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うずめちゃんの神様days!  作者: 青星明良
第2巻 日本最凶の姉弟ゲンカですよ、女神様!
25/67

4 久しぶりの高天原!

 さてさて、ようやく次のお話にいけるわね。


 わたしと猿田くんは鈴ちゃんと神使たちに見送られながら天のはしごを前みたいにのぼり、高天原にやって来たの。


 高天原の薄桃色の雲でできた道をてくてく歩き、わたしたちは高天原の都の入口まで来たわけだけれど……。


「久しぶり、アメノイワト! ……あれ? 何だか顔が青いわね。どうしたの? 病気?」


 わたしは、都の正門を警備していたアメノイワトの具合が悪そうなので、心配してそうたずねた。


 アメノイワト――天石門別神あめのいわとわけのかみは、天皇の宮殿の門に昔からまつられている神様で、高天原ではアマテラス様がおさめる都の門を警備するのがお仕事。そして、アマテラス様がまた引きこもらないように天岩戸の管理もしている、けっこう忙しい神様なのだ。


「おう、うずめ。一か月ぶりだな。……本当に病気にでもなりたい気分なんだ。アマテラス様の命令で、スサノオ様が高天原に到着したら、オレがアマテラス様の御殿ごてんまであのお方を案内しなければいけないんだよ。気が重い。重すぎる……」


「立派な鉄の甲冑を着ているくせして、何をそんなに弱気になっているのよ」


「うずめは昔の記憶を忘れてしまっているからそんなことが言えるんだ。スサノオ様はなぁ、気に入らないことがあったら仲間の神が相手でも容赦しないおっかないお方なんだよ。ちょっとでも機嫌を損ねたら、オレの体はバラバラにされるかも知れない」


「ば、バラバラ!? そ、それはちょっと大げさなんじゃ……」


「大げさじゃない。大昔、オオゲツヒメ(大宜都比売)という食物の女神がいた……ていうか、うずめとも気が合って仲が良かっただろ? 彼女、スサノオ様に殺されちゃったんだぞ」


 アメノイワトの話によると、姉のアマテラス様とケンカした末に高天原を追い出されたスサノオ様は各地を転々としていた。


 飲まず食わずでさ迷い続けてお腹がペコペコになったスサノオ様は、穀物や食物の女神でかなり由緒正しい神様だったオオゲツヒメに何か食べさせてくれと頼んだそうだ。


 スサノオ様をかわいそうに思ったオオゲツヒメは、


「いいですよ。料理するのに時間がかかるから、ちょっと待っててね」


 と、こころよくご飯をおごってあげようとした。


 でも、その料理というのが、オオゲツヒメの鼻や口、お尻から出てきた食材でつくられたもので、その調理の光景を見てしまったスサノオ様は「おえーっ!」となってブチ切れ、


「そんな汚い物食えるかぁー!!」


 そう怒鳴りながらオオゲツヒメを一刀両断しちゃったそうだ。


 ……何だか、オオゲツヒメの調理法につっこめばいいのか、恩知らずなスサノオ様に怒ればいいのか分からない話ね……。でも、殺すことはないよ。うん。


 ちなみに、オオゲツヒメの遺体からは五穀(稲・あわ小豆あずき・麦・大豆)とかいこが生まれ、人間たちの生活をぐんと豊かにしてくれたらしい。だから、オオゲツヒメ殺害事件は、シュールだけれど実はかなり重要な神話だったりするのである。


「ふ~む……。ひとつちがったら殺されるかも知れないっていうのは、恐いわねぇ。でも、もう数千年も前の話なんでしょ? アマテラス様と仲直りしたっていうことは、そういう自分の乱暴なところを反省したからじゃないの? きっとだいじょうぶよ」


「そ、そうだろうか。不安だ……。だが、パーティーのプログラムにうずめのチアコス・ダンスがあるから、お前のダンスを楽しみにしてがんばるよ。うずめの踊りを見たら、元気いっぱいになれるからな」


「え!? そんなの聞いてないし!」


 アマテラス様ったら、わたしに一言の相談もなくそんなことを勝手に決めちゃってぇ~! 本当、迷惑な女神様だなぁ~!


 先月、八百万やおよろずの神様たちの前でチアコスっぽい巫女服を着て踊りを披露したけれど、あれは猿田くんが命がけのすごい術を使って奏さんを助けようとしていたのを応援しようとしていたからなのよ。とにかくわたしも必死だったわけ。


 何の心の準備もなく、いきなりパーティーでチアリーダーのコスチューム着て踊れとか言われても、困るんですけれど~!(怒)


「まあまあ、うずめ。そんなに怒るなよ」


 わたしがプンスカ怒っていると、猿田くんがわたしの頭をポンポンとなでながらなだめた。


「うずめの踊りは昔から素晴らしかったが、チアコスとやらの衣装を着た現代風のダンスもぐっとくるものがあった。うずめの可愛い姿、オレもまた見てみたい」


 む、むむむ……。


 けっこう直球でくるじゃないか、猿田くん。


 そ……そこまでほめたれたら……踊ってあげないこともなきにしもあらず……。


「ちぇ~。まーた夫婦神ののろけが始まったよ。あーあ、リア充は爆発してくれないかなぁ~。うずめは爆発しなくてもいいから、この天狗仮面だけ」


「何だとぉ!? おい、アメノイワトよ。お前、オレが黄泉の国にいる間、うずめにちょっかいを出していなかっただろうなぁ!」


「人聞き……じゃなくて神聞きの悪いことを言うな! オレたちのアイドルにちょっかい出して結婚したのはお前のほうだろうが! 天狗のお面だけならまだしも、日本の神のくせしてカウボーイのかっこうとか似合わないんだよぉ! だっさ! だっさ! 超だっさーーーっ!!」


「う、うぐぐぅ……」


 自分の服のセンスをぼろくそに言われた猿田くんは涙声になり、悔しそうにうつむいてしまった。……子供のケンカかよ!


