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うずめちゃんの神様days!  作者: 青星明良
第2巻 日本最凶の姉弟ゲンカですよ、女神様!
27/67

6 神様大集合!

「ヤッホー! オモイカネ!」


 トヨちゃんと別れたわたしと猿田くんが、「このまま真っ直ぐ行けば、アマテラス様の正殿(アマテラス様の御殿の中でもっとも大事な本殿)の大広間ですよ」とトヨちゃんに教わった長いながーい廊下を歩いていると、向こうからやって来たオモイカネとばったり出くわし、わたしは陽気に手を振った。


「ヤッホーなどと能天気なことを言っている場合ではないぞ、うずめ」


 仙人が着ているようなゆったりとした白い着物を身にまとったオモイカネは、眉間にしわを寄せてそう言い、深々とため息をついた。この神様、いっつも気難しい顔をしているなぁ~。


 オモイカネ(思金神)は、どんな時にでも冷静沈着な知恵の神で、人間界では学問・受験の神様としてまつられているそうなの。高天原の都ではアマテラス様の秘書をやっているんだけれど、フリーダムでわがままな太陽神にいっつも振り回されていて胃薬を手放すことができないらしいわ。


 それで、今日もアマテラス様のことで胃を痛めているみたい。


「それにしても、お前、またセーラー服なんか着て高天原にやって来たのか……。いや、今はお前の服装を注意している場合ではない。お前もパーティーの招待状を受け取って来たのだろう? そのことで、お前も加えて仲間の神たちと相談が……」


 オモイカネは胃痛のためか青ざめた顔でそう言いつつ、ふとわたしの後ろにいる猿田くんに顔を向けて絶句した。


「だ、だれだ、こいつは! なぜ日本の神の都にカウボーイがいるのだ!?」


「オモイカネ殿、オレだ。サルタヒコだ。天狗のお面を見たら分かるだろ」


「パーティーという改まった席に、そんなふざけたコスプレをしてくる奴がどこにいる!!」


「コスプレではない。ファッションだ」


「…………ぐっ。い、胃が痛い……」


 あらら……。超まじめな性格のオモイカネには、猿田くんの壊滅的ファッションセンスは理解できなかったみたいだ(わたしも理解できないけれど!)。思いっきり顔をゆがめて胃のあたりをさすり始めた。


「まあまあ、オモイカネ。クールダウン、クールダウンだよ。アメでもなめて落ち着いて?」


 わたしがそうなだめつつ、スカートのポケットからイチゴ味のアメをオモイカネに手渡すと、オモイカネは「こんな物を持ち歩いて、お前は大阪のおばちゃんか……」などとぶつぶつ言いながらアメを口の中にほうりこんだ。


「どう? ちょっとは落ち着いた? ……それで、相談ってアマテラス様とスサノオ様の仲直りのことでしょ? 猿田くんも二人が会うことをすごく心配しているみたいだけれど、ケンカしていた姉弟きょうだいがおたがいにごめんなさいするだけなんだから好きにさせてあげたらいいのに」


「お前は相変わらずのんきな女神だなぁ……。まあ、天岩戸引きこもり事件がいかに大変な騒動だったのかを何度口で説明しても、記憶喪失中のお前には実感がわかないか。……とにかく、大広間にみんなが集まっているから一緒に行こう。わたしは、お前たち夫婦神の霊力を感じて迎えに来たのだ」


 オモイカネは口の中でアメをごろごろ転がしながらそう言うと、背を向けて廊下を歩き出した。わたしと猿田くんもオモイカネに続き、アマテラス様の正殿の大広間へと向かうのだった。



            ☆   ☆   ☆



「うげっ! もうこんなにも集まってたんだ!」


 わたしたちが大広間に入ると、そこには百人以上の主だった神様たちがぎゅうぎゅう詰めになって座り、ガヤガヤと世間話をしていたのである。


 オモイカネが長い廊下を歩きながら説明してくれた話によると、八百万やおよろずの神様たちはいつも高天原にいるわけではないらしい。

 地上で生まれた国津神くにつかみたちは、天上界にあまり用事がないから高天原の都へ行くことは滅多にないし、高天原出身の天津神あまつかみたちも地上で自分を信仰する人間たちを見守る仕事があるため高天原に常時いることはないのだ。


 しかも、高天原にいるとアマテラス様から何かと面倒くさい仕事を押しつけられるので、ほとんど顔を出さない天津神もいる。それでも高天原にはのべ数十万人の神が滞在しているけれど、彼らのほとんどはアマテラス様の正殿に入ることを許されていないそうだ。


 トヨちゃんやアメノウズメ(つまり、わたし)、オモイカネ、アメノイワトなどの古くからアマテラス様に仕えてきた古参の神々、天岩戸引きこもり事件・天孫降臨(第1巻のプロローグのわたしと猿田くんが出会った時の話だよ!)などの日本神話で大きな功績を上げた神、サルタヒコ(猿田くんのことね)などの突出して強い力を持った神など、八百万の神々の中でもほんの一握りの百数名だけが正殿入りを許可されているんだって。


 万事いい加減そうな神様の国なのに、そういうところはけっこう厳しいんだなぁと思ったけれど、


「人見知りのアマテラス様は、それ以上の数の神の名前と顔を覚えることができないんだ」


 ということらしい。やっぱり、いい加減な理由だったのね……。


 それで、その選ばれし(?)百数名の神様たちがアマテラス様の招待状を受け取り、大広間に一堂に会していたわけだけれど……。


「おおっ!! うずめじゃないか!! ようやく来たか! あんまり遅いからパーティーを欠席するのかと思って心配したぞぉ~!」


 筋肉隆々《きんにくりゅうりゅう》で着ている道着が見るからにきつきつな大男の神様がはしゃぎながらわたしに声をかけて、自分の横に座っている神様を平手打ちで軽々と後方に吹っ飛ばした。ものすごい怪力だ。


