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うずめちゃんの神様days!  作者: 青星明良
第2巻 日本最凶の姉弟ゲンカですよ、女神様!
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13 同じ手は二度も食わない!?

「それでは、第二次アマテラス様引っ張り出し作戦を開始しまーすっ!!」


 天岩戸の洞窟の前でわたしがそう言うと、八百万の神様たちは「おおーーー!」と元気よく返事をしてくれた。


 ただし、オモイカネだけは気難しそうな顔をして、何だか悩んでいるみたい。


「どうしたのよ、オモイカネ。何か問題でもあるの? 昔みたいに天岩戸の前でどんちゃん騒ぎして、アマテラス様を天岩戸から引っ張り出すだけでしょ?」


「それが……ニワトリの数が足りないのだ。このアマテラス様引っ張り出し作戦にはたくさんのニワトリが必要なのだが、近頃はアマテラス様にお仕えするニワトリの神使の数が減ってきてな。給料は少ないのに毎日残業は当たり前、そのくせ主人のアマテラス様は仕事をさぼっている。こんなブラックな仕事は嫌だとニワトリ業界ではウワサになってしまっているらしい」


 ニワトリ業界って、そんなのあるんかい!


「あと一羽でもいい……。ムダに元気があって馬鹿がつくほど声のでかいオスのニワトリがいてくれたら……」


 それって、うちの半蔵じゃん。どんぴしゃじゃん。


「だったら、わたしの神使を呼び出すよ。ちょっと待ってて」


 わたしはそう言うと、すーっと深呼吸をして、「いでよ、半蔵!」とさけんだ。


 神使たちは、自分が仕えている神様に「出てこい」と命令されると、遠く離れた場所にいても瞬間移動して神様のもとにかけつけることができるのだ。


「呼ばれて飛び出て、コケッコッコーーーっ!!」


 本当にムダにでかい声をあげながら、ポンッと半蔵が飛び出て来た。


 わたしのスカートの中から。


「ぎゃーーー!? あんた、何ちゅうところから出てくるのよぉーーー! あたしがニワトリ産んだみたいな絵面になったでしょーが!!」


「む、昔、うずめ様が『三回に一回ぐらいはユニークな出現の仕方しなさいよ』と言ったから、命令に従っているだけコケ~!」


「記憶を失う前のわたしはアホか!?」


「そ、そんなことより、いま葦原中国は大変なことになっているコケ! 邪神たちが街を闊歩かっぽして、あちこちで事故や事件が起きて……」


「うん、わかってる。わたしたち神々が何とかするから安心しなさい。……鈴ちゃんたちは無事?」


「はいコケ! みんな、神社に避難しているコケ! 将太くんも一緒コケ!」


 将太くん……。


 絶対に、お姉ちゃんと祭りで遊べるようにしてあげるからね!


「半蔵。アマテラス様を天岩戸から引っ張り出す儀式をやるの。あんたも協力しなさい」


「わかりましたコケ~! 半蔵もお役に立つコケ~!」


 半蔵がぴょんぴょん飛び跳ねながら返事をすると、オモイカネは眉をしかめて「本当にムダに元気なニワトリだな……」とつぶやいた。知恵の神様は騒々しいのが苦手らしい。


「うずめよ、お前もそろそろ舞を踊るために巫女装束を着てくれ」


「わかったわ。……衣装チェンジ! チアコス風巫女装束!」


 わたしは、猿田くんのマネをして一瞬で衣装を着替えてみようと考え、適当に右手を空にかざしてそう叫んだ。すると、


 ボンッ!