「こらこら、二人とも! 低レベルなケンカをしないの!」


 「だって、こいつが!」と、二人が声をそろえて自分は悪くないアピール。こういう時には波長が合うのね。


「いますぐケンカをやめないと、二人とも嫌いになりますからね!」


 わたしがそう脅すと、猿田くんとアメノイワトはしゅんとなって「はい……」とうなずくのだった。



            ☆   ☆   ☆



 アメノイワトに都の正門を通してもらい、わたしと猿田くんは一か月ぶりに高天原の都に足を踏みいれた。


「相変わらず、ここらへんは東京の街とうり二つなのねぇ」


 わたしは、東京スカイツリーにそっくりな高天原スカイツリーを見上げながら、そうつぶやいた。


 高天原の都は、神様たちが人間たちの文化とその成長を記憶するために、古代~現代にかけての日本の街並みが再現されているのだ。都の入口が現代の街並みで、だんだん奥に行けば行くほど古い時代の街並みになっていくのである。


「うずめ。ぼんやりしていないで、早くアマテラス様の御殿に行こう。迎えの車も来ているみたいだ」


「え? 車? それはまたご丁寧に……んえ?」


 猿田くんが指差したその先には……「パーティー送迎用車」と書かれた看板をかかげたニワトリの神使(トブトリーナ2世とは別のアマテラス様の神使らしい)と、停車しているたくさんの車。


 ただし、車は車でも、牛で動く牛車だった。


 そういえば、トヨちゃんが前に言っていたっけ。高天原では、地球汚染を防ぐために自動車は使わず、牛車が交通手段になっているって。


「うえ~。牛車でちんたら移動していたら夜になっちゃうじゃ~ん。歩いたほうが早そう……」


「たしかに、いまから牛車に乗って移動してもパーティーが始まる時間に遅刻しそうだな。だったら、あれに乗っていこうか」


 猿田くんの視線の先を見ると、時代劇でよく見かける辻駕籠つじかごがあった。ちなみに、辻駕籠というのは、江戸時代に街角で待っていてお客さんを運ぶのが仕事なの。お父さんがテレビの時代劇が好きでよく観ているからわたしも知っていたのよね。


 駕籠をかついで走るのはサルたちで、数匹のサルがヒマそうにあくびをしていた。


「あのおサルさんたち、猿田くんの神使?」


「いや、ちがう。別の神に仕えているサルたちみたいだ。ずいぶんとヒマそうだから、あいつらにアマテラス様の御殿まで運んでもらおう」


 猿田くんはそう言いながら、辻駕籠のおサルさんたちに「おい、アマテラス様の御殿まで乗せていってくれ」と頼んだ。


「へい、毎度おおきにウキー! お一人様1000円ですウキー!」


「え! 金をとるのか!?」


「当たり前ウキー。これは商売ウキー」


「じ……じゃあ、これで……」


 慌ててふところを探った猿田くんが差し出したのは、アメリカの1セント硬貨10数枚。辻駕籠のおサルさんたちは、そのリンカーンの横顔が描かれた硬貨を見て、思いきり眉をしかめた。


「高天原では、日本のお金しか扱っていないウキー」


「仕方がないだろ。アメリカから帰って来たばかりなんだよ、オレは」


「でも、アメリカの1セント硬貨は1円弱の価値ウキー。おいらがサルだからって、だまそうとしても無駄ウキキー」


 高天原のサル、賢い! わたし、1セント硬貨が日本円でいくらぐらいかなんて知らなかったよ!


 どうやら1セント硬貨の価値をよく知らなかったらしい猿田くんは「だ、だまそうとしていたわけでは……」としどろもどろになり、言いわけしよとした。でも、辻駕籠のサルたちはひそひそ話を始めて、「警察に通報したほうが……」と相談しているようだ。


 へえ~。神様の国にも警察とかあるんだ……って、感心している場合じゃないや!


 このままだと、わたしまで通報されちゃう! 夫婦神そろって警察のご厄介になったら、アマテラス様に大爆笑されるよ!


「わたしが払う! わたしが払うから! はい、二人分で2000円!!」


 わたしが大慌てで財布から1000円札2枚を取り出してサルに渡した。すると、サルたちも「毎度ありウキー!」と営業スマイルになって警戒をといてくれたのである。ただ、


「奥さんにお金を払ってもらうなんて、サルタヒコ様もとんだ甲斐性なしウキー……」


 と、一匹のサルがぼそぼそつぶやいているのが聞こえてしまい、猿田くんは無言で肩を震わせるのだった。


「……どんまい」


 わたしはちょっとかわいそうになり、猿田くんの肩をポンとたたきながら、一言そうなぐさめてあげた。


 神様のくせして、メンタル弱いなぁ……。

<雑談コーナー:うずめ×アメノイワト>


うずめ

「アメノイワトって、いっつも都の門番みたいなことをさせられているけれど、れっきとした神様なんだよね?」


アメノイワト

「あ、当たり前だ。都の正門を警備するのは重要な仕事なんだぞ。それに、アマテラス様が夜中にお菓子食べたいと言い出したらコンビニに飛んで行くし、アマテラス様が愛読している少女漫画の雑誌を本屋で毎月買うのもオレの役目だし、あとそれから……人気ゲームの発売日にアマテラス様の命令で何時間もゲーム屋で並んだことが何度もあるんだぞ。オレは十分、神として役に立っている!」


うずめ

(こりゃ完全に使いっぱしりにされてるわ……)

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