12 うずめVSスサノオ様!!
「おい、お前たち。オレを姉上に早く会わせろ」
スサノオ様は、天岩戸の前で仁王立ちしてわたしたち神々を待ち受けていた。
アマテラス様の火矢15000本ノック(?)のせいでアロハシャツはぼろぼろに燃えてしまい、ほとんどパンツ一丁というひどいありさまだったけれど、無駄にでかい態度は相変わらずでぜんぜん懲りていない様子である。
「うげげっ……。アマテラス様にあれだけフルボッコにされてもまだピンピンしているとは、さすがは荒ぶる神じゃ……」
イシコリドメが思いきり眉をしかめて、そうつぶやく。
そりゃぁ、八岐大蛇っていう化け物を退治したほどの強さなんだから、神様たちの中でも戦闘力(?)はずば抜けているよね。
でも、これだけの騒動を起こしておいて、このでかい態度はさすがにカチーンとくるよ。
「アマテラス様なら、スサノオ様のせいでそこの天岩戸に引きこもっていますよ」
わたしが前に進み出て、イライラしながらそう言うと、スサノオ様は傲岸な態度を崩さず、わたしたちにこう命令したのだ。
「ならば、早く姉上を天岩戸から出せ。オレは、姉上と再び会える日をずっと心待ちにしていたのだ。昔みたいに、姉上に頭をなでなでしてもらいたいのだ」
頭なでなでって、あんたいくつだよ。数千年も生きている荒ぶる神の言うことか。
こんなにも図体がでかくて、三国志や日本の戦国時代の武将みたいな勇ましい見た目をしているのに、これは相当な甘ったれだなぁ。
「スサノオ様に命令されなくても、アマテラス様は天岩戸から引っ張り出します。でも、残念ですが、今のスサノオ様をアマテラス様に会わせるわけにはいきません」
「それはどういう意味だ、うずめよ。オレに逆らうと、ただでは済まないぞ」
スサノオ様は、拳をベキボキと鳴らしながらわたしをそう脅した。さっきまで「姉上に頭なでなでされたい」とかぬかしていたくせに、ものすごい迫力だ。
「うずめ。あんまりスサノオ様を挑発しないほうがいいぜ」
タヂカラオがわたしをかばうようにスサノオ様の前に出ようとしたけれど、わたしは「だいじょうぶよ」と小声で言いながら、さらに一歩、スサノオ様に近づいた。
「どういう意味かですって? ふふ……。それはですねぇ、スサノオ様……」
わたしは不敵な笑みを浮かべながら、もう一歩、荒ぶる神に接近する。そして、急に愕然とした表情をつくって暗闇の空を指差した。
「ああーっ!! ブタが空を飛んでるぅーーーっ!」
「な、何ぃっ!?」
古典的なウソにだまされたスサノオ様が、そう叫んでわたしが指さす方向を見上げた。
その直後――。
「馬鹿が見るブタのケツぅぅぅーーーっ!!」
ズガァッ!!
わたしの渾身の力がこめられたお父さん直伝の延髄斬り(護身術)が、スサノオ様の後頭部をおそったのだ!
「ごぶがぁぁあ!!!」
さすがの荒ぶる神もぶっ倒れ、そのまま動かなくなった。
☆ ☆ ☆
「無念……。まさか、荒ぶる神であるオレが芸能の女神に倒されるとは……」
「そうやって相手を見下して慢心しているから不覚をとるんですよ、スサノオ様」
わたしは、縄でぐるぐる巻きになったスサノオ様を見下ろしながら言った。オモイカネ、タヂカラオ、イシコリドメたち八百万の神様もスサノオ様を囲んで、この荒ぶる神をにらんでいる。
「まったく……。神様が、暴力で相手をねじ伏せるようなマネをしようとするなんて、嘆かわしいかぎりですよ」
「いや、お前も暴力でオレをねじ伏せただろ……」
わたしはスサノオ様の抗議を無視し、「スサノオ様。あなたはもうちょっと反省してから、アマテラス様に会うべきです」と強い口調で言った。
「スサノオ様の気持ちも少しは分かります。スサノオ様は、生まれた時にお母さんのイザナミ様がそばにいなくて、わんわん泣いていてもお父さんのイザナギ様がそのさびしい気持ちを理解してあげずに叱っちゃったから、愛情不足になったんですよね。だから、こんな色々とめんどーな性格になってしまった……」
「だれがめんどーな性格だ!」
「スサノオ様は、お母さんやお姉さんに甘えたいという幼児性、あのほわわんとした性格のアマテラス様を激怒させるほど大暴れして仲間の神様のオオゲツヒメを殺してしまうような凶暴性、八岐大蛇を退治して人々を救うような英雄的性格……などなど、おそろしく矛盾した複数の性格を抱えています。つまり、成長しきっていない。あなたは数千年生きていても、まだまだ未熟なお子様なんです」