 という音とともに、わたしの周りで煙が立ち、煙が数秒で消えた時にはわたしはセーラー服からチアコス風の巫女服に早着がえしていたのである。


「やったー! 成功ーっ!」


 わたしは嬉々として笑いながらそう言うと、可愛い衣装を見せびらかすようにくるりと回転した。ミニスカートみたいに短く赤い袴がひらひらと風に揺れる。


 先月のヨモツコ騒動で、命をかけて「導きの神の力」を使おうとした猿田くんを励ますために、わたしはこのチアリーダーのコスチュームっぽい巫女装束でダンスを披露したのだ。それで、猿田くんも可愛いとほめてくれたし、あれからずっと部屋の洋服タンスに大切にしまっていたわけ。


「……うずめ。お前、本当にそんな破廉恥なかっこうで踊る気か?」


 オモイカネがあきれた顔をしながらそう聞いてきたけれど、わたしは首をかしげた。


「チアコスのどこが破廉恥なの? チアコスは可愛い! 可愛いは正義! つまり、可愛い女子中学生の女神様であるわたしは大正義!」


 わたしがふんぞり返ってそう宣言すると、オモイカネは胃のあたりをおさえて「もう、いい……」と言うのだった。


「まったく……。どいつもこいつも……」


 オモイカネはなおもブツブツと何か言っているみたいだったけれど、触らぬ神に祟りなしなので話しかけないことにした。




            ☆   ☆   ☆



 さて、いよいよアマテラス様引っ張り出し作戦の開始だ。


「それ! 常世とこよ長鳴鳥ながなきどりたちよ! 鳴け!」


 巨大な洞窟――天岩戸の前に集まった神々たちは、オモイカネの指揮のもと、半蔵やトブトリーナ2世らたくさんのニワトリたちを「コケーーー! コケーーー! コケーーー!」と尾を引いた長いながーい声で鳴かせた。


 その鳴き声は闇夜に響き渡り、朝はまだか、朝はまだかと急かしているようだ。このニワトリたちの声は、岩戸に隠れているアマテラス様の耳にも伝わっているはずだ。


「さあ、天児屋命あめのこやねのみこと布刀玉命ふとだまのみこと! この儀式の吉凶を占ってくれ!」


 オモイカネが、占いを得意とするコヤネとフトダマにそう言うと、二人は牡鹿の骨をははかの木(朱桜)で焼き、卜占を行なった。


 そして、占いの結果を二人同時に出し、コヤネとフトダマは声をそろえてオモイカネに報告した。


「吉です!」


「凶です!」


「どっちだ!」


 こいつら、また意見が対立してるよ!


 オモイカネ様が声を荒げて「もう一度占え!」と怒っていると、鏡づくりを得意とする鋳物・金属加工の女神イシコリドメが円形の銅鏡を抱えて「えっさ、ほいさ。はぁ、はぁ……」と呼吸荒く駆けつけた。


「ほれ、ワシの新作の鏡じゃ! コヤネ、フトダマ、占いはもうどうでもいいから、さっさとこれを持って岩戸の前にスタンバイせぬか。アマテラス様がうずめの踊りに興味を持って岩戸をそっと開けたとき、かつてのようにそのお姿が映るように差し出すのじゃぞ」


「イシコリドメの鏡が来たことだし、もう踊り始めてもいいよね? 占いなんて当たるも八卦当たらぬも八卦ってやつよ。タヂカラオ、準備はできた?」


 わたしが準備体操をしながらそう聞くと、岩戸のわきで息をひそめ隠れているタヂカラオはグッと親指を立てた。昔のように、アマテラス様が岩戸から体をちょっとでも出したとき、力持ちのタヂカラオが引っ張り出す計画である。


「二人の占いが吉とそろってから始めたかったのだが、仕方ない。うずめ、頼んだぞ」


「モチのロンよ! アメノウズメの舞、いっきまーすっ!」


 わたしが岩戸の前に桶を伏せて置き、そこに飛び乗ると、集まった八百万の神々は「いよっ! 待ってました! 我らが舞姫!」とはやし立てた。


 ちなみに、この桶がわたしが踊る舞台ステージだ。こんな狭いステージ、ちょっと踊りにくくて嫌だけれど、昔通りの儀式にのっとってやらないとダメだってオモイカネが言うから仕方ない。