「オレの横が空いている。こっちに座れよ」


 怪力の神――タヂカラオ(天手力男神あめのたぢからをのかみ)はニコリとほほ笑んで言い、わたしを手招く。


 いや、あんた、さっき強制的に横の席を開けたでしょ。


 この脳みそが筋肉でできているとしか思えない怪力馬鹿の神様は、アメノイワトや他の神々とともにわたし(アメノウズメ)をアイドルみたいに崇拝すうはいしている熱心なファンらしい。記憶を失う前の神様だったわたしが彼らのことをどうやってあしらっていたのか知りたいなぁ……。


「タヂカラオ殿、かたじけない」


 ムスッとした声で猿田くんはタヂカラオの横に座り、怪力の神とにらみ合ってバチバチと火花を散らした。


「おい、そこはうずめの席だぞ。お前は後ろのほうに座ってろ」


「うるさい、脳みそ筋肉男。オレの妻にちょっかいを出すな」


 猿田くんはタヂカラオにそう噛みつくと、他に座る場所がないか探していたわたしに顔を向けて「うずめはオレの膝の上に座りなさい」などとぬかした。


 わたしは猿田くんを当然のごとくスルーして、やや後ろのほうに座っていたおばあさん(外見は七十歳くらい?)の神様に声をかけた。


「あの……隣に座ってもいいですか?」


 同じ神様でも、年配者には礼儀正しく。そう思ったわたしは改まった口調でそう言ったのだけれど、おばあさんの神様は「ああ~ん?」と不良少年みたいな声を出しながら顔を上げ、


「おい、うずめ。なんじゃい、その他人行儀なしゃべりかたは。気色悪いからよせ。ワシとあんたは、盗んだ牛車で高天原の都をブイブイ言わせて走り回った仲じゃないか」


 えぇぇ……。わたしとこのおばあさん、そんなに仲が良かったの? ていうか、牛車でどうやってブイブイ言わせるのよ……。


「ご、ごめん。わたし、記憶が……」


「ああ、そうじゃったな。オモイカネから聞いておったのをすっかり忘れていたよ。うずめは神の記憶を失って、今は人間の現役女子中学生だったか。ワシは、鏡づくりが得意な女神・イシコリドメ(伊斯許理度売命)じゃ。記憶を失っても、ワシとあんたはマブダチじゃ。記憶がなくて困ったことがあったら、何でも言えよ。力になってやる」


「は、はぁ……。どうも……」


 マブダチって、何語? 友達……みたいな意味かしら?


「突っ立っていないで、さっさとワシの横に座らんかい。……それにしても、その服いいのう。ワシも着てみたいのう。セーラー服……」


 イシコリドメは、物欲しそうにわたしのセーラー服を見つめた。外見はおばあさんだけれど、中身はずいぶんと乙女らしい。顔中しわだらけで気難しそうな見た目とは裏腹にけっこうフレンドリーだし、仲良くなれそうな予感がする。……制服はあげられないけれど。


「ねえ、イシコリドメ。早速だけれどひとつ聞いてもいーい?」


 わたしがイシコリドメの隣の席に座りながらそう聞くと、イシコリドメは「ああ、何でも聞きな」とうなずいてくれた。


「ただし、スリーサイズだけは乙女の秘密だから言えないがね」


 ……それはアメリカン・ジョークか何かだろうか……。


 わたしは、イシコリドメの言葉をあえて無視して質問した。


「昔、アマテラス様とスサノオ様にいったい何があったの? 何かケンカ別れしちゃったらしいことは知っているけれど、そんなにも強烈な姉弟ゲンカだったわけ? 猿田くんやオモイカネは、アマテラス様が弟のスサノオ様と会うことにすごい警戒心を抱いているみたいなのよ」


 イシコリドメは「猿田くんというのは、あんたの夫のサルタヒコのことか」とぽつりとつぶやいた後、


「警戒しているのはあの二人だけではないさ。ワシやあの筋肉馬鹿のタヂカラオでさえ心配しているんだ。……そうじゃのう、あのご姉弟きょうだいのことについて語るのなら、まずはお二人のご両親のイザナギ様、イザナミ様の話から始めるべきかな」


 そう言い、わたしに神々の時代の昔話をしてくれたのである。

<雑談コーナー:うずめ×イシコリドメ>


うずめ

「イシコリドメって、鏡づくりが得意って言うけれど、具体的にどんな神様なの?」


イシコリドメ

「人間界の葦原中国あしはらのなかつくにでは、鋳物いもの、金属加工の神として信仰されておるよ。ワシの名前は、『石の鋳型いがたを使って鏡を鋳造ちゅうぞうする老女』という意味なんじゃ。アマテラス様の天岩戸引きこもり事件の際に八咫鏡やたのかがみをつくったことで有名なのじゃよ、えっへん。


うずめ

「え!? 八咫鏡って、三種の神器のひとつじゃないの!? すっごーい!!」


イシコリドメ

「あと、その前につくった失敗作の日像鏡ひがたのかがみ日矛鏡ひぼこのかがみ日前神宮ひのくまじんぐう國懸神宮くにかかすじんぐうのご神体としてまつられておるよ」


うずめ

「え……。鏡づくりの神様なのに失敗したの?」


イシコリドメ

「ワシの鏡づくりを見物していたあんたが、でっかいくしゃみをするから失敗したんじゃ。ワシは悪くない」


うずめ

「そ、それは……アイム・ソーリー……」

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