『花の城の音姫』 ~音の章~ 其の八
「音。」
「・・・千重か。」
私が一人になると、千重が姿を現した。
なんだかんだ言って、最近は度々起きてくる。
「いえ、音が寂しがっているかなっと思って。」
「べ、別に寂しくなんかないっ」
そう、一人で居るのにはもう慣れている。慣れている筈だった。
最近は、花子が居て、香奈達が居て、狐も居た。友達と呼べる者が大勢できた。
その所為かも知れない。
「・・・いや、千重には敵わないな。私は寂しく感じていた。」
暗い地下の広間に一人きり。それが寂しく思える。
「やはり、友達と呼べる者が出来た所為なのかも知れんな。」
「あら?私や・・・華は友達じゃないとでも?」
勿論、そんな事は無い。私の中で消えてしまう程小さくなってしまった華の魂。そして封印の時以外でも時折姿を現す千重。
どちらも私にとってかけがえの無い存在だ。
「勿論、友達だと思っているよ。」
「ん、宜しい。」
うんうんと頷く千重。私の中の華からも、同じ様な感情を感じた。
「で、千重。出てきた意味・・・それだけじゃ無いんだろう?」
「ええ。封印の準備が整いました。後は・・・貴女の憑代だけですね。」
私の憑代・・・黒猫の『かのん』。香奈達ならばそう時間もかからずに見つけてくれるだろう。
「私に実体があれば、あの人形を再び作る事も出来たのだけれど・・・」
「なーに、猫の体も案外良いかも知れんぞ?気ままに縁側で昼寝とかしてな。」
(それって・・・昔の音様と変わりませんよ・・・)
華の声がした気がした。
・・・
・・・
・・・
翌日。
「ただいま。華音さん。」
「おかえり。」
「『かのん』は見つかったようだな。」
「はいっ。」
昨日の今日だと言うのに、香奈達はもう『かのん』を見つけた。
『かのん』は香奈の手をすり抜け、私の隣にちょこんと座る。
私の封印の事もある。儀式は早い方が良い。
「早速儀式の準備をする。」
「その後此処の広間は封印され入る事は出来なくなる。」
「狐。ありがとう、私を守ってくれて。」
「何を言う。儂は姫の為だったら、命だって惜しくないのじゃ。」
「クラーケンも色々と面倒を掛けたな。」
(いえいえ。この程度、華音様から受けたご恩に比べたら・・・)
「香奈。」
「はい。」
「これより儀式は1週間程はかかるだろう。」
「・・・店で、私達が出会った場所でまた会おう。」
「はいっ華音さん。」
「最も・・・この次に会う時は私は猫の姿だがな。」
「どんな姿だろうと、華音さんです。私の大切な友達の・・・」
私は一人一人にお礼の言葉を掛ける。此処には居ない花子、香織、知真、葉和。皆かけがえの無い友達だ。
そして、千重も居る、華も私の中にまだ存在する。
もう、寂しくない。暗闇の中に一人で居るとしても。
私には大切な友達がいる。
そして・・・
『霧島華音』でまた会おう。