「さて、さて。みなさまの腹に積もり積もったこの世の悲しみを我が舞で吐き出し、笑いの花々に変えてみせましょう」


 わたしはそう歌うように口上を述べると、手にしていた扇子を天高くかかげて広げた。


 そして、桶を両足で踏み鳴らして軽快な音を出し、即興で踊り始めた。


「あら、楽し。楽しや、楽し。この世はすべて楽なり~」


「な、何だ! その腰くねくねダンスは! そんな短い袴で足を大胆にあげるな! は、破廉恥だ!」


 横でオモイカネが何か文句言っているけれど、踊りに熱中しているわたしは無視した。


 オモイカネ以外の神様たちは、わたしの踊りを見て喜んでくれているみたいで、


「これは愉快だ! さあ、もっと、もっと!」


「見ているこっちがハラハラさせられるわい。じゃが、嫌いではない」


「うずめーっ! こっちを向いてくれーっ! かっこいいーっ!」


 拍手喝采してわたしの舞をほめてくれた。


 わたしのファンを自称するタヂカラオにいたっては、天岩戸のわきで隠れているという自分の役目も忘れて熱狂的に「うずめーーーっ!! うおおおーーー!!」と叫んでいた。


 みんながわたしの面白おかしい舞に浮かれ騒ぎ、手を叩いてリズムを取って、天界の空がどよめくほど大笑いしている。


 よしよし! これだけ盛り上がっていたら、アマテラス様もわたしの踊りが気になって岩戸からのぞき見ようとするはず……!


 わたしがハイテンションな舞を舞い続けながらそう考えていると、


 じぃ~っ……。


 おおっ!?

 アマテラス様の視線を感じるわよ?


 ふっふーん。寂しがり屋でかまってちゃんなアマテラス様が、わたしの舞とみんなの笑い声を無視できるわけないものね。そろそろ、タヂカラオが、岩戸から顔をのぞかせたアマテラス様を引っ張り出すころだわ


 わたしはそう思ってニヤリと笑った。でも、オモイカネが岩戸のある異変に気づいてしまったのだ。


「ううん!? あ、あれは何だぁ~!?」


 タヂカラオは、その異変が起きているところを指さした。


「ほえ? どうしたの?」


 わたしが踊りを中断し、他の神様たちも岩戸の真ん中あたりを見てみると……。


 岩に小さな穴が開いていて、そこから望遠鏡がちょこんと突き出ていたのである。


「え? も、もしかして、アマテラス様、それでずっと外の様子を観察していたの!?」


 おどろいたわたしがそう叫ぶと、岩戸の奥からアマテラス様の「そうよ!」という声が聞こえてきた。


「踊りで騒いで外へ誘い出すなんて古典的な手口、一度引っかかったら、二度もだまされるわけがないでしょ? その手は桑名の焼きはまぐりよ!」


「そ、そんなぁ~!」


 踊り疲れたわたしは、桶からずるっと滑り、ずっこけてしまった。


「……たしかに、同じ手口に二度も引っかかる人なんていないわよね」


 わたしがそう言ってため息をつくと、オモイカネは、


「ぼんやりしているアマテラス様なら、あと三回ぐらいは引っかかると思っていたのに……」


 と、つぶやきながらガクリと膝をつき、無念がっていた。


 オモイカネ、それはちょっとひどい……。





<雑談コーナー:うずめ×タヂカラオ>


タヂカラオ

「うずめ! うずめちゃんファンクラブの公式グッズとして、お前のチアコス風巫女服を作ろうと思うんだ!」


うずめ

「え……? そんなの作ってどうする気なの?」


タヂカラオ

「もちろん、オレやアメノイワトがコスプレに使う」


うずめ

「ぶっーーーーーーー!! や・め・ん・か!! ファンクラブを解散させるわよ!?」

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