「お子様だと!? オレには妻も子もいる!」
「だーかーらー! そうやってムキになるところが子供なんだってば! いいですか? だれかの愛情が欲しい、優しくされたいと思うのなら、あなたも思いやりの心を持たなくちゃ! スサノオ様はアマテラス様に甘えることばかり考えていて、一度でもアマテラス様のお気持ちを考えてあげたことがありますか?」
「あ、姉上の気持ち……だと?」
スサノオ様は目を大きく見開き、そうつぶやくと、「ううーむ……」とうなって黙りこんでしまった。
「アマテラス様は、スサノオ様をパーティーでもてなすために一生懸命準備をしていたんです。弟と一緒にたらふくごちそうが食べたいとも言っていました。そして、そんな弟思いなアマテラス様に協力してくれていたのがトヨちゃんです。トヨちゃんは、スサノオ様をもてなすパーティーのために料理をたくさん作ろうと準備していたんですよ。それなのにスサノオ様は……そんなトヨちゃんをスポーツカーではねちゃって危険な目にあわせ、アマテラス様を悲しませたんです! あなたは、お二人の思いやりの心を踏みにじったんです! それで仲直りがしたいだなんて、虫がよすぎます!」
「う、うぐぐ……」
スサノオ様はようやく自分のあやまちに気づいたらしく、苦しげにうなり声を上げながらうつむいた。
「わたしと猿田くんをまつっている神社に、小さな男の子が毎日やって来て、お姉ちゃんのために必死にお祈りをしているんです。スサノオ様も、アマテラス様をわがままで振り回してばかりいないで、その男の子みたいにちょっとはお姉さんを大切にしたらどうなんですか? 一方的に甘えているだけじゃ、仲良し姉弟にはなれませんよ!」
わたしは、まるで小さな子供を叱るみたいにスサノオ様に言いたい放題まくしたてた。たとえ日本最高神の弟でも、間違ったことはちゃんと正してあげないとスサノオ様のためにならないのだ。遠慮は無用っ!!
「…………ほ、惚れた」
と、顔を上げたスサノオ様は一言ぽつりとそう言い、わたしをまぶしそうに見つめた。
惚れ…………へ?
「荒ぶる神であるオレを倒し、説教をするとは……なかなかいい女だな、アメノウズメよ。ますますオレの妻の一人にしたくなった」
「いや……いやいやいやいやいやいや……! 急になに言ってんの!?」
この荒ぶる神、本気!?
わたしには猿田くん……いや、あいつもまだ夫と認めたわけじゃないけれど、いちおうサルタヒコとアメノウズメは夫婦神っていうことになっているわけだし……。
わたしがそうやって顔を真っ赤にしながら慌てていると、
「うずめよ。お前のおかげで目が覚めたぞ。そうだな。オレは姉上の気持ちを考えていなかった。相手を思いやる気持ちがなかったら、心と心は真に結ばれないのだ。反省して出直して来よう。その時は、オレの求婚の答えを聞かせてくれ」
スサノオ様はそう言いながら、自分を縛っていた縄をブチブチブチー! とタヂカラオ様にも負けないような怪力で破り、自由の身になった。そして、
「姉上! 仲直りできる日を心待ちにしております!!」
と、天岩戸の洞窟に向かってそう叫び、大地を思いきりグーパンチで殴ったのだ。
ズゴゴゴゴーーーン!!
高天原の地面である薄桃色の雲に大きな穴が開き、スサノオ様はその穴へひらりと飛び降りた。
「八百万の神々たちよ! さらばだーーーーーーっ!!!」
「うぇぇ!? あの神様、天のはしごを使わずに雲の上から飛び降りちゃったよ!! 何もかも無茶苦茶だぁ~!!」
おどろいたわたしがそうわめくと、オモイカネが「はぁ……。まったく、相変わらず人騒がせなお方だったな……」とげんなりとした顔で言った。
スサノオ様……。できればもう二度と会いたくないなぁ……。
<雑談コーナー:うずめ×猿田>
うずめ
「そういえば、自分には妻も子もいるって言っていたけれど、スサノオ様の子供ってどんなのか想像できない……」
猿田
「けっこう有名な神様だぞ。伏見稲荷大社の主祭神であるウカノミタマ様がスサノオ様の娘だ」
うずめ
「え!? 京都の有名な観光地じゃん! ていうか、ウカ様ってちょい前にアニメ化された漫画に出てるよね!? たしか、いなりこんこん……」
猿田
「こら! うかつに他人様の作品を口にしたら怒られるぞ!」
うずめ
「果たして、ウカ様がこの作品に出演することはあるのかなぁ~」
猿田
「まあ、少なくともゲーマーでおっぱいがでかい女神様としては出てこないだろうな」




