『花の城の音姫』 ~音の章~ 其の七
「それが、『花の城の音姫』の真実なんですね・・・」
香奈は目を伏せ、一瞬、悲しそうな顔を見せたが、直ぐに向き直ると真剣な顔つきとなる。
強くなったな、香奈。
私は続けて話す。それからの事、『桜』の元で『何でも屋』を始めた事。
そして・・・
「それで・・・だ。香奈。」
「香奈に頼みがある。」
香奈に頼みごとを切り出す。
「私に出来る事なら、何でもするよ。」
香奈は即答する。
まだ内容も話していないと言うのに・・・
「ありがとう。香奈。それで何だが・・・」
「・・・黒猫を探して欲しい。」
「え?黒猫??」
「華音さん。なんで猫探しなんですか?」
ここまでシリアスな話をして、いきなりの猫探しだ。
なんの意味があってと考えるのは当然だろう。
するとやはり・・・あの事も話さねばならないか・・・
(華音様。往生際が悪いですよ?)
(香奈の事も話さないと、その猫探しは成立せんですよ?)
「本当じゃぞ、姫よ。」
「覚悟を決めい。」
狐とクラーケンにも促され、私は香奈の事を話す事にする。
人形を通してでは確信できなかったが、こうして直に会って、僅かとはいえ私の瘴気を受けても平然としている香奈を見て確信した。
「え?私の事??」
「・・・私が華音さんを覚えている理由ですね?」
すっかり忘れていたと言わんばかりの香奈だったが、これから言わんとする事を察したようだ。
ならば回りくどい事は抜きにし、結論から言おう。
「単刀直入に言う。」
「香奈は・・・私の生まれ変わりだ。」
「はい?」っと目をぱちくりする香奈。
「え、えーーと・・・どういう事なんですか?」
まあ、私が居るのに生まれ変わりと言われてもなぁ?と思うのは当然だ。
私は続ける。
「正確には、体の生まれ変わりって事になる。」
「魂の方は・・・私がまだ存在しているから、輪廻の輪には入っていないが、体は喰われてしまったのでな。」
「つまり・・・体だけ輪廻転生??して、それが私という事ですか??」
「まあ、そういう事だ。」
「だから、私の事も忘れていない。私の瘴気に対しても耐性がある。」
「夜魅が見えたりするのも、私の体にその資質があったのだろう・・・私は強大な夜魅になったのだからな。」
「むむむ〜〜」っと、難しい顔をする香奈。
そして、「あれ?」っと何か疑問に思ったようだ。
「ああ〜分かっている。まだ猫探しの理由にならないな。」
「私は近々再封印される。その前に新たな憑代が必要だ。しかし、適合する人形はもう無い。」
「・・・本来ならば、香奈を憑代にするのが一番だ。なんたって私の転生体だからな。」
「勿論、それは却下。親友の体を乗っ取ってまで現世にいようとは思わん。そこでだ・・・」
私は若干駆け足で話す。
親友の体を乗っ取るなんて、冗談でも言いたくなかったから。
香奈もその辺りは察してくれたようだ。
「そこで、黒猫の『かのん』だ。あやつはそもそも生物じゃない。」
「私の瘴気で生み出した使い魔の様なモノだ。故に・・・私のチカラの一部・・・まあ、記憶と僅かばかりの能力・・・と言った所か・・・位なら移せる。」
「それではれて私も『現世』に戻れると言う訳だ。」
一通りの説明を終えると、香奈も理解してくれたようだ。
「それで、心当たりは?」
心当たりか・・・正直、ふらふら歩きまわるアイツの居場所の特定は出来ない。
しいていうなら、店付近や学校・・・漁港あたりか?
まあ、てうしから出るという事は無いが。
そう、香奈に伝えると、
「つまり、分からないって事じゃろ?姫。」
と、狐にツッコミを入れられる。
「扉も開いた事じゃ、儂も手伝おう。」
(勿論、うちも手伝うよ?香奈。)
「ありがとうございます。桜井さん。クラーケンさん。」
狐やクラーケンが手伝ってくれるなら心強い。
私が『現世』に無き今、千重と張った『桜』の結界は兎も角、てうし市を包んだ結界は殆ど機能していないだろう。
黒猫の『かのん』さえ無きモノにすれば、夜魅の王にとっては好都合。
幹部こそ居ないにしても、手駒の夜魅を放ってくる可能性はある。
「それで行ってきます。華音さん。」
香奈は、狐とクラーケンを伴って『祠』を後にする。
・・・
・・・
・・・
あれ?私、またボッチに戻ってね??
「私一人此処から出られないんだけど・・・?」
「お〜〜い・・・」
私の声だけがむなしく響いた。




