の子に大切にしてもらえるのは、女の子としては悪い気はしないし、正直うれしい。


「ありがとう、猿田くん。でも、夜中にわたしの寝室に忍びこむのはやめてね? それも立派な犯罪だから」


「夫婦なのに……ブツブツ」


 ……こいつ、まだ懲りてないな? わたしはジト目で猿田くんをにらんだ。


「……し、しかし、神が犯人だと思われるそのストーカーは、いったい何が目的なのだろうな」


 猿田くんは、わたしの視線におびえながら、話題を微妙にずらす。


「やっぱり、うずめが可愛すぎるから自分の妻にしようと狙っているのだろうか。オレという夫がいるのに、許せん……」


「目的は何であれ、襲いかかってきたら撃退するだけだよ。まあ、こそこそと付け回すことしかできない臆病者にそんなことはできないでしょーけど」


 わたしはわざと大きめの声でそう言った。


 ……実は、少し前から背中に視線を感じているのよ。このなめまわすような視線は、きっとストーカーだわ。あと、


『うずめめぇ~……ふぅー……ふぅー……』


『はぁ……はぁ……サルタヒコ様ぁ……』


 なんて気味の悪い声まで聞こえてきたし……。


「それにしても、神様のくせにストーカー行為をするなんて、どこの低俗な神様かしらねぇ~! あーあ、同じ神として恥ずかしいなぁ~!」


「……うずめ? もしかして、後ろに……いるのか?」


 猿田くんも気がついたらしく、小声でわたしに言う。わたしは小さくコクリと頷いた。……挑発して、襲いかからせてやる!


「本当だなぁ、尾行なんて最低だ! 神としてあるまじき行為! アマテラス様に報告して処罰してもらおう!」


 わたしの意図を察し、猿田くんも大きな声で挑発を始めた。自分のストーカー行為を棚に上げていることに関しては、今は目をぶつっておいてあげよう。


「ぐ……ぐぬぬ……。す、好き勝手に言いおってぇ~……」


「お、落ち着いてください。今はそばにサルタヒコ様がいらっしゃいますし、荒事におよぶのはやめましょう」


「嫌じゃ! あれだけ馬鹿にされて、大人しくしていられるか! とちゅげきじゃ、とちゅげきぃ~!」


 うしろの電柱の陰から、何やらもめているような声が。……もしかして、ストーカーは一人じゃない?


「ああ……。それにしても、サルタヒコ様は少年の姿になっても凛々しくて素敵です……」


「何をボーっとしておる、ミヤっち! とちゅげきだと言っているではないか! 前に進め! 全力ぜんちんじゃ!」


「あひぃん! 髪を引っ張らないでください~!」


「とちゅげきぃ~!!」


 ……おっ、敵さんが来たな!


 わたしはバッと振り返り、いつでもかかと落としができるように臨戦態勢をとった。そして、相手をまっすぐにらみすえ――。


「ほ、ほげげ!? な、何なのよ、あいつ~!!」


「こいつ、化け物か!?」


 わたしと猿田君はほぼ同時に叫んでいた。


 わたしたちに向かって走って来る不審者は、複数人いるかと思ったら一人だった。鈴ちゃんが言っていた通り、黒い布で全身を覆っている。身長が高校生ぐらいに見えるけれど、か弱い女の子のように体が細くてひょろひょろだった。


 歩くたびに上半身がゆっさゆっさと大きく揺れ、足取りはものすごく不安定。ふらふらである。何度かつまずきそうになり、そのたびに上半身がありえないぐらいにぐにゃ~んと曲がった。


「う、うわわぁ~! 落っこちりゅぅ~!」


 舌足らずの幼い声が上半身から聞こえ、下半身からは「大丈夫ですか、ウカ様!?」という少女の声がした。


 な、なんで、上半身と下半身からそれぞれ別の声が聞こえてくるのよ……!


「い、いやぁ~! 上半身がうにょうにょ動いていて気持ち悪い~!」


 夕日を背景にして、ゾンビみたいなよろよろの足取りで迫ってくる謎の怪人!! 上半身は今にももげ落ちそう!!


 あまりにも気色悪くて、わたしは思わず猿田くんに抱きついていた。


「うほっ! こ、これが、あててんのよ、というやつなのか!!」


「喜んでる場合かっ!! あの気持ち悪いヤツ、何とかしてよ! あれも神様なの!?」


「よ、よく分からんが、あんまり強そうには見えない。オレ一人で何とかなりそうだ。うずめ、ちょっと下がっていなさい」


 猿田くんは、わたしをかばって前に出ると、「いでよ、導きの矛!」と叫んだ。


 ばばぁーっと無数の黒い羽が猿田くんの右手のまわりを飛び回り、その黒い羽の嵐が消えると、手には例の「導きの矛」が握られていた。


「貴様ごとき、このオレが高天原の都の警察署へ転送してやる! 導きの矛よ、このストーカーを正しき道へと更生《こうせい》させる施設に導け!!」


 導きの矛の穂先がピカーッと光り、虹色の光線が発射された。


 すごい! 導きの矛って、そういう使い方もできるんだ!


