『花の城の音姫』 ~音の章~ 其の五
山を下り、ふと、港の方を見ると明かりが見えた。
スンスンスン・・・
鼻をならし、匂いを嗅ぐ。
ああ、これは餌の匂いだ。向こうに餌が居る。
儂は地を蹴り、匂いの元へと向かう。
ドガァァァァァァァッ
明りの元、小屋らしき物を壊し、中を見ると餌が居た。
ジュルリ・・・
実に美味しそうな餌だ。
だが、この餌では腹の足しにはなっても、チカラはつくまいな。
まあ、良い。
「※%&$#”!!」
餌が泣きわめく。
儂は構わずかぶりつこうとする。
こつんっ
何かが当たったようだ。
見ると先程より少し大きい餌がいる。
「$%&¥¥@&”!!」
少し大きい餌は何か叫びながら、儂と小さい餌の間に割って入る。
なんじゃ?お前から食べて欲しいのか??
儂は口を大きく開ける。
「・・・けて下さい。」
言葉が聞こえる。餌が言葉を発したのか?
「どうか、この子だけはお助け下さい。」
「物の怪様、私はどうなっても構いません。私を生きたまま食べても良いです。」
「ですが、どうか・・・どうか。この子だけはお助け下さい。」
今度ははっきりと聞こえた。
ドウカコノコダケハオタスケクダサイ。
オタスケクダサイ。
お助け下さい。
儂の動きが止まる。
・・・コレは餌じゃない。
コレは・・・人間だ・・・
は・・・ははははは・・・儂はすっかり物の怪になってしもうたようじゃ。
もう、人と食べ物の区別すらつかない。
儂がここに居れば、生き残った民を全て喰らい尽くしてしまうだろう。
儂は意を決し、人に話しかける。
「警告するのじゃ・・・儂はあの山に居る。何人たりとも、あの山に近づくでないぞ?」
「もし、この警告を破り、山に踏み入れようものなら・・・其の者の命は無いと思え。よいな?」
「え・・・?そのお声は・・・姫様??」儂の声に、人が反応する。
どうやら、儂と会った事がある人の様じゃ。
儂は其れすら分からない。
儂は、山へと戻った。
儂の体からは、常に瘴気が漏れている。
その瘴気は木々を枯らす。しかし『桜』だけは枯れない。
『桜』には何かしらのチカラがあるのではないか?
あの物の怪は『桜』を狙ってこの国に来たとも考えられる。
何にしても、儂の体が瘴気を発する以上、このままにはしておけない。
儂は『桜』の傍に穴を掘って行く。ある程度掘ったら其処を広めの穴にし、広間の様にした。
儂は此処から出る事は無い。
もう・・・2度と。