「フン! その程度の霊力、はね返してやる!!」


 ストーカーは上半身のふらふらを何とかおさえると、小さな両手を前にかざした。身長はわたしたち中学生よりも高いのに、手は幼児みたいに小さい。


 ……え? あの光線をはね返すつもりなの? そんな、まさか……。


「ぜっとーーーんーーーっ!!」


 う、うわわ!? ストーカーのヤツ、奇声とともに光線を本当にはね返しちゃったよ!!


「な、なんじゃとてーーーっ!?」


 はね返された虹色の光線は、真っ直ぐ猿田くんのもとへ飛んで行く! わたしは「猿田くん! 危ない!」と叫んだ。


「うずめ! オレから離れるんだ!!」


 猿田くんは鋭い声でそう言い、わたしを突き飛ばした。「きゃっ!?」と短い悲鳴を上げ、わたしは尻もちをつく。その直後――。


「う、うわぁーーーっ!!」


 猿田くんは、自分が放った光線を喰らい、虹色の光が猿田くんを包んだ!


「猿田くーーーん!!」


 わたしは必死になって呼びかけた。でも、その三秒後、猿田くんの姿はわたしの目の前からこつ然と消えていたのだった……。


「う……嘘でしょ!? 猿田くん、どこに行っちゃったの!?」


 わたしがパニックになっていると、ストーカー(の上半身)が幼い声で話しかけてきた。


「フン。そんなに慌てるな、あめのうじゅ……アメノウズメよ。サぁータヒコなら、本人が言っていた通り、体を遠くへ導かれて(・・・・)しまっただけじゃ。今頃は、高天原の警察ちょ……けい……けいちゃ……けいちゃつちょ……」


「警察署です、ウカ様」


「そう! 今頃は、そこにいるはずじゃ!」


 自分の下半身(少女の声)に言葉を訂正されているのに、得意げな声で言う上半身(幼女の声)。


「あ……あの。ごめんなさい、うずめさん。わ、わたしは、サルタヒコ様やうずめさんと争いたいわけでは……」


「気弱になるな、ミヤっち! サぁータヒコが当分戻って来れないすきに、うずめをやっちゅ……やっつけるのじゃ! そうしたら、サぁータヒコはミヤっちのものになるぞ!」


「さ、サルタヒコ様がわたしのものだなんて! あんなこともこんなこともしたい放題だなんて! そ、そんなのはしたないですぅー! あ、あばばばばば!!」


「か、体を揺らすな! また落っこちそうになりゅ!」


「言っている意味がほとんどワケワカメだけど……。あんたたち、いったい何者なの? いい加減、その黒い布を外して、正体を見せなさいよ」


 猿田くんが無事だと分かってだんだん冷静になってきたわたしは、黒ずくめの不審者をにらみすえながら言った。


 少し落ち着いて考えてみたら、どうということはない。あの黒い布の下には、二人の人物がいるに決まっている。きっと、体を大きく見せてわたしをビビらせるために、中学生ぐらいの身長の少女が幼女を肩車しているだけなんだわ。こんな幼稚な作戦を立てたのは、たぶん上半身(幼女)のほうだろうけれど。


「ふっふっふっ~。よかろう。臆病者とディスられて正体を隠していたら、稲荷大神の名が汚れてしまうからな。……聞いて驚け! わが名はあの有名な伏見稲荷神社の主祭神、うかの……」


 上半身(幼女の声)がそこまで言いかけた時、アクシデントが起きた。下半身(少女の声)が「も、もう疲れました……」と弱々しい声を出して、がくりと膝をついてしまったのだ。たぶん、肩車を長時間していて疲れてしまったのだろう。


「あっ、おい! ミヤっち! 今、わたくしがカッコよく名乗ろうとしているところなのじゃ! もうちょっとだけ耐えろ!」


「む、無理ですぅ~。わたし、体力が……」


 バターーーン!!


 とうとう、前のめりに倒れてしまった。


 肩車をしてもらっていた幼女は「ふぎゃー!!」とネコみたいに叫びながら吹っ飛び、わたしの足元に倒れた。幼女は巫女服を着ていて、キツネに関係がある神様なのか、頭には狐耳、お尻にはふさふさの尻尾がついている。


 一方、力尽きた少女の女神は、うつぶせになったままピクリとも動かない。完全にダウンしている。


「ええ~と……。二人ともたぶん神様みたいだし……とりあえず、高天原のアマテラス様に連絡しておいたほうがいいのかな?」


 わたしは、何もしないまま自滅してしまったストーカー(?)二人組を見下ろしながら、そう呟いた。


 でも、そこで警戒を解きかけたのは完全な油断だったようだ。


「ふはははは!! チュキあり!!」


 幼女は若干噛みながらそう叫んで身を起こすと、わたしに飛びかかって来た。その小さな右手に握られているのは、バチバチと電流が流れる――。


「す、スタンガン!?」








<雑談コーナー:うずめ×作者>


うずめ

「幼女がスタンガンを持っているなんて、危ないよこの小説!! なんでそんな物騒な物を持たせた! 言えーっ!」


作者

「幼女にスタンガンという組み合わせがすごいギャップがあっていいかなって。セーラー服と機関銃、みたいな」


うずめ

(ダメだ……この作者。早く何とかしないと……)

